東工大ニュース
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公開日:2014.12.04
東京工業大学異種機能集積研究センターの益一哉センター長・教授、山根大輔助教、町田克之連携教授らは、東京大学先端科学技術研究センターの年吉洋教授、NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT、花澤隆社長)と共同で、可動錘に金を用いることにより、同等な分解能のシリコンMEMS[用語1] 加速度センサと比較して、センサの寸法を約10分の1に小型化することに成功した。この技術を用い、複数の超小型・高分解能MEMS加速度センサを1チップに集積することで、1G(重力加速度)[用語2] 以下から20Gまでの超広域加速度のワンチップ検出を実現した。また、MEMS構造を微小センサ回路直上に集積可能な作製法を用いており、MEMSとセンサ回路が占めるチップ面積も大幅に縮小できる。
医療・交通・インフラなどで必要なMEMS加速度センサには1G以下を含む広域な加速度の精密計測が求められている。今回の研究成果は特に医療用人体行動検知センサとして有用であり、今後、正確な人体行動解析に基づく医療診断や医療用ロボット開発へ向けた新デバイス・システムの開発につながる。成果は11月にスペインのバレンシアで開催された国際会議「IEEE SENSORS2014」で発表した。
静電容量型MEMS加速度センサにおいて、加速度検出範囲は可動錘の寸法と質量に強く依存するため、単一錘による加速度検出範囲の広域化は困難だった。また、従来の高分解能シリコンMEMS加速度センサでは大きな錘が必要なため、異なる検出範囲を有する複数のセンサを1チップに集積できなかった。
そこで、同研究グループは静電容量型加速度センサの分解能が可動錘の質量に比例することに着目し、錘材料をシリコン(室温時:約2.3g/cm3)から金(室温時:約19g/cm3)に置き換えることで、センサ寸法を約10分の1に小型化した。
図1.
図2.
これにより、複数の超小型・高分解能MEMS加速度センサを1チップに集積し、1G以下から20Gまでの超広域加速度を1チップで検出できるデバイス構造を実現した。
錘の測長結果と容量-周波数特性により、集積した5個の加速度センサにおいて 82.4×10-9G√Hz ~ 1.11×10-6G√Hz の雑音実測値(室温時)を得た。これらは同サイズのシリコンMEMS加速度センサでは到達できない低雑音性能であり、従来の100倍以上の高分解能を達成した。さらに金の特徴として、半導体微細加工技術と電解金めっきを用いたデバイス作製法によりMEMS構造を微小センサ回路(CMOS回路[用語3] )直上に集積でき、MEMSとセンサ回路が占めるチップ面積の大幅な小型化も期待できる。また、金は他の高密度材料と比較して耐酸化特性があるため、従来技術と比較して、サイズだけでなく製造プロセスの面でもCMOSとの整合性に優れている。
現在、医療・交通・インフラなどの用途で必要なMEMS加速度センサには1G以下を含む広域な加速度の精密計測が求められている。従来の小型・量産可能な民生用加速度センサは、シリコンMEMS技術を用いているが、加速度検出性能は可動錘の寸法と質量に強く依存するため、センサ単体による加速度検出のさらなる広域化・高分解能化は困難だった。
同研究グループは多様なMEMSセンサを集積回路上に作製する独自技術を有する。今回は金の高密度特性を用いて高分解能MEMS加速度センサを小型化し、1チップ上に複数搭載することで、加速度検出において広域化と高分解能化の両立に成功した。
超広域・高分解な小型加速度センサの実現は、特に医療用人体行動検知センサにおいてブレイクスルーであり、今後、正確な人体行動解析に基づく医療診断やロボット開発へ向けた新デバイス・システム開発につながると期待できる。また近年、地上のあらゆるモノについて多種多量のセンサを適用する技術開発が盛んであり、動作検知の根幹となる加速度センサの高性能化に関わる本技術は極めて重要である。
用語説明
[用語1] MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械素子) : 半導体微細加工技術を利用して製造したマイクロメートル寸法の3次元電子・機械デバイスの総称。現在、民生用加速度センサの大半はシリコンを材料としたMEMS素子で作製されている。
[用語2] 重力加速度 : 加速度は時間による速度変化の度合い。速度(距離/時間)を時間で割った単位がG。1Gは9.8m/s2。
[用語3] CMOS(Complementary Metal-oxide Semiconductor) : 金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを相補形に配置したゲート構造。現在の微細集積回路で最も基本的な能動素子。
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