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東工大外国語研究教育センター講演会 瀬戸口郁氏「ドラマを書くこと・演じること」開催報告

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公開日:2016.02.01

2015年12月17日、文学座の俳優である、瀬戸口郁氏を講師にお招きし、東京工業大学外国語研究教育センター主催の講演会が行なわれました。

講演する瀬戸口氏
講演する瀬戸口氏

瀬戸口氏は同劇団の『女の一生』『再びこの地を踏まず』、さらには俳優座劇場プロデュースの『十二人の怒れる男たち』や音楽劇『わが町』をはじめ、多くの舞台作品に出演するほか、近年は『真砂女』『吾輩はウツである』『南の島に雪が降る』などの舞台台本を執筆し、脚本家としても高い評価を確立しています。今回は「俳優の仕事とは?」「ドラマって何?」「俳優と脚本との関係」「企画はどのように生まれるか」などのテーマを立て、「書くこと」と「演じること」のあいだを自由に往還するご自身の体験から、芝居の魅力について縦横に語っていただきました。

深みのある声に、豊かな表情と落ち着きある挙動をまじえた瀬戸口氏の話しぶりは、まさにそれ自体、舞台の上の役者のようでした。さらには、一見あちこちに話題が飛ぶかのような流れの中で、一本筋の通った大きなテーマが浮かび上がり、脚本家ならではの巧みな構成で講演が行われました。

女優の故・杉村春子氏の強烈な存在感に魅せられ、芝居の道を志した大学時代、文学座研修生として雑巾がけに明け暮れた修業の日々、食事の場面をリアルに演じられるよう、箸で豆をつまみ、口に含むまでの練習に半年をかけたものの本番で失敗し、それを見ていた憧れの大女優からお叱りの言葉を頂いたことなど、たくさんの芸談を披露していただきました。

「髭がないとこの役はできないのです」と、当日は髭を持参して血脇守之助(『再びこの地を踏まず―異説・野口英世物語―』より)の台詞を読む瀬戸口氏

「髭がないとこの役はできないのです」と、
当日は髭を持参して血脇守之助(『再びこの地を踏まず
―異説・野口英世物語―』より)の台詞を読む瀬戸口氏

「俳優の身体は本人が演じてきた脚本によって作られてゆく」という自論を紹介し、「役づくりにはかたちが大切」と言って口ひげをつけ、背筋のピンと伸びた明治時代の学者の台詞を読み上げるかと思えば、ミニ作劇講座のように会場から意見を募り、男女の出会いから結婚に至る粗筋を肉付けしていくことで、面白い芝居の条件を自ずと説き明かすなど。

瀬戸口氏は「芝居とは、ある状況に置かれたときの登場人物の行動を通して、人間の本質を描くもの」であり、瀬戸口氏が書き、演じるものの根底には必ず「人間とは何ぞや?」という問いかけがあると語りました。そしてこの問いかけこそは、ギリシャ悲劇の古典的名作『オイディプス王』以来、古今東西二千年余の文明の歴史を通して、変わらずに受け継がれてきたものだと、話を結びました。

講演の演題「ドラマを書くこと・演じること」をそのまま体現するような、濃密で味わい深い90分間となり、まるで劇場と化した大岡山西3号館LL教室で、20人あまりの聴講者は、一人芝居のような瀬戸口氏の話にひたすら惹きつけられていました。

お問い合わせ先

外国語研究教育センター 外国語準備室

Tel : 03-5734-2287

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