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応用分光学におけるインペリアル・カレッジ・ロンドンとの多面的連携

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公開日:2015.09.01

東京工業大学では、「『世界のトップスクールとしての教育システム』を構築する」「『学び』を刷新する」「大胆な国際化を推進する」という3つの柱を基本方針として教育改革を進めており、その一環として、平成26年度から「世界トップレベルの海外大学教員招聘プログラム」を開始しています。最先端研究について解説する特別講義を開講し、学生に世界トップレベルの研究に触れる機会を提供するためのプログラムです。この実施により、学生の研究に対する意欲向上や国際的視野を拡げ、本学教員と世界トップクラスの大学教員との教育や研究の交流を促進し、両大学間の関係を深めることを目的としています。

平成27年度新規招聘第1弾として、大学院理工学研究科有機・高分子物質専攻においてインペリアル・カレッジ・ロンドンのセルゲイ・カザリアン教授を本学の特任教授として招聘いたしました。

左から キンバー博士・カザリアン教授(インペリアル・カレッジ・ロンドン)、東工大の学生、ザメンゴ助教(東工大)、ガヴェリーナ(ボルドー大学博士学生)
左から キンバー博士、カザリアン教授(インペリアル・カレッジ・ロンドン)、東工大の学生、ザメンゴ助教(東工大)、ボルドー大学博士学生

森川研究室、居室におけるカザリアン教授

森川研究室、居室におけるカザリアン教授

最先端の応用分光学において著名なカザリアン教授は、分光イメージング※1に関する研究をリードしてこられました。たとえば、チップ増強ラマン散乱法※2によるナノスケール空間分解能のラマンマッピング法に成功しておられます。また、材料や医薬品のプロセス解析への応用において、その独創性と応用例の広さは、世界を駆る精力的な仕事ぶりを象徴するものとして知られています。教育面においては、イギリス国内外の大学からの依頼を受け、講義を行っているほか、国際的な共同研究の審査員や科学技術審議団体の審査員を務めており、英国内外の研究者の支援や育成に力を注いでいます。研究室には、欧州や南米、アジアからの多くの留学生が在籍し、多彩な人材の育成、基礎科学に基づいた教育を行っています。

このことから、研究・教育の両面において、本プログラムの特任教授として最適任であり、森川淳子教授を受入教員として、本学の特任教授として招聘することとなりました。

4月3日には、ATR-FTIR 分光イメージング※3を主題に幅広い分野の測定手法及びトピックスについてのシンポジウム「分光イメージングおよび関連する測定方法の最近の進歩」として、Joint Symposium of Imperial College London and Tokyo Institute of Technologyを開催し、東工大の関係教員や大学院の学生、国内の関係大学、民間企業、海外の大学から約30名が参加しました。カザリアン教授の講演のほかに、カザリアン教授の研究室に所属しているキンバー博士や京都大学、東北大学、スウィンバーン大学(オーストラリア)等からの参加者の講演も行われ、活発な研究交流の場となりました。

4月8日 講義において 赤外分光のスペクトルを実験しながら説明するカザリアン教授

4月8日 講義において
赤外分光のスペクトルを実験しながら説明するカザリアン教授

特別講義としては、4月8日から平成27年度前期の大学院講義「Applied Vibrational Spectroscopy」を開講しました。大岡山・すずかけ両キャンパスを遠隔講義システムでつなぎ、講義内で赤外スペクトルをATR-FTIR法で実験するなどの6回の講義は、30名の参加学生にとって大変充実したものとなったようです。また、シンポジウムで講演したキンバー博士が実験助手を務めるなど、研究としての交流だけではなく、教育としての交流も行われました。

その他、招聘期間中には、本学教員との研究打ち合わせ・共同実験を重ね、すでに実験結果を得たテーマや共同実験を開始したテーマが多数あり、研究・教育の両面において確かな交流関係を築くことができました。カザリアン教授が本学理工学研究科工学系との交流についても関心を持ったことがきっかけで、インペリアル・カレッジ・ロンドンへの工学系長訪問が9月に予定されています。

なおカザリアン教授は、シンポジウムや特別講義でも解説があったATR-FTIR 分光イメージングに関する長年の実績が評価され、5月5日にSir George Stokes Award 2015を受賞されました。

※1
分光イメージング : 赤外線アレイ検出器を用いた、透過および全反射フーリエ変換赤外分光(FTIR/ATR-FTIR)イメージングは、種々の複雑系材料のケミカルイメージング法として、特性解析に用いられる。
※2
チップ増強ラマン散乱法 : 原子力顕微鏡(AFM)高空間分解能と、ラマン分光法のケミカルインフォメーションを組み合わせた測定法。
※3
ATR-FTIR 分光イメージング : 錠剤溶解や薬剤放出、高分子拡散、生細胞ケミカルイメージング、その他生物医学的な系における動的過程の研究に特に適する。

問い合わせ先

大学院理工学研究科 有機・高分子物質専攻 教授 森川 淳子 /
「世界トップレベルの海外大学教員招聘プログラム」担当 総務部企画・評価課

Email : kik.sog@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2011

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