東工大ニュース
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8月5日朝10時から夕方5時まで、中学生向けの言語学セミナー「目で見てわかる昔の日本語と今の日本語:タイムマシンに乗らずに行ける昔の世界」が開催されました。このプログラムは、独立行政法人日本学術振興会による「ひらめき☆ときめきサイエンス」事業の支援を受け、実施されました。
会場となった東京工業大学大岡山キャンパスの西1号館に、17名の中学生とその保護者の方々が集まりました。
「ひらめき☆ときめきサイエンス」は、科学研究費による研究成果を、社会に還元・普及するための事業です。小・中・高校生に研究成果をわかりやすく伝える体験プログラムを募集・支援しています。
「ひらめき☆ときめきサイエンス」に採択されたプログラムの多くは、理系の研究テーマを取り扱っていますが、本セミナーは歴史言語学がテーマです。理系の学問は、難しさはあるものの、実験を通してその変化を見せることがごく普通ですが、人文系の学問はとかく概念的で、どこで何が行われたのかわかりにくいものです。参加者の多くが「いったい何が行われるのかわからないが、とにかく参加してみた」と述べていました。言語の移り変わりを参加者にいかに伝えるかがポイントとなりました。
セミナーに先立ち全員(参加者、協力者、保護者)で自己紹介をし、互いに話しやすい雰囲気が作られました。また、受け身で聴講するだけにならないよう、3~4名のグループでディスカッションをしながら、セミナーは進みました。
さらに、参加者自身が考え、一つ一つ自分で研究の要所を書き込めるように、専用のワークブックが配布されました。このワークブックに全て書き込むと、自由研究のレポートができあがっているようになっています。また、大学の研究は決して中学校の勉強とかけ離れているわけではないので、中学校の勉強と関係づけながら説明が進んでいきました。
はじめに「今日は1日、大学生になったつもりで勉強しよう」と呼びかけられた中学生たち。「大学の勉強には答えがあるかどうかわからない、いや、むしろ答えよりも問題を作るのが大学の勉強だ」との説明に、一足早く大学生の気分を味わいました。研究内容だけでなく、言語学の基礎(世界に言語はいくつあるか)、数学の基礎(対数とは、感覚尺度とは)、研究の基礎(「特徴とは何か」、「似ている」と「同じ」「違う」とは)など、さまざまな問いをグループで話し合い、ワークブックに鉛筆を走らせました。
セミナーのテーマは、平安時代の言語の意味が現在の意味とどう違っているのか、それを可視化を通して見てみようというものです。分析対象は平安時代の古今和歌集です。和歌については中学の国語資料集が用いられました。具体的にページ数を示し、学校や自宅で復習できるよう、工夫されました。また、言語学でも数学を使うことを示し、関数電卓を用いて、単語の重み計算を実習しました。参加した中学生たちは、国語の本を開いたり、数学の対数を勉強したりと、学校の勉強ではあまり経験したことのない文理融合型の学習を経験しました。
セミナーの合間をぬって、散歩の時間を設け、学内を見学しました。鳥人間コンテストや、ロボットコンテストで有名なサークルの協力を得て、人力飛行機、ロボットに触れることができました。人力飛行機の翼とプロペラを抱えて「わぁ!こんなに軽いってびっくり」との感想がたくさん寄せられました。
保護者の方々にも座席を用意し、参加者と同じワークブックを配布し、ご見学いただきました。ワークブックに沿って、自主的に保護者同士でディスカッションをしてくださっていました。また中学生の参加者が考えている間、保護者の方々には研究内容や大学で行われている活動の紹介が行なわれました。
1日の終わりには未来博士号の授与とアンケートを実施し、終了しました。アンケートでは「学校の授業とは異なり、考える作業で頭をフル回転できた」「東工大で、なぜ和歌を?と思って参加したが、その意味がわかり、目からウロコ」などのご意見をいただきました。
なお、本セミナーの内容を復習できるよう、山元研究室のwebサイトに、当日の記録とワークブックのpdfが掲載されています。
お問い合わせ先
山元啓史
Email : yamagen@ryu.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2324