東工大ニュース
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本学理学院 化学系の石谷 治教授による二酸化炭素を資源化するための新触媒に関する記者向け説明会を、11月27日、大岡山キャンパス東工大蔵前会館にて開催しました。
人間の産業活動では、炭素資源を産業に利用することで多量のCO2を排出していますが、植物の光合成のように、CO2を還元固定化する実用的な技術を我々は持っていません。このことが、エネルギー問題、炭素資源枯渇化、地球温暖化の3つの問題を引き起こす根本的原因です。排出したCO2を再び資源として利用する技術(人工光合成)が実用化できれば、この3つの問題が一挙に解決すると期待できます。
石谷教授は、今回、この問題に対して2つのブレークスルーを論文発表し、その内容に関してメディア向けの説明会を行いました。
従来のCO2資源化の研究は、純粋なCO2を用いて行われてきました。濃度が低くなると、CO2の還元がうまく進まないためです。ところが、火力発電所などの産業の現場から排出されるCO2は10%程度の低い濃度です。したがって、一旦CO2を濃縮するという、エネルギーを多量に消費するプロセスを経てから資源化を行う必要がありました。
石谷教授らが発見したレニウム錯体触媒は、1%という低濃度のCO2でも効率よく捕集し還元することができます。この技術を応用すれば、濃縮することなく直接CO2を資源化することが期待できます。
石谷教授らは、CO2の光還元の研究を積極的に続け、世界で最も高効率な光触媒の開発にも成功しています。しかし、これまでは、希少な金属や高価な貴金属を用いる必要がありました。世界で排出されるCO2は年間330億トンにもおよび、希少金属では太刀打ちできません。安価で多量に入手できる金属を用いた光触媒の開発が求められています。
今回、石谷教授らは、銅錯体とマンガン錯体からなる光触媒が、希少金属を用いた光触媒に勝るとも劣らない効率でCO2を資源化できることを見出しました。
これら2つの研究成果は、エネルギー問題、炭素資源枯渇化、地球温暖化の3つの問題解決の糸口になることから、説明の後も、記者の皆さんと石谷先生との熱いディスカッションが続きました。
光合成は、太陽光をエネルギーとしてCO2を有用な有機資源に変換し、その一部は長年かかって地下に蓄積されることで化石資源となりました。我々人類は、これを掘り起こし、エネルギー源および化学原料として大量消費し、最終的に燃焼させることで大量のCO2を発生させています。これが、地球温暖化、エネルギー源および炭素資源の枯渇の問題を引き起こしています。私たちが、太陽光を利用して、大量のCO2を再資源化できるようになれば、これらの課題は一挙に解決できます。人工光合成に関する研究は、社会的にも科学的にも意義があると強く信じていますので、今後もその実現に向けて微力ながら、学生とスタッフの皆さんと力を合わせ研究に注力していきたいと思っています。