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山元啓史准教授が山下記念研究賞を受賞

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公開日:2015.11.25

留学生センターの山元啓史准教授が、2015年度情報処理学会山下記念研究賞を受賞しました。山下記念研究賞は、情報処理学会が主催する研究会およびシンポジウムにおける研究発表のうち、特に優秀な論文の発表者に授与される賞です。初代情報処理学会会長の故山下英男氏寄贈の資金にて運営されています。授賞式は、来年3月情報処理学会全国大会で行われる予定です。

受賞テーマ

二十一代集シソーラスのための漸近的語彙対応システムの開発

受賞理由

本論文は、勅撰和歌集である二十一代集のシソーラス開発を介して、1000年以上前の日本語における語彙体系を明らかにすることを目的としています。和歌と現代語訳のパラレルコーパスを利用した単語対の推定法により、計算手続きだけで新規登録すべき語を抽出することが可能なアルゴリズムを提案・実証し、今後、計量国語学の分野で、他の古典籍研究にも応用可能な優れた業績であると認められました。また、本論文が、10年以上にわたって研究された古典における知識の体系化の実現のための取り組みの成果であり、その積み重ねは人文科学研究の基盤的な研究として位置づけられると同時に、今後の発展性が期待できるという点でも高く評価されました。

古今和歌集(905年ごろ)における桜と吉野山との関係

古今和歌集(905年ごろ)における桜と吉野山との関係:
「桜といえば吉野山」という関係はこの時代にはまだ成立しておらず、むしろ雪山、修験道、隠遁者と吉野の関係の方が強い。

新古今和歌集(1205年)における桜と吉野山との関係

新古今和歌集(1205年)における桜と吉野山との関係:
灰色のノードは2つ(桜、吉野)のネットワークで共有している用語であり、古今集のネットワークモデルと比較すると、古今集以来の300年間で、桜と吉野の関係が密になってきていることがわかる。一般的に、西行法師の時代には「桜といえば吉野山」が定着したと言われている。

山元啓史准教授
山元啓史准教授

今回の受賞を受けて、山元准教授は以下のようにコメントしています。

長年に渡り、コンピュータによる日本語の言語の歴史を研究しております。
この研究は日本語を外国人に教えるために、入門期にざっくり「日本語はこんな形をしているんだよ」と伝えられたら、どんなに気が楽だろうと思ってはじめたことでした。それがいつの間にか日本語の普遍性を尋ねる研究となってきました。

普遍性を明らかにするには、言語の変化や変動を調べ、その相対的な違いを明らかにすることが必要になりました。一般的に「言語は、いったん形が定着すれば、その形は変わりにくいが、その意味はどんどん変化していく」と言われています。日本語は形式的には世界の言語の中でもごくごく一般的です。
しかし、日本語のように多くの人間(たとえば1億人以上)1000年以上もの間、話させている言語は、ごくわずかです。これは、日本語は1000年以上言語をさかのぼって、調査できる言語であるということなのです。

「日本語は、どんな形をしているのか」という疑問については、まだまだ十分ではありませんが、今後も、日本語に限らず、言語というものはどんな変化をしていくのかを研究していきたいと考えています。

お問い合わせ先

留学生センター 山元啓史
Email : yamagen@ryu.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2324

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