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東工大ニュース

立川志の春英語落語会2015開催報告

2015.09.15

連日35度を越える猛暑日が続いた8月5日、今年も立川志の春さんによる英語落語会が開催されました。

たくさんの参加者
たくさんの参加者

この落語会は、大学の世界展開力強化事業サマープログラムの一環として2012年にスタートしたものです。4回目ともなると「常連さん」としてこの会を楽しみにしてくださる方もいらっしゃいます。その一方で、上記のサマープログラムに参加している各国からの留学生は、日本に来ることが初めてで、RAKUGOという言葉そのものを聞いたことがない人が大半です。志の春さんご自身も、落語初心者から落語がお好きな方々まで満足していただくことには常に気を配っているそうです。ましてや英語でやる落語となると...

銘酒を飲む

銘酒を飲む

さて、多彩な魅力をもつ落語ですが、今年度は「想像の芸としての落語」が強調されました。

例年通り、落語の成立や演技の基本などについて触れた後、今年は「寿限無」からスタートしました。あまりにポピュラーな噺でありますが、英語で聴くとまた一味違った新鮮な面白さが溢れています。落語がまったく初めての留学生たちも、何度も繰り返される Jugemu に笑い出してしまいます。次の噺は「ちりとてちん」。志の春さんのバージョンでは、素直な男が素晴らしいごちそうに大感激して、ひとつひとつ丁寧に平らげるシーンがたっぷり描かれます。次に、知ったかぶりで皮肉屋の男が登場して台湾からの珍品「ちりとてちん」を口にすると、素直な男との描写のコントラストが際立ちます。みな想像の中のごちそうにうっとりし、想像の中のちりとてちんの味に悶絶し、のけぞって大笑いしました。

ここまでは古典を2作でしたが、最後の一席として志の春さんのオリジナル新作落語「だいじなもの」を演じてくださいました。これは、アメリカに出発前のちいさい孫息子に、格言に見せかけた愉快なホラを吹き込むおじいさんを中心とした人情噺です。おじいさんのホラに思う存分笑った後、最後に意外な展開が待っていました。噺が終わった後、涙ぐむお客さんもいるほど会場は深い感動に包まれました。

爆笑する会場
爆笑する会場

締めくくりは会場と志の春さんの間のQ&Aタイムです。毎年とくに留学生からユニークな質問が寄せられ、これに志の春さんが鮮やかに答えていくというコーナーになっています。今回は、「落語には今日演じた以外の形式はないのか」という質問がありました。志の春さんはすかさず「あります!」と答え、人の言葉が理解できる猿の小噺を披露してくださいました。猿が人の質問に表情と身振りそぶりでテンポ良く答えていくさまに、会場は爆笑しました。今年は「想像の芸としての落語」にフォーカスしていたせいか、「日本語の微妙な表現やニュアンスを翻訳することをめぐる問題」について、興味と質問が集まっていました。このような芸をどのように身に付けるか、という「落語の修業」についても関心が寄せられました。

最後に、実際に会場に来た参加者の感想を紹介します。

  • 正直に言うと参加する前は、時代や文化背景が異なる自分たちが、この種の日本の伝統的なパフォーマンスを魅力的に感じるとは期待していませんでした。しかし実際には、落語と一種の恋に落ちたと言っても過言ではありません。志の春さんが言っていたように、落語の人気の理由は、落語が庶民の共通の生活に触れているからかもしれません。落語の物語は、すべての年齢や国籍の人が共有でき、観客に笑いと暖かさをもたらしてくれます。そういった意味で、落語は私にとってお茶のようなものです。アルコールのように強く、ソーダのようにシャープではありませんが、長く素敵な後味を楽しむことができます。(中国/清華大学 ヤンズさん)

  • 私は「落語」という単語も今日初めて聞きました。でもこれが最初で最後にはならないはずだと確信しています!今回の落語会は私にとって非常に豊かな経験となりました。私は自身でも、劇場で即興劇を行っています。志の春さんがひとりで、複数の登場人物を演じ分け、時間や空間をジャンプする様は、ただただ素晴らしかったです。英語で演じる落語を見られるなんて、とてもユニークな機会です。強くお勧めします、終了後も、落語に含まれていたジョークを思い出し、たくさん笑ってしまうことでしょう!(スウェーデン/シャルマーズ工科大学 エレーナさん)

  • 落語のパフォーマンスは、すべての文化が同じように笑い、同じように学ぶことができると教えてくれました。日本と西洋の文化の類似性が強調されました。私は、志の春さんのパフォーマンスの質の高さと、聴衆に合わせる能力に感銘を受けました。彼の普段からの努力や勉強の賜物であることは明らかです。私は特に猿についての話が気に入りました!ぜひ皆さん、落語とうい日本文化を経験してみてください。(アメリカ/カーネギーメロン大学 ブラッドさん)

  • 有名な上方落語「ちりとてちん」も改めて英語で聴くと新鮮に感じられました。また、子弟制度や、どの演目も伝承だけで台本がないことなど、落語界のしきたりに会場の留学生達がとても驚いているのが印象的でした。来年もぜひまた観たいです。(本学職員)

  • 落語は生で聞いたのは初めてです。なぜ、一人語りの落語が芸になるのかとてもよくわかりました。コミュニケーション、イマジネーションという言葉を久しぶりに実感しました。複数の人間を演じ、どうコミュニケーションをとるのかが、表情もふくめ、とてもよくわかる芸でした。そして演じる者と観る者 のコミュニケーションもとても身近でした。イマジネーションという意味では、お酒を飲む、肴を食べるなどの仕草は本当にうまい!私も一緒に飲食したくなりました。最後に修行についての話しは印象的でした。違う世界で自分の生き方を見つけていく方法は賛否あるかもしれませんが、智恵の一つのあり方を示していると考えさせられました。(本学職員)

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西野可奈
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