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安藤真 理事・副学長(研究担当) 就任挨拶

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公開日:2015.05.14

2015年4月1日付で就任した、安藤真 理事・副学長(研究担当)からの挨拶をご紹介します。

安藤真 理事・副学長(研究担当)

安藤真

4月1日付けで、理事・副学長(研究担当)に就任しました安藤です。

私は、1979年に電気電子工学専攻の博士課程を修了し当時の日本電信電話公社へ就職しました。民営化の動きを4年ほど経験し東京工業大学へ戻り現在へ至っています。昨年11月に学部卒業40周年の集いがあり、時の経つ速さに驚くとともに改めて母校への想いを同窓生と共有しました。40年と言っても大岡山に偏った経験しかありませんが、専門家が認める我々東工大人の底力を、もっと広く、社会や世界に示すことができないかと常に願ってきた一人です。大変な変革期に、思いもよらない大役を引き継ぎましたが、本学の「研究」活動の発展のために、微力ではありますが全力を尽くす所存でありますので、よろしくお願い申し上げます。

折しも、我が国では財政難を背景に、大学改革が急速に進行中です。法人化以来ともいうべき、今回の大学改革の流れは「社会に求められる大学」を重視したもので、厳しい状況が続く日本経済において、さらに震災という試練を経験し、国費に拠る大学にも相応の社会貢献を問うものです。大学は、人材育成や学理の追求という古来の目標に加え、研究成果の社会実装や、教育研究活動の向上を、線表に従った定量的な指標とともに目標に掲げることを求められます。「大学のあるべき姿」と「社会が求める大学」とを調和する理想の姿については、普遍の定義として定まっているとは思えません。当事者が現況の不完全さを謙虚に認め、不断の向上心を持って改革に取り組む努力の中でこそ、理想の姿が見えてくると、自己流ではありますが、解釈しています。

この状況にあって本学は、世界最高の理工系総合大学を標榜し、定量的な指針として「世界トップ10に入る大学」を掲げ平成の「教育改革」を進めています。これに遅れることなく「研究改革」を遂行せねばなりません。近年の社会的問題はいずれも科学技術の知恵なしに解決できないものばかりです。科学技術への期待は東京工業大学への期待と重なり、真に社会や産業界から頼られる大学への改革の成否は、本学の復権どころか、日本の浮沈そのものとも言えるものでしょう。

冒頭に述べましたが、一般社会や海外から東京工業大学へ与えられる評価・評判が、必ずしも個々の研究者、教員の力量を反映したものではないことは、改革の中心課題と認識すべき点です。社会の複雑で大きな課題に対応し、分野横断の学内連携チームを組織し、産業界、企業との連携も得て、より具体的で総合的な貢献をすることが、大学の評判を上げるには有効です。平成の「研究改革」を大転機と捉え、評価されたい対象を、学協会から社会や産業界へ拡げて行く方策に、多くの研究者のご理解を頂けたらと考えています。以上は大学間の競争を意識した改革について述べたものですが、ちなみに国は、大学や企業の組織を超えた協働や人材交流、共同利用施設としての研究所の支援も詠っています。この観点はすでに欧州では定着し、EUの旗の下国境も越えた形で技術課題毎の協働チームを募り、研究資金の獲得に、大学間ではなく、技術分野間での競争原理が導入されています。人事の流動性に劣る日本にこそ適した、競争的資金の導入策とも言えます。これらも考慮に入れ、研究体制の改革を急がねばなりません。

就任のご挨拶が、山積する課題を列挙する形となりました。皆様のご協力、ご支援を得て少しでも研究改革が進むことを夢見て、筆を置きます。

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