東工大ニュース

第1回大岡山健康講座開催報告

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公開日:2016.10.28

9月13日、東工大リベラルアーツ研究教育院は、大岡山駅上にある東急病院との共催で、本学メインキャンパスのある大岡山駅の周辺地域や東急線沿線にお住まいの方々を対象にした「大岡山健康講座」を開催しました。当日は約200名の参加があり、健康に対する関心の高さが伺えました。

東急病院の母体である東京急行電鉄株式会社(以下、東急電鉄)は、2015年3月に従業員の健康管理を行う優良企業として東京証券取引所より「健康経営銘柄」に選定されたことに伴い、東急病院のある大岡山駅周辺を「健康ステーション大岡山」と称し、健康の発信拠点として、さまざまな取り組みを実施しています。東工大でもこれまで、リベラルアーツ研究教育院の林直亨教授の監修で、健康啓発ポスターの作成や、工大祭でのウォーキングイベントの開催に取り組んでいます。今回の大岡山健康講座も、この取り組みの一環です。

最初に東急病院の徳留悟朗院長から挨拶があり、「大岡山を健康の街のモデルとしていきたい」と今後の意気込みが語られました。

続いて東急病院医療連携室の長瀬崇志課長補佐から東急病院の詳細な説明があり、「大岡山を健康長寿の街にしたい」との話しがありました。

徳留悟朗院長
徳留悟朗院長

長瀬崇志課長補佐
長瀬崇志課長補佐

その後、3部にわたる講座が開かれました。

第1部「よく噛むことの重要性」~エネルギー消費量の観点から~

リベラルアーツ研究教育院 林直亨教授

林教授は、研究者の目線から健康について話しました。

まず林教授から参加者に対し「自分が早食いだと思う人は手を挙げてください」と質問をすると、多くの人の手が挙がりました。これに対し林教授が「結構いますね」と返すと会場には笑い声が漏れました。

肥満の予防としては、食べる量を減らすことか運動して消費エネルギーを高めることの2つが通常考えられるとしたうえで、林教授の研究でもある食べ方で解決していく方法が紹介されました。

欧米では以前から普及していたフレッチャリズム(ひと口あたり30回から40回の咀嚼をする)を提唱したホレス・フレッチャー氏は保険に加入できない程の肥満だったが、よく噛んで食べることで、50代でも大学生並みの体力があったということや、厚生労働省や日本肥満学会も約30回噛むことを良いとしているなど、よく噛むことが重要とされている背景があります。

林直亨教授

林直亨教授

林直亨教授

よく噛むと、食後のエネルギー消費量である食事誘発性体熱産生(DIT:Diet-Induced Thermogenesis)が増えることを林教授の研究グループが明らかにしており、よく噛むと早食いよりも食後のエネルギー消費量が10 kcalほど増加し、換算すると1年で10,000 kcal、体脂肪1.5 kg分の差に相当すると話しました。また、食後のガム咀嚼はDITを増やすとはいえ、食事中によく噛むことのほうが効果が高いことや、飲料を使った実験結果に基づいて咀嚼の刺激だけでなく、味覚の刺激も両方とも大切であると語りました。

これらのことから「太りたくなきゃ、やせたきゃ、味わえ!」として話を締めくくりました。

第2部「健康のためにできること」~リハビリテーションの立場から~

東急病院 リハビリテーション科 辰濃尚医長

辰濃医長は、医療従事者の目線から健康について話しました。

大岡山駅の消費エネルギー表示がある階段
大岡山駅の消費エネルギー表示がある階段

メタボリックシンドロームにならないためには、食事、運動、禁煙が大切であり、例えばエスカレーターではなく階段を使うなど、日常生活でも取り入れられることは多くあると話しました。大岡山駅では階段に消費エネルギー表示があり、楽しんで階段を使えるようになっていることが紹介されました。

その後認知症の話に移りました。認知症は単なる老化現象ではなく、脳の神経細胞が壊れてしまう病気であることを示し、「朝ごはんの内容を忘れるのは老化による物忘れだが、朝ごはんを食べたこと自体を忘れるのは認知症による記憶障害です」と説明しました。

辰濃尚医長

辰濃尚医長

辰濃尚医長

生活習慣病対策としては運動を、頭の老化には人と交流することや趣味を持つなど生活の中で脳に刺激を取り入れていくことを勧めました。

第3部「自宅で簡単にできる!かんたんエクササイズ!!」~今より10分多く、毎日からだを動かしてみませんか?~

東急スポーツシステム株式会社 山城智幸ヘルスケアコーディネーター

山城コーディネーターは実際に体を動かすインストラクターの目線から健康について話しました。

まず一息つくために会場全体で脳トレを行いました。これは手をグーパーしたり、指で数を数えたりするもので、一見簡単そうですが意外に難しく、参加者は集中して取り組んでいました。その後、厚生労働省の+10(プラス・テン)活動が紹介されました。これは今より10分多く体を動かすだけで健康寿命を伸ばせるという考えに基づく活動です。

山城智幸ヘルスケアコーディネーター
山城智幸ヘルスケアコーディネーター

脳トレをする参加者
脳トレをする参加者

ロコモ予備軍かどうかの7つのチェック
ロコモ予備軍かどうかの7つのチェック

続けて山城コーディネーターから「ロコモって知っていますか」という質問が投げかけられると、会場からは「携帯電話の会社」という回答があり、笑いが起きました。ロコモというのは日本整形外科学会が提唱した運動器症候群(ロコモティブシンドローム)の略称です。

自分がロコモ予備軍かどうかの7つのチェック項目が会場のスクリーンに映し出され、自己診断したのち、このロコモを予防するための運動を、再び会場全体で行いました。もも上げ体操、つま先あげ体操、かかとあげ体操、腕のトレーニング、腰背部のトレーニング、腰と背中のストレッチ、胸のストレッチです。

最後に「明日から今より10分多く、毎日体を動かしましょう!合言葉は+10です!!」と呼びかけました。

同じ「健康」をテーマにしていても、研究、医療、運動実践と違った切り口の話を聞くことで、いろいろな角度から健康について考えることができ、参加者にとって大変有意義な講座となりました。

リベラルアーツ研究教育院

リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に新たに発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。

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