東工大ニュース
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6月22日、本学科学技術創成研究院(IIR)先導原子力研究所は、技術部基盤技術支援センター協力のもと、2015年度の研究所資源の共同利用・共同研究の取り組みの成果と同研究所に所属する各研究室の研究活動について報告する研究交流・発表会を開催しました。当日、会場となった大岡山北3号館1階多目的ホールには、学外15名、学内35名(うち学生12名)の計50名が集まりました。
先導原子力研究所は、2016年4月の学内組織改革に伴い原子炉工学研究所から名称変更された組織です。同研究所は、第2期中期計画に沿って4つの重点研究分野およびそれらを支える基礎・基盤技術分野の研究を組織的に推進しており、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故以降は、除染技術の研究開発をはじめ、福島復興に向けた取り組みにも積極的に貢献しています。また、2014年度からは、研究所の資源である実験装置、ソフトウェア、データベース等を基盤とした他大学・研究機関との共同研究を支援する「共同利用・共同研究」の制度をスタートさせ、学術界・産業界・社会のニーズに広く応えるための新しい研究体制を整備しました。
矢野豊彦所長による開会挨拶および組織改革に伴う名称変更と最近の活動報告が行われた後、第1部「先導原子力研究所のミッション研究」で2件の報告が行われました。まず、「DNA二重鎖切断の認識と修復:分子メカニズムの理解から放射線治療応用へ」と題し、松本義久准教授がDNAへの放射線影響に関する最新の研究を紹介しました。続いて、相樂洋准教授が「自然災害・核テロ・核拡散脅威に堅牢な革新的原子力システム」と題して発表を行い、3S(安全・核不拡散・核セキュリティ)を含めた3.11以降の原子力システムの在り方について議論が交わされました。
休憩後、第2部では、2015年度共同利用・共同研究について、2名の学外共同研究者による招待講演がありました。1人目の群馬大学大学院理工学府環境創成部門の石飛宏和助教は、「多孔質ナノファイバーを実装した燃料電池用の電極触媒」をテーマに、原子力と並んで今後の持続可能社会を支える重要なエネルギー源として有望視されている燃料電池開発の最前線を紹介しました。2人目の日本原子力研究開発機構原子力基礎工学センターの大久保成彰副研究主幹は、「ADS※1用材料に関する研究 ~TEF-T※2照射計画及び材料照射・腐食挙動~」と題し、放射性廃棄物量低減手法として期待される加速器駆動未臨界炉に用いる材料の劣化挙動把握に関する最新の研究について発表しました。
招待講演の後、第3部として2015年度共同利用・共同研究課題および同研究所に所属する各研究室の研究活動に関するポスターセッションが開催されました。ポスターの発表件数は29件にのぼり、学外者も交えた活発な意見交換が行われ、小栗慶之副所長の挨拶により盛会のうちに閉会となりました。