東工大ニュース

「理工系学生能力発見・開発プロジェクト」2015年度活動報告

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公開日:2016.08.03

理工系学生能力発見・開発プロジェクトは、創造性の育成、国際的リーダーの育成を目的として、選抜された学生が主体となってプロジェクトを運営しています。

最前線で活躍する研究者を招いてシンポジウムや特別講義を企画し開催運営を行ったり、国内の学会に参加して専門性を高めたりすることで、将来国際的な研究者、技術者として活躍するための素地を学士課程在学時から育てています。

2015年度は、学部1年生3名、2年生2名、3年生3名の合計8名のメンバー、および修士1年生2名のTAにより活動を展開しました。

TA:ティーチングアシスタントの略。大学などにおいて、担当教員の指示のもと、学生が授業の補助や運用支援を行うこと、あるいはそれを行っている学生のこと。

シンポジウム、特別講義の開催

原則毎週ミーティングを重ね、企画立案、講演者の選定、講演者との交渉、学内外での広報、当日の運営を学生主体で行いました。

第10回シンポジウム「水素で社会を変える!」

  • 日時:2015年11月5日 17:00~19:30
  • 場所:大岡山キャンパス 西9号館2階コラボレーションルーム

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の横本克巳氏、経済産業省・省エネルギー庁の名取幸平氏をパネリストとしてお迎えし、開催しました。

横本克巳氏
横本克巳氏

名取幸平氏
名取幸平氏

横本氏からは「水素社会構築に向けた今後の展望」をテーマに、水素エネルギーの意義と政策の検討状況、水素社会の実現に向けた取り組みと今後の展望について、名取氏からは「水素社会の実現に向けた取り組み」をテーマに、水素社会実現の意義、燃料電池自動車の普及と水素ステーションの整備・構築についてお話しいただきました。パネリストからの話題提供を受け、シンポジウム参加者とのディスカッションに移る前に途中アンケートを実施して参加者からの質問や意見を集め、ディスカッションの進行の参考にしました。参加者からパネリストに沢山の質問が向けられ、熱い議論が繰り広げられました。

横本克己氏(左)、名取幸平氏(右)
横本克己氏(左)、名取幸平氏(右)

第10回シンポジウムの様子
第10回シンポジウムの様子

本学の学生・教職員、一般の方を含めて約40名の参加があり、終了後のアンケートでは、「シンポジウムに参加したことで以前より水素社会に興味を持った」と全員が回答していました。「開発など技術的なことよりもインフラ中心の講演内容だったので、とても理解しやすく、水素社会に向けた現状がわかりました」、「水素エネルギーの活用について、これまであまり関心がなかったが、知識を得ることによって興味が高まりました」、「全く興味が無かったがシンポジウムに参加したことで考え方が変わりました。参加して良かったです」等のシンポジウムの企画内容に対するコメントに加えて、「学生が頑張っていてとても感心しました。学生時代に学業だけでなくプロジェクト運営の経験を積むことは、卒業後社会人として生きていくうえで、非常に有意義なことと思います。今後の活躍にも期待します」、「社会と大学を結ぶ役割を学生主体で進めていて素晴らしいと思います」等の声もいただきました。

司会を務めた学生のコメント

司会 小泉洸生さん(左)、蒲田瑞希さん(右)
司会 小泉洸生さん(左)、蒲田瑞希さん(右)

蒲田瑞季さん(第7類 1年)

今回のシンポジウムを通して、理工系学生は科学技術の躍進ばかりでなく、理系に詳しくない一般市民の目線で、その技術をいかに社会に還元していくかを考える必要があると感じました。学業のみならず様々なことを経験し、幅広い視野を持てるようになりたいと改めて思いました。

小泉洸生さん(理学部物理学科 3年)

今回のシンポジウムを通して、水素社会がどのようなもので、現在技術的にどのような課題があり将来社会に普及させていくためにどのような社会を目標にしているのかということを聞き、理工系学生にこそ、しっかりとした教養を身につけることで、技術を開発するだけでなく技術が社会に与える影響と効果を考えられるようにならなくてはならないと感じました。

第10回特別講義「大地震による被害と対策」

  • 日時:2016年3月2日 17:00~19:00
  • 場所:大岡山キャンパス 西9号館2階コラボレーションルーム

大学院総合理工学研究科人間環境システム専攻の翠川三郎教授から、「過去の大地震での被害の実例、首都直下地震で予想される被害や対策について」をテーマとした講演がありました。講演では、2011年の東日本大震災、1995年の兵庫県南部地震、1923年の関東大地震の実例分析を通して、今後想定されるマグニチュード7クラスの地震について、その被害の規模や分布等を三次元的表現で予測の解説があり、被害想定を防災対策にどう活かすか、高耐震構造システムの開発状況等を説明しました。翠川教授の講演を受けて、特に近隣住民の方々から活発な質問が投げかけられ、防災連携について熱論が交わされました。

翠川三郎教授
翠川三郎教授

第10回特別講義の様子
第10回特別講義の様子

近隣住民の方々をはじめとした学外者の参加が多く、本学の学生・教職員も加えると参加者数は約30名でした。終了後のアンケートには、開催日が3月2日と東日本大震災が起きた3月11日に近いこともあり、「東日本大震災の日を目前に、改めて防災について考える良い機会になりました」とのコメントや、「改めて防災対策の大切さを認識しました」、「さっそく家の家具を固定します」、「備えを点検したいです。近所の人にもどのような備えが必要なのか知らせたいと思います」等、自らに関わることとして問題意識を刺激されたとの声が多く寄せられました。参加者の防災意識の向上に繋がる機会となり、大変有意義な講演となりました。「わかりやすく説明されて内容も理解できました」、「理論的な話、実データに基づく話、防災への取り組みと非常にわかりやすい構成でした」、「学生スタッフの応対が感じが良かったです」、「進行がスムーズで良かったです」と講演や運営に対してもご好評の声をいただきました。

司会を務めた学生のコメント

司会 石曽根香奈さん)司会 石曽根香奈さん

石曽根香奈さん(工学部無機材料工学科 2年)

先の東日本大震災や、首都直下地震への危機感のためか、今回の特別講義には東工大関係者のみならず多くの一般の方にご参加いただきました。このような地震への備えとして、災害のリスクを分類し、何を食い止めることで大きな被害を出さないようにできるかを検証することが大切なことだと知りました。また、大地震への対策に最先端技術を用いるのはもちろんですが、私たちも日頃から防災についての意識を持つ必要があると改めて感じました。

学会への参加

国内で開催されている学会に参加することで、研究を発表し議論する場である学会がどのように行われているかを見学し、早期から研究に対する積極的な関心を伸長するともに、これから研究者として何を身につけていくべきかを積極的に学ぶ機会を設けています。参加する学会は、学生が自らの興味関心に基づいて選んでいます。

第1類 1年・・・2015年度京都大学防災研究所研究発表講演会に参加

私は将来、地震の一般的なメカニズムを解明し、その研究成果を防災に役立てようと思っています。今回の学会で防災セッションの発表を聞くと、防災分野におけるアウトリーチ活動は理工学系の研究者よりも、社会学などの文系の研究者が熱心に取り組んでいることがわかりました。理学と減災学を融合させるのは非常に難しく、さまざまな障害があるため、それぞれの分野を越えて協力することで課題を解決していく必要があると感じました。

第4類 1年・・・日本音響学会 2016年春季研究発表会に参加

まだ1年生なので専門知識がなく発表内容が理解しづらかったが、発表の仕方はとてもいい勉強になりました。また、研究内容をとても細かい問題に絞っていることに驚きました。

第7類 1年・・・第27回日本臨床微生物学会総会・学術集会に参加

今回の学会見学を通じ、東工大でただ科学技術を学ぶだけでは不十分であると感じました。自分が創造性を持って、日常生活の中に問題点、改善点を見つける力がなければ科学技術を活かすことができません。これではせっかくの能力を社会に還元できないことになってしまいます。それ故、これからの大学生活の中で勉強はもちろん、様々なセミナー、インターンシップ、学会等に参加し、自分の視野を広げていきたいと思いました。また、学会に参加することで自分とは異なる意見を知ることができ、思考の幅が広がったように感じます。微生物という1つの分野でも、医者、微生物学者、化学者、製薬会社等の幅広い分野の人々がその発展に力を合わせることによってようやく高いレベルが保持されることが分かりました。そのため人脈を広げ、多くの人と議論することが不可欠だと思いました。これから様々な人との出会いを更に大切にしていきたいと思います。

工学部 高分子工学科 3年・・・第89回日本薬理学会年会に参加

私は今回の学会参加によって得られたことが大きく2点あります。1つは薬理学という学問について興味を持ったこと。また、それと同時にこの分野の基本的な土台となる生化学にも興味を持ったことです。実際に風邪の時に自分が飲んでいる薬がどのように身体に作用しているのかを知ることは意味のあることだと思うし、この分野を幹にして様々な分野を学んでいけば生活にも役立つのではないかと思いました。2つ目としては、ポスター発表に関係することです。自分自身、薬理学に対する専門の知識がなかったためにポスター発表の内容を見てもほとんど理解することはできなかったが、3日間を通して300枚近くのポスターを見てきたことで、ポスターのデザインに関し良い点、悪い点を整理することができたと思います。ここで得られた知識は今後自分がポスターを作成するにあたって役に立つと思います。

プロジェクトの活動について学内外で発表

メンバー代表の貴志崇之さん(工学部 制御システム工学科 3年)が、2015年11月18日に筑波大学で開催された「筑波大学つくばアクションプロジェクト公開シンポジウム2015 繋がる力・広がる絆」、2016年3月7日に東工大で開催した「第9回学生応援フォーラム」において、プロジェクトの活動内容と意義や成果について発表を行いました。

プロジェクトメンバー(翠川教授と共に)

プロジェクトメンバー(翠川教授と共に)

本プロジェクトは、2016年度も新メンバーを迎え活動を継続しています。

学生教職員の所属は2015年度当時のものです。

お問い合わせ先

学生支援センター自律支援部門

E-mail : siengp@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7629

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