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量子コンピュータに関する国際会議 開催報告

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公開日:2015.08.19

量子アニーリングおよびその関連問題についての国際会議「New Horizons of Quantum and Classical Information 2015 - Quantum annealing, Error correcting codes, and Spin glasses -」が、8月3日から5日の3日間にかけて、東工大蔵前会館で開催されました。

2011年、カナダのベンチャー企業D-Wave Systems社によって、既存のコンピュータと全く異なる量子力学の原理で動作する量子コンピュータが開発されました。このコンピュータの動作原理となるのが、量子アニーリングとよばれる手法です。1998年、本学の西森秀稔教授および本学の修了生である門脇正史氏(当時大学院生)によって提案されました。量子コンピュータの実現にはまだ何十年もかかると言われていたところに出現したD-Waveマシンは大きな反響をよび、現在さまざまな研究が行われています。本会議はそのような中で、関連研究者間での密な議論や情報交換を主な目的として開催されました。

会議には70名近くの参加者が集まりました。実際にD-Waveマシンを用いた研究を行っている4つのグループ(D-Wave社、Google、南カリフォルニア大学、テキサスA&M大学)からの研究者を含む、9名の招待講演および8名の一般講演が行われました。

会場の様子

会場の様子

実際にD-Waveマシンを用いて研究を行っている講演者からは、実際にどのような計算が行われているか、得られたデータをどのように解釈するか、生じる問題をどのように克服するかについてなどの講演が行われました。また、他の技術を用いて量子アニーリングを実装する研究、理論的に計算時間を速めるための手法など、さまざまな関連する話題について、多方面からの議論が行われました。

講演する西森教授
講演する西森教授

量子アニーリングによって解かれる問題は、最適化問題と呼ばれるものです。それは自然科学上の長年の難問である「ガラス」状態に関する理解から、現代のコンピュータ社会を支える情報理論の諸問題、人々の生活を一変させる勢いを見せる最先端の人工知能、機械学習にまで至る広範な問題に解決方法を与えてくれます。本会議では、そのような量子アニーリングの応用範囲となる様々な問題についての講演も行われました。

融解液体の温度を徐々に冷却すると、普通は一定温度で結晶化して固体となるが、このような結晶化をせず、冷却とともに次第に粘度を増し、明確な凝固点を示さずに、原子の配置あるいは原子のつながりが大きく乱れた状態で固化する現象。(出典:『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』2014版)

また、西森教授とともに量子アニーリングの初期研究に携わった門脇氏に、研究の経緯について特別講演を行っていただきました。発表から何年もたって原論文の引用数が伸びているという言及には、研究活動というものの奥深さ、面白さが感じられました。

門脇・西森の量子アニーリングについての論文(1998年)の引用数(Google Scholar Citationsより引用)
門脇・西森の量子アニーリングについての論文(1998年)outerの引用数(Google Scholar Citationsより引用)

連日35度を越える猛暑の中、会議は終始活発な議論で、更に熱気に満ちあふれていました。それでも参加者同士の交流を通して、非常にリラックスした雰囲気の中で行われ、多くのさまざまな議論が交わされました。

問い合わせ先

理工学研究科物性物理学専攻 高橋和孝

Email : nhqci2015@stat.phys.titech.ac.jp

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