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研究テーマを宇宙で実証 JAXAのイプシロンロケット4号機で打上げへ

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公開日:2019.01.15

理学院 物理学系の谷津陽一助教と工学院 機械系の坂本啓准教授・中西洋喜准教授の2つの研究テーマがJAXA(宇宙航空開発研究機構)の革新的衛星技術実証1号機に搭載され、宇宙での実証に向け、イプシロンロケット4号機により打ち上げられます。

イプシロンロケット4号機は、鹿児島県にあるJAXAの内之浦宇宙空間観測所から2019年1月17日(木)の打上げを予定しています。打ち上げの模様は、YouTube JAXAチャンネルouterにてライブ配信される予定です。

JAXAの革新的衛星技術実証プログラムは、民間企業や大学などが開発した機器や部品、超小型衛星、キューブサットに、テーマを公募の上、宇宙での実証の機会を提供するプログラムです。そのプログラムの1号機である革新的衛星技術実証1号機は、JAXAがベンチャー企業の力を利用して開発する小型実証衛星1号機(RAPIS-1、ラピス・ワン)と、6機の超小型衛星・キューブサットの計7機の衛星で構成されています。

革新的衛星技術実証1号機のロケット搭載イメージ(提供:JAXA)

革新的衛星技術実証1号機のロケット搭載イメージ(提供:JAXA)

キューブサットとは、1999年にスタンフォード大学のトウィッグス教授が提案した1辺が10 cmのサイコロ型衛星であり、現在では、10 cm×10 cm×11.35 cmを1ユニット(U)として、2U、3U、6Uなどの発展型も存在しています。

深層学習を用いリアルタイムで画像識別

谷津助教の実証テーマ「深層学習を応用した革新的地球センサ・スタートラッカーの開発」(DLAS、ディーラス)は、RAPIS-1に搭載される7つの実証テーマのうちの一つです。

深層学習の手法を画像認識に活用し、衛星が撮影した画像から陸地パターンを識別する技術の活用を実証します。また、民生品を用いた低コストのスタートラッカー(宇宙を撮影し、写っている星の配置から衛星の姿勢を計測する姿勢制御装置)が動くかどうかを確認します。衛星がどちらを向いているかの判定や衛星の姿勢制御、軌道上における画像の選別に役立つことが期待されます。

DLASの研究・開発で得られた知見を活かし、東工大発ベンチャーである「株式会社 天の技」が宇宙機搭載装置の製造・販売の事業化を進めています。

DLASを搭載するRAPIS-1(提供:JAXA)
DLASを搭載するRAPIS-1(提供:JAXA)

振動試験中のカメラユニット
振動試験中のカメラユニット

東工大発ベンチャー称号授与式での(株)天の技・工藤裕社長(左)と益一哉学長(右)

東工大発ベンチャー称号授与式での(株)天の技・工藤裕社長(左)と益一哉学長(右)

谷津助教コメント

谷津陽一助教

DLASは2015年に着想を得て、それから3年を掛けて研究開発を進めてきました。また、恒星姿勢センサも東工大発ベンチャーとして事業化し、ニュー・スペース界隈では認知されつつあります。

JAXAのスケジュールに追われながらの研究・開発はかなり大変でしたが、これを主体的に進めたのが理学院・工学院の学生たちです。彼らの能力・知識・努力がなければ決して完成できませんでした。卒業生を含め、このチームと研究できたことを誇りに思います。すでに搭載装置は我々の手を離れ、内之浦の衛星の中でフライトを待っていると思うと感慨深いですが、データが降りてくるまでは気が抜けませんので、粛々と運用準備を行いたいと思います。

折り紙の技術で宇宙空間へ展開

坂本准教授・中西准教授の実証テーマは、超小型衛星であるキューブサットOrigamiSat-1(オリガミサット・ワン)を用いた「3Uキューブサットによる高機能展開膜構造物の宇宙実証」です。太陽電池やアンテナなどが載せられた薄膜が、折り紙の技術で小さくたたまれて10 cm×10 cm×34 cmのキューブサットの中に収められた後、宇宙空間で1 m×1 mに展開するという技術の実証を行います。併せて搭載するカメラで膜が開くところを撮影し、今後の研究開発へ活かします。また、アマチュア無線帯で、高速で伝送するデータを地上で受信するというチャレンジも行います。さまざまなデバイスを載せた薄膜の展開を実証することで、将来の実用化を見据えた宇宙構造構築技術、宇宙ロボット技術の開発につながることが期待されます。

中西准教授(左)・坂本准教授(右)(提供:JAXA)
中西准教授(左)・坂本准教授(右)(提供:JAXA)

OrigamiSat-1(提供:JAXA)
OrigamiSat-1(提供:JAXA)

薄膜が収められるキューブサット
薄膜が収められるキューブサット

折り紙の技術を使った薄膜の模型(提供:JAXA)
折り紙の技術を使った薄膜の模型(提供:JAXA)

坂本准教授コメント

坂本啓准教授

3UキューブサットOrigamiSat-1は、(1)将来の宇宙膜面太陽電池アレイ/膜面アンテナなどに応用可能な新しい宇宙展開構造物構築を世界に先駆けて実証すること、(2)宇宙での構造展開・展張実験の計測系を実証すること、(3)5.8 GHz高速通信技術を継承すること、を目指しています。2014年末から東工大、日本大学、サカセ・アドテック株式会社、株式会社ウェルリサーチがタッグを組んで衛星開発を進めてきました。いよいよ打ち上げを迎え感無量です。

東工大からは私の他に、工学院機械系の中西洋喜准教授、古谷寛准教授、そして電気電子系の戸村崇特任助教が開発に参加。とは言っても、実際に手を動かし、試行錯誤し、衛星システムを組み上げたのは学生たちです。企業・大学のベテランから支援を受けながら多くの学生たちが発揮した創意工夫が、OrigamiSat-1には詰め込まれています。

新しいことを学び、発見するための人工衛星を自分たちの手で作れる時代が到来していることを、本衛星の打ち上げを通じ、是非ご覧いただきたいです。

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