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高校生向けレクチャーシアター講義「魔法教室2016」開催

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公開日:2016.07.01

5月21日、東工大の新名所、最新鋭の装置を完備したレクチャーシアターにて、「魔法教室2016」が開催されました。

ホームカミングデイに連動して開催する本イベントも今年で2年目となりました。事前予約制にもかかわらず、熱心な高校生たちが開演の1時間前から待機し、開始時刻には高校生・高校教員・保護者・一般参加の方々で200名の席がほぼ埋まりました。

冒頭に丸山俊夫理事・副学長による挨拶がありました。「なぜ」と必ず問うことと自ら問題を「つくる」ことが大切であるという呼びかけのあと、いよいよレクチャー(講義)が始まりました。

レクチャーその1は、細谷暁夫特命教授による「GPSに欠かせない相対論」です。

GPS(Global Positioning System)とはどんなものか、どんなところに使われているかを問いかけて、位置情報を得るものであるとの認識を共有します。会場とテンポ良くやりとりしながら、よく知られているカーナビゲーションだけでなく、地震でどれくらい地面が動くかといった研究にもGPSを活用していることを示した迫力ある画像を次々に見せつつ、具体的に理解を深めました。

細谷曉夫特命教授
細谷曉夫特命教授

講演の様子
講演の様子

続いて、原理の説明です。宇宙には常時6機のGPS衛星が飛んでいますが、衛星が積んでいるのは時計だけで、GPSは「時間を測って距離を知る」仕組みであると解説しました。相対論の現象である「運動している時計は遅れる」また「重いものの周りでは時間が遅く流れる」ことから、高速で地球上を飛んでいる衛星が測る時刻と、地上で人々が所持している受信機の時刻はズレが生じることになりますが、それでは正しい距離が測れないため正確な位置情報が得られずGPSは機能しなくなります。そのズレを修正し、機能させるために、相対論補正を行うことが不可欠であるとの説明がありました。

「GPSは相対論が世の中に役立っている唯一の事例です!」というまとめの言葉で、あのアインシュタインの物理学が、ぐっと身近に感じられました。

相対論(相対性理論)
理論物理学者アルベルト・アインシュタインが1905年から発表した時空における物理現象を説明する理論で、特殊相対論と一般相対論とに分かれる。この理論の現象としては以下のようなものがあげられる。
  • 光の速度よりも速く動けるものはない(特殊)
  • 光の速度に近い速さで動くものは、縮んで見える(特殊)
  • 光の速度に近い速さで動くものは、時間が遅く流れる(特殊)
  • 重いもの(質量の大きいもの)の周りでは、時間は遅く流れる(一般)
  • 重いものの周りでは、空間が歪む(一般)
  • 重さとエネルギーは同じ(特殊)

戸倉和特命教授
戸倉和特命教授

レクチャーその2は、戸倉和特命教授による「お化粧は好きですか?(理工系の化粧って一体...護って魅せる?)」です。

「事件が起きますよ」と、導入から大きなポリ袋を二酸化炭素で満たし、そのなかに空気でふくらませた風船を入れたものが用意されました。

風船がどうなるのか横目ではらはらと見守りながら別の実験が始まりました。お化粧の目的には機能を付加することがあると定義づけ、まずは顕微鏡で身近なものを拡大して見てみます。服の繊維を見てみると規則的で神秘的なことに気がつき、カラー印刷を見ると3つの色の点の濃淡で絵柄ができていることがよく分かりました。ミクロの世界での思いがけない発見への興味は尽きないまま、また別の実験に移ります。

次はビール瓶2本を用意し、会場から助手を募ってそれぞれの重さを量りました。2本を比べると片方が137グラムも軽いという事実に対して、セラミックス・コーティングというお化粧技術によって軽量化が実現されているためと解説がありました。

続けてお茶のペットボトル2本を用意し、高温用と通常用の違いについて調べます。実際に押してみながら、高温用の方が三層構造で、より酸素が通りにくく工夫されていることがわかりました。しかし、いくら密閉していても、だんだん酸素が中に入り込んで酸化してしまうことがあり、それは賞味期限切れのお茶の色が変色していておいしくなさそうなことから実感できました。

炭酸ガスによる風船の実験
炭酸ガスによる風船の実験

ビール瓶の重さの比較
ビール瓶の重さの比較

突然「ボン!」と音がして、レクチャーの最初に用意した風船を見てみると、はじけるように割れていました。風船は結んで密閉していたにもかかわらず徐々に二酸化炭素が入り込んで膨らんでいったことで、天然ゴムという素材が炭酸ガスを通しやすい性質をもつことがこの実験からわかりました。

これらの実験から、素材に工夫をして美化・軽量化したり、酸化による劣化を防いだり、機能を付加して我々の生活を向上させている科学技術について理解を深めることができました。

熱心に聞き入る参加者
熱心に聞き入る参加者

最後に、岡田清理事・副学長が、高校生、なかでも女子高校生にむけて東工大のおもしろさをしっかりと強調して、レクチャーは終了しました。

アンケート結果

理論と実験というバランスの良い2本のレクチャーを高校生たちが存分に楽しんだことは、アンケート結果(165名回答)からも分かります。

レクチャーの評価

雰囲気や居心地は?

アンケートの自由記述欄より

  • 量子力学に興味があります。次回はそんな話もお願いします!
  • 身近なものをいろいろ探っていくことができ、学べてとても楽しかったです。今回の講義で東工大への関心が高まりました。
  • 実験を生で見ることができるのは珍しかったです。
  • 来年この大学に通えるよう頑張ります!!

レクチャー内容についての感想や質問も多数ありましたが、その中から1つだけ選んで細谷特命教授が答えます。

  • Q: 「時刻を正しく直す」ことは分かりましたが、どこの地点の時計を基準にして合わせるのですか。

  • A: 実は、GPS衛星が搭載している原子時計たちの示す時刻の平均値に合わせているそうです。その方が、地上局の原子時計一個に合わせる通信をするより精度が高いという実際的事情によるようです。したがって、うるう秒などを無視しています。GPSの運用のためには世界時間と一致している必要がないようです。

お問い合わせ先

国際フロンティア担当

Email : kokusais@jim.titech.ac.jp

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