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デザイン思考ワークショップ d.school comes to Tokyo Tech 2017を開催

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2018.05.09

2017年10月28、29日の2日間、米国スタンフォード大学のデザインスクール(Hasso Plattner Institute of Design at Stanford University、通称「d.school」)の講師3名のファシリテーションによるワークショップ「d.school comes to Tokyo Tech (d スクール カムズ トゥー トーキョーテック)2017」を開催しました。本ワークショップは2013年から毎年開催しており、今回で4回目となります。参加者は、本学 グローバルリーダー教育院(以下、AGL)の所属学生に加え、東京大学、一橋大学、大阪大学、東京外国語大学、慶應義塾大学の学生の計40名の学生が参加しました。

ワークショップ概要

  • ファシリテーター : 昨年に引き続き、トーマス・ボース氏、デイヴィット・ジャンカ氏、スコット・ウィットフト氏

  • 使用言語 : 英語

参加者は応募者約68名から、多様性と英語力を考慮し40名を選抜しました。 40名の「出身大学別」「男女別」「大学院生・学部生別」「日本人学生・海外学生別」「専攻別」の内訳は下記の通りです。

グラフ

ワークショップ・テーマ : 「海外旅行者の東京体験を再設計する(Redesign the Tokyo Visitor Experience!)」

東京には国内、海外を含め、毎年数百万人レベルの人々が訪れます。3年後の2020年には東京オリンピックも開催され、より多くの海外旅行者が東京を訪れることと思います。海外からの旅行者は、東京で、どんな経験をしたいのでしょうか?初めての観光客は有名な場所を訪れたいでしょうし、日本文化をより味わいたい人もいるでしょう。また、学生や研究者など勉学に励みたい人もいるでしょうし、仕事で成果をあげたい人もいるでしょう。東京への訪問者は何を求めているのでしょうか。新たな体験を作り出す余地はあるのでしょうか。将来、東京を訪れる意味を再考してみてはどうでしょうか。また、東京に住んでいる人は、ホストとしての役割を改めて考えてみませんか。

ワークショップの様子

第1日目

“Empathy(共感)”をインタビューから探る

2人1組になって、相手の財布の中身を見せ、その理由や意味を説明してもらい、相手の興味や考えを理解する(共感を探る練習)。

ワークショップの様子

ワークショップの様子

ワークショップの様子

ワークショップの様子

ワークショップの様子

チーム分けとテーマの理解

今回のテーマである「海外旅行者の東京体験を再設計する(Redesign the Tokyo Visitor Experience!)」では、海外から東京に来た渡航者のニーズや思いを掘り起こし、東京での体験を再設計することを目的としています。学生は4人1組、10グループに分かれて取り組みます。

チーム分けとテーマの理解

チーム分けとテーマの理解

チーム分けとテーマの理解

フィールドワーク

自由が丘、代官山、渋谷、大井町など海外からの渡航者がいそうな町に行き、東京での新たな体験について質問します。初対面の人に、こちらの意図を説明し、協力してもらうのですが、かれらの本音を引き出し、empathize(共感)に持っていくのは簡単ではありません。

問題点の洗い出しとオポチュニティ・ステートメントの作成

インタビュー結果をもとに、チーム内でインタビュー結果の解釈・考察を共有し、課題を設定します。何が問題になっているのか、解決できるとどうなるのかをディスカッションしていきます。

問題点の洗い出しとオポチュニティ・ステートメントの作成

問題点の洗い出しとオポチュニティ・ステートメントの作成

問題点の洗い出しとオポチュニティ・ステートメントの作成

問題点の洗い出しとオポチュニティ・ステートメントの作成

問題点の洗い出しとオポチュニティ・ステートメントの作成

第2日目

解決策のアイデア出し

課題を解決するアイデアをできるだけ多く出します。ここでは、実現性や技術的課題はあまり考慮する必要はありません。できるだけ多く案出し、メンバーの投票によってインパクトのあるアイデアを選び出します。

プロトタイプの開発

上記で選定したアイデアを形にして可視化します。模造紙、ボール紙、モール、割り箸などを使って作っていきます。そのアイデアを実際に使うシーンを想定し、誰がどのように使い、どのような効果があるのかを中心に考えます。

検証とブラッシュ・アップ

試作品(サービス)を他者に試してもらい、思索の評価とフィードバックをもらいます。学内外の学生や社会人にテスターをお願いしました。1チームにつき、3~4人のテスターの方から試作品のフィードバックをもらい、そのフィードバックから「ニーズのメカニズム」を検討し、プロトタイプの変更を行います。最終的に、修正したもの(サービス)を寸劇スタイルで発表します。参加した他の学生や講師から、疑問点、さらなる改良点等のコメントをもらいます。

キャプションキャプション

検証とブラッシュ・アップ

検証とブラッシュ・アップ

参加者のコメント

東工大 D2 女性

コーヒーを飲みながらディスカッションできるなどの自由な感覚のワークショップが良かった。1チーム4名はワークショップとしてベストな数だと思う。

東工大 M2 男性

2日間の間に「デザイン思考」の全てのステップを実際に経験できるなどとても有意義で、特に、外へ出て実際にインタビューを行うなど、期待以上のワークショップだった。

慶応義塾 M1 男性

ワークショップの各ステップは細部までとてもよく考えられていて、その役割もよく理解できた。街中へ出て行ってインタビューしたり、プロトタイプを作って第三者にテストしてもらうなどの実体験があるワークショップはこれまでにないもので、多くの示唆や発見があった。

一橋大 B4 女性

指示ややるべきことが明解かつ詳細であり、タスクをしっかり理解した上で行動できた。またどうするのか少々不明な時も、周りにいるスタッフに聞くことができた。思っていたより気軽な感じあり、またブレークも多くとってくれたので、とてもリラックスした雰囲気でできた。講師と学生の距離感が他のクラスより近く感じた。

東京大 B2 男性

ファンクショナル・ニーズとエモーショナル・ニーズがあることに気が付いたことが良かった。

東工大 B2 男性

ワークショップは活動的で楽しく過ごせた。特に、学外に出て、街の人にインタビューしたことは良い経験になった。

東工大 M1 女性

講義が刺激的だった。すべてがスピーディに行われ、時間が短く感じるほと内容が濃かった。

一橋大 B4 男性

プロトタイプは、限られた時間内で、できるだけ完璧なものを作るよりも、仮説の検証に意味があることがわかった。

東工大 M2 男性

ワークショップはとてもリラックスした雰囲気だった。2日間でアイデアを具現化する自信はなかったが、最終的にはできた。

東工大 M2 男性

講師の方が、やるべきことのデモをしてくれたり、一緒に考えてくれるのでタスクを行うことに自信が持てたし、それぞれのステップをよりよく理解できたと思う。教師が学生を教えるのではなく、先輩が後輩を手助けする、というような全体的な雰囲気がいいと思った。

東工大 B3 男性

ユーザーインタビューが良かった。講義の前は、他の人の生活の中に隠れたニーズを聞くのは難しいと感じていたが、限界点を聞く方法でその人のコメントを引き出せることを学んだ。

東工大 M2

学生はこのたった2日間で、デザイン思考の全プロセスを理解することができる。想像していたり素早いアクションによりより積極的な雰囲気をつくりだせることが印象深かった。

東工大 M2 男性

「デザイン思考」の方法論を理解させ実践させるという、ワークショップの進め方がいいと思った。

D=博士後期課程、M=修士課程、B=学士課程

グローバルリーダー教育院 山田圭介特任教授のコメント

“d.school comes to Tokyo Tech”は、d.schoolの講師が日本の大学で行う唯一のワークショップです。

1.
学生に本物に触れさせたい。いわば「デザイン思考」の総本山とも言うべきスタンフォード大学d.schoolでワークショップを運営している講師から、Creative Confidence(クリエイティブ コンフィデンス)というマインドセットとUser Centric(ユーザー セントリック)という考え方と能力を学生に植え付けたい
2.
米国スタンフォード大学d.school流の、リラックスした雰囲気ながらも、スピーディで受講者の裁量で結果を出さざるを得ない切迫感を同時に体感させたい
3.
英語という環境の中で、あまり面識がなく国籍や専攻など多様なバックグラウンドを持ち、且つ優秀で意識の高い学生との協働作業の楽しさを体感させたい

という理由から開催しています。

来年度も開催予定ですので、未体験の方は、このグローバルスタンダードのワークショップに是非参加してほしいし、過去体験した方でも、再度挑戦してもらって構いません。

また、ここで出てきたアイデアを「事業」という形に近づけたい、または、デザイン思考で培ったマインドセットと考え方を、「事業」という実践で試したいという方には、「リーン・ローンチパッド」というワークショップを用意していますので、そちらにも参加してください。

講師からのアドバイスを受ける参加者

講師からのアドバイスを受ける参加者

講師からのアドバイスを受ける参加者

デザイン思考とAGL山田道場

AGLには、選抜試験をクリアした学生が、「リーダーシップ」を身につけるための環境である「道場」に所属します。在籍する学院・系・コースにおける専門分野の高度な知識や能力を修得しつつ、「道場」で、志向や専門分野を異にする学生同士でのディベー卜やグループワークを重ねていくことで、「自主性」を核とするマインドセットを養い、実社会において自身の価値となる発想力や実践力、そして、いかなる場面でも応用の利く対話カや合意形成力を身につけます。

「デザイン思考」は、イノベーションを生み出す「ハウ・ツー」として紹介されたり、理解されたりしているかもしれません。特に「emphasize(共感) - define(問題定義) - ideate(創造)- prototype(プロトタイプ) - test(テスト)」の5 ステップを踏襲することに注目が集まりがちですが、この5 ステップに新規性があるわけではなく、むしろ、新製品開発や新規市場開拓を行っている方は意識せずとも行っている「当たり前」のステップです。

デザイン思考の根幹は、自分は新たな価値を創出できる、という認識を持つこと(マインドセットの構築)と、ニーズを構築する「理由」を探り出す能力の醸成にあり、そこには、論理性は勿論、さらに論理を超えた飛躍力が求められます。

  • Creative Confidence(クリエイティブ コンフィデンス) : 「新たなアイデア(解決策)を出せる」という個人のマインドセットの構築
  • User Centric(ユーザー セントリック) : ユーザーのニーズの「理由」を抽出し課題を設定する考え方と能力の醸成

新たな価値を生み出すためにリーダーシップを重視する山田道場では、その基礎となるコンセプトを体に染み込ませることが重要と考えています。「課題設定」「発想」「仮説検証」を繰り返す「デザイン思考」は格好の題材です。

山田道場では、本ワークショップ以外にも、マクロ的アプローチによる「政策立案シミュレーション」、ウェブ開発をツールにする「プログラミング・ブートキャンプ」、スキャニングと強制発想という手法をとる「未来洞察」、視点を変え発想力を呼び起こす「EGAKU」、そして、それらの要素を使いこなし、課題設定と仮説検証を繰り返し、事業の価値を作り出す「リーン・ローンチパッド」、などのワークショップ群を用意し、所属学生が、自分独自の「リーダーシップ」を身につけられる環境を用意しています。

集合写真

集合写真

お問い合わせ先

グローバルリーダー教育院 人文社会系道場(山田道場)

E-mail : agl.jim@agl.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3116

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