東工大ニュース
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5月29日から8月3日にかけて、ジョージア工科大学と東工大の連携プログラムであるJapan Summer Program in Sustainable Development(ジャパン サマー プログラム イン サステイナブル ディベロップメント、以下JSPSD)が開催されました。
JSPSDは、2015年に国連にて採択された持続的開発目標(SDGs)を強く意識しながら、日本で持続的開発、特に都市やコミュニティーに関わるさまざまな持続性の問題を検討し、学修するサマープログラムです。離れた国で異なる教育・運営システムを持つ2大学の強みを相互に生かし、両大学の学生が共に学び合う機会を作ることを目標として企画されました。
本プログラムは、東工大側の担当教員である環境・社会理工学院 融合理工学系の阿部直也准教授と、ジョージア工科大学側の担当教員であるサム ナン スクール オブ インターナショナル アフェアのブライアン・ウッダル教授により、約2年間の構想と準備期間を経て実現しました。2014年からおよそ2年間にわたり築かれた相互の信頼関係を基に、多くの検討課題を一つ一つクリアにしながら連携して準備を行ってきました。この2年間で、ウッダル教授は本学を何度か訪問し、阿部准教授も本学の水本哲弥副学長(教育運営担当)が2015年11月にジョージア工科大学を訪問した際に同行して、JSPSDの立ち上げに向けて、ジョージア工科大学のイヴ・バーサロー副学長をはじめ、関係する教員やスタッフと面談するなど、準備を重ねてきました。
JSPSDはジョージア工科大学の夏季海外プログラムとして、10週間にわたって東工大大岡山キャンパスにて実施され、ジョージア工科大学の学生18名と東工大生7名が参加しました。提供される講義(4科目)やプログラムはすべて、ジョージア工科大学の教員が中心となって英語で開講され、東工大生にとっては学内留学といえる学習環境が実現しました。ジョージア工科大学からは、ウッダル教授のほか、PBL(Problem-Based Learning、課題解決型学習)の専門家であるウェンディ・ニューステッター博士・工学部長補、土木環境工学科のアジョー・アメドクジ・ケネディー教授、そしてジェニファー・ハーシュ博士・サーヴ・ラーン・サステインセンター長が講師として来学しました。また、プログラム全体を支援するスタッフとして、ジョージア工科大学 リベラルアーツ研究科のスタッフであるヴィンス・ペディシーノ氏も来訪しました。
本プログラムでは両大学の学生が一緒に学び、取得する単位はそれぞれの学生が所属する大学から付与される仕組みを整えました。
また、学生たちが実際に現地へ赴き現状を経験することを重視することが大切であるとの認識のもと、複数のフィールドワークを実施しました。6月4日から6月10日までの7日間、日本各地の現状を理解するため、国内フィールドワークとして東京、広島、高松、豊島、京都、大垣を巡りました。このフィールドワークでは、1週間にわたって寝食を共にし、また、日本語の説明を東工大生が英訳するなど、両大学の学生たちがお互いに協力しあうことでぐっと関係が深まりました。7月27日には、世田谷区にある世田谷清掃工場と世田谷区資源循環センターでフィールドワークを実施しました。
プログラムの中心を占めるグループワークでは、グループごとに両大学の学生が協力しながら、東工大周辺を実際に歩いて調査しました。聞き取り調査では東工大生がインタビューを率先して行い、その内容を英訳するなどしてジョージア工科大生の理解とグループワークに貢献していました。一方で、課題はすべて英語で実施されたため、レポートやプレゼンテーションのスライドの英語などはジョージア工科大生が確認と推敲をするなど、助け合いながらのグループワークが実現しました。
8月3日に行われたJSPSD最後の授業では、学生たちが取り組んできた「持続可能な開発」をテーマにしたプレゼンテーションを行いました。最終プレゼンテーションでは、各グループが直前まで練習をしている姿が印象的でした。どのグループのプレゼンテーションも趣向を凝らしたものであり、学生たちの熱意と努力が感じられる内容でした。
今回初めて開催したJSPSDは、東工大とジョージア工科大学の学生たちがお互いに協力し、時に相互に教え合い、SDGsの文脈をふまえながら、日本における持続的開発について多方面より考える機会をつくりあげることができました。両大学の学生にとって、また教員にとっても学びの多い有意義な10週間となりました。
今回のフィールドワークを通し、さまざまな都市の「持続可能性」を見ることができました。どの都市もその地域特有の「持続可能性」に対する取り組みや課題を持っており、視野を広げることができました。また、ジョージア工科大学の学生と1週間交流していく中で、自分が自国のことをまだまだ理解できていないということに気づかされました。普通、日本人が思わないようなことをアメリカ人は感じていることも少なくなく、文化の違いをお互いに共有することが非常に興味深かったです。また、国内フィールドワークでの約1週間は英語をメインに会話をしていたため、日本にいながら留学をしているような感覚で新鮮でした。1週間生活を共にしていたため、グループワークも距離が縮まり、より濃い議論ができるようになりました。
プログラム内では、語学の面だけでなく、彼らのものの考え方、グループワークに対する姿勢、お互いに助け合うことの大切さを学ぶことができました。プログラム外では、土日に彼らと遊び、コミュニケーションの取り方、英語で説明する力等を学ぶことができました。外国人学生の好奇心の強さ、日本人との感覚の違い、また住んでいる国にも拘わらず、自分の知らないことが日本にまだたくさんあることに改めて気づかされました。
JSPSDの活動記録は以下のページをご覧ください。