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EON-ELSIウィンタースクール開催報告

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公開日:2018.03.19

1月22日から2月2日まで、大岡山キャンパス石川台7号館において、本学 地球生命研究所(以下、ELSI)とEONプロジェクトが共同で企画運営する集中コース「EON-ELSIウィンタースクール」が開催されました。

EONプロジェクトは、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアにあるアメリカの慈善団体・ジョンテンプルトン財団より、多額の競争的研究資金の提供を受け、2015年7月1日に発足し、33ヵ月間にわたり活動してきました。

積極的に講義に参加する学生たち(写真:ネリッサ・エスカンラー)

積極的に講義に参加する学生たち(写真:ネリッサ・エスカンラー)

ELSIは、天文学、惑星科学、地球力学、地震学、鉱物物理学、地球化学、電気化学、システム化学、前生物化学(prebiotic chemistry)、 生化学、分子生物学、バイオインフォマティクス、合成生物学、システム生物学、進化生物学、微生物学、AI、複雑系科学等々、多分野から「地球と生命」、ならびに「生命の起源」について研究している機関です。

「生命の起源」に関する問いは、一つの分野に限った見解だけでは解くことができません。多分野の研究者が集まり、それぞれの分野から問題を解く「多分野にまたがる研究(interdisciplinarity)」こそがELSIのユニークな研究方法であり、最大の強みです。

ELSIがウィンタースクールを企画するにあたり、世界中にさまざまな似通ったコースがある中で、本プログラムでは他とは全く違うことを提供したいと考え、検討を進めました。

その結果、当初想定よりもはるかに多い227件の応募が世界各国から寄せられ、その中には南極で研究を行っている大学院生からの応募もありました。また、男女比率がほぼ半数ずつと理想的な応募状況となりました。最終的には、応募者の研究内容や適性を考慮したうえで、日本、米国、フランス、ドイツ、イギリス、ブラジル、韓国、インド、オーストラリア、タイ等の研究所に所属し、様々な分野(生命科学、地球科学、物理学等)で研究を行う計34名の大学院生とポスドクが選ばれました。

約15倍という難関を突破した参加者は、全員がEON-ELSIウィンタースクールの精神をしっかりと理解しており、野外活動、座学とプロジェクトワーク、そして幅広い数々のセミナーに熱心に参加していました。

太陽系外惑星についてのデータベース作成プロジェクト(写真:ネリッサ・エスカンラー)

太陽系外惑星についてのデータベース作成プロジェクト(写真:ネリッサ・エスカンラー)

セミナーでは、生物学者が地球のマントルの動きについて難問を投げかけたり、地質学者が水中熱水系メタゲノムシステムについて猛勉強したり、普段は惑星形成についてデスクワーク(PC上のシミュレーション)をしている研究者が初めて実験室に入り、自分の鼻から採取した細菌を育てるなど、他では見られないような場面が展開されました。

トニー・ジャー研究員のコメント(地球生命研究所(ELSI))

私は、企画担当の当初メンバーの一人として、ウィンタースクールプロジェクトにたずさわりました。

まず、開催期間を2週間と決め、その期間内に「生命の起源」についてゼロから学べるウィンタースクールの講習内容を検討していきました。メンバー間で多く話し合ったポイントは、「どうすれば、このウィンタースクールを特別なものにできるのだろうか」「他機関が主催するものとどう差別化をはかるべきか」の2点でした。

神奈川県神縄断層付近で観察している様子(写真:望月智弘研究員)

神奈川県神縄断層付近で観察している様子(写真:望月智弘研究員)

通常、セミナーや講義の内容は大変興味深く重要なものである一方、誰かの研究に直接適用できないことが多く、教室で紹介されたアイディアは、参加者それぞれの頭の片隅で受動的に反芻され、グループワーク等を通じて、各々の新たな考え方となることが多いものです。このため、私たちは短期間に実践的なプロジェクトやチュートリアル講義を取り入れることにし、参加した大学院生が2週間で実際に何かを学べるよう配慮しました。

静岡県峰温泉でサンプル採取している様子(写真:吉屋一美研究員)

静岡県峰温泉でサンプル採取している様子(写真:吉屋一美研究員)

そして、私たちELSIに在籍する研究者たちが最も恩恵を受けているものであり、海外の研究機関勤務の研究者が簡単に触れることができないもの、それは日本そのもの。日本各地でみられる美しく力強い自然の光景です。日本は地質学的に多様であり、参加者が日本独特の地質学的特徴を見学できるよう1週間弱のフィールドトリップを企画しました。ELSIに在籍する地質学、火山災害等の専門家による特別講義を受けながら、温泉、間欠泉、プレート境界、火山などを勉強し、さらには東工大内にある「地球史資料館」ミュージアム訪問も計画しました。

ウィンタースクール終了後、参加者それぞれが所属する研究所や大学で自分の研究に戻った時、地球生命科学の重要な問いを解くための学際的研究の重要性を理解する一助となり、それぞれの研究に深み持たせる糧となっていれば非常に嬉しいです。専門知識の幅だけでなく、それぞれの人が貢献したユニークな文化的洞察のおかげで、この2週間で培った国際的な研究者ネットワークは、一人ひとりの将来にとって大きな財産になると思います。このネットワークを維持し続けていくことで、彼らは互いに協力しあう機会を作り、新しく、輝かしい未来を切り開いていってくれることを、この企画に最初から携わった主催者の一人として願っています。

セミナー終了後、たくさんの質問、意見交換に白熱する多くの学生と講師達(写真:ネリッサ・エスカンラー)

セミナー終了後、たくさんの質問、意見交換に白熱する多くの学生と講師達(写真:ネリッサ・エスカンラー)

櫻庭遥さんのコメント(理学院 地球惑星科学系 修士課程1年)

伊豆巡検や講義を通して、地球ダイナミクスをはじめ、地球史から惑星形成、生命の起源と進化まで広く深く議論が展開され、とても充実した2週間でした。

巡検初日には大雪で高速道路が通行止めになるという“Winter School(ウィンタースクール)”らしいハプニングもありましたが、待ち時間にみんなで日本語の練習をしてみたりラーメンを食べたりと、参加者同士自然と打ち解けることができました。はじめは英語での共同生活に少し怖気づいていましたが、段々とお互いの性格や考え方が見えてきて、安心して楽しむことができました。

“Astrobiology(宇宙生物学)”というテーマに世界中から集まった参加者は、出身も研究分野もさまざまで、全く違うアプローチでも同じ興味を持って研究しているというのは、なんだか不思議で面白いなと思います。グループワークのメタゲノム解析では、中でも専門と離れた分野の研究を実際に体験することができ、とても貴重な経験になりました。グループディスカッションではうまく参加できず苦しい場面もありましたが、素敵なスタッフの方々と心の広いメンバーのおかげで最終日まで完走することができました。

これからも勇気を出していろいろなことに挑戦することで、このスクールで得たものを今後につなげていきたいです。

御殿場で富士山を背景に集合写真(写真:野田夏実さん(今回の参加者:東京大学の学生さん))
御殿場で富士山を背景に集合写真
(写真:野田夏実さん(今回の参加者:東京大学の学生さん))

ELSIホールでの(全講義を終了後の)集合写真(写真:ネリッサ・エスカンラー)
ELSIホールでの(全講義を終了後の)集合写真
(写真:ネリッサ・エスカンラー)

お問い合わせ先

地球生命研究所 WPI研究員トニー・ジャー(生物学)

E-mail : eon-info@elsi.jp

Tel : 03-5734-2740(秋山)

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