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東工大関係者6名が平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞

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2019.04.24

このたび、東工大関係者6名が、平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において「科学技術賞」、「若手科学者賞」を受賞しました。

「科学技術賞」は科学技術分野で顕著な功績をあげた者を対象としたもので、「開発部門」「研究部門」「科学技術振興部門」「技術部門」「理解増進部門」に分かれて表彰されています。今年度の科学技術賞(研究部門)の応募件数は149件、授賞件数は43件(54名)です。

「若手科学者賞」は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者を対象としています。今年度の若手科学者賞の応募者数は304名、授賞者数は99名です。

日ごろの研究活動、研究成果を認められ、本学からは2名が科学技術賞を、4名が若手科学者賞を受賞しました。

今年度受賞した関係者は以下のとおりです。

科学技術賞(研究部門)

若手科学者賞

科学技術賞(研究部門)

西山伸宏 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 教授

受賞業績:高分子設計に基づくナノマシンの創製と医療応用に関する研究

西山教授
西山教授

超高齢化社会を迎え、医療分野においては、QOL(生活の質)を意識した診断・治療技術に対するニーズが高まっています。本研究では、精密合成高分子やその分子集合体からなるプラットフォームに標的指向性や環境応答性等の様々な機能を集積化することによって、体内において、必要な時に、必要な部位で、必要な診断および治療を最小限の副作用と最大限の効果で達成する医療用ナノマシンの創製を行いました。

本研究では、医療用ナノマシンによって、「がんの高感度検出や悪性度の可視化」、「膵臓がん等の難治がんに対して、薬剤のピンポイント送達に基づく効果に優れ、副作用の少ないがん治療」、「光、超音波、中性子線などの物理エネルギーの照射による患者への負担の少ない超低侵襲がん治療」が実現可能であることを実証してきました。これらの技術は、がん等の難病の早期発見や根治、患者の早期社会復帰をもたらし、核酸医薬等の画期的な医薬品の実用化を加速するものと考えられ、国民の健康寿命の延伸や医薬品開発分野における日本の産業競争力の強化に寄与することが期待されます。

今回受賞対象となった一連の研究は、多くの共同研究者の皆様の多大なるご尽力があって成し得たものであり、この場を借りて感謝の意を表するとともに、医療用ナノマシンによる未来医療の実現に向けて、より一層研究に邁進していく所存です。

医療用ナノマシンに関する研究概要

医療用ナノマシンに関する研究概要

萩原一郎 名誉教授

受賞業績:計算科学シミュレーション援用 折紙構造の産業化に関する研究

萩原名誉教授
萩原名誉教授

折紙構造には、軽くて剛い、展開収縮能があるなど優れた特性を有すものの、実際の産業化は、生産コストの制限が比較的緩やかな宇宙産業以外十分には見られない状況でした。この打開には、(1)従来の型紙を折紙ロボットに折らせようとすると機構ばかり複雑となる、(2)折紙構造は一般の構造より複雑でその通り造ろうとすれば高価となる、等の解決が期待されました。

本研究では、3次元に構築したものは同じでも山折り・谷折り程度の機能を持つロボットで折れる展開図が得られる設計システムを開発し、全自動でその画像から実物を折紙のように構築する折紙式プリンターのプロトタイプを得ました。型紙から閉じた3次元構造とする条件や折畳める条件は、折れ線の交わる角度が司ることから、角度を保存する等角写像を利用すれば、簡単な構造の展開図から複雑な構造の展開図が得られるという発想により折紙構造に初めて等角写像を持ち込みシステマティックに安価に造れエネルギー吸収特性も優れた折紙構造の近似化を得ました。以上の成果は多くの産業を創出する可能性があるとして評価されました。

「折紙工学」は時に芸術的なデザインから、機能創出、製造技術と多岐に亘る総合工学です。本学に在職時代、本学にあこがれた沢山の優秀な留学生に恵まれ色々な研究を行えたことが今回に繋がりました。当時の学生、先生方、また事務の方々に感謝します。どうもありがとうございました。

折紙工学 3つの柱からの成果の一例

折紙工学 3つの柱からの成果の一例

若手科学者賞

平原徹 理学院 物理学系 准教授

受賞業績:ビスマス系トポロジカル薄膜の物質開発と表面状態の研究

平原准教授
平原准教授

物質の表面では内部のバルクとは違った電子状態が実現されています。例えばバルクが非磁性体でも、表面だけスピン偏極したバンド構造を持つラシュバ・トポロジカル表面というものが存在し、理論を中心にスピントロニクス応用に向けて多くの研究が行われていました。この表面状態を利用したデバイス開発のためには高品質薄膜を作成し、強磁性体などと組み合わせる必要があったのですが、実験的に研究されていた多くの物質は、分厚いバルク物質の表面でした。そこで私はビスマスという元素に着目し、ビスマス化合物の高品質薄膜を作成する方法を考案しました。特にビスマス薄膜では表面状態が薄膜中の電気の流れを支配することを明らかにしました。さらに、トポロジカル絶縁体薄膜内部に磁性元素を埋め込み、不純物を導入せずにトポロジカル表面状態に強磁性を付与する新しい方法を発見しました。これらの成果はデバイス応用のみならず基礎科学として重要だと考えています。

この度、栄誉ある賞を賜り、大変光栄に思っております。ご指導いただいた先生方や共同研究者に厚く御礼申し上げます。また本学からのご支援にも感謝いたします。

岩﨑孝之 工学院 電気電子系 准教授

受賞業績:ワイドバンドギャップ半導体中の固体量子光源に関する研究

岩﨑准教授
岩﨑准教授

ワイドギャップ半導体中に取り込まれる不純物原子は、空孔(原子のない空の場所)と隣り合うことで発光を示す複合欠陥を形成します。ダイヤモンドは、大きなバンドギャップを有するワイドギャップ半導体であり、様々な複合欠陥を形成することができます。単一光子を放出する複合欠陥は量子光源として機能し、優れた光学特性およびスピン特性を有する光源は将来の量子ネットワークへの応用が期待されています。しかしながら、これまで優れた光学特性とスピン特性を両立する量子光源は見出されていませんでした。本研究では、ダイヤモンド中にこれまで導入されていなかった元素であるゲルマニウムおよびスズに注目することで新しい量子光源を創出しました。特に、スズと空孔からなるスズ-空孔センターは高い発光強度を示し、加えて安定した発光とケルビン温度領域において長いスピンコヒーレンス時間が期待できることから、これまでの量子光源の問題を解決できる可能性を有しています。

本研究の成果は、国内外の多くの共同研究者の方々との協力のもと得られたものです。この場をお借りして心より感謝申し上げます。今後、さらに研究を発展させるために尽力していきます。

本倉健 物質理工学院 応用化学系 准教授

受賞業績:機能集積型触媒の開発と高効率合成反応に関する研究

本倉准教授
本倉准教授

固定化触媒は液相合成反応において分離・回収・再使用の観点から注目されている反面、活性点構造の不均一性や固体表面との立体障害によって、均一系の分子触媒よりも活性が低下する問題点が指摘されていました。我々は、明確な構造をもつ複数の活性点を同一固体表面に集積固定することで、活性点間の協奏的触媒作用が発現し、固定化触媒でありながら高活性を示す触媒を開発することに成功しました。開発した触媒は求核剤アリル化反応、ヒドロシリル化反応、二酸化炭素変換反応等に既存の報告と比較して一桁以上高い活性を示します。活性点の種類や配置・配向を精密制御することで、さらなる高機能の発現や様々な触媒反応へ展開したいと考えています。

今回、このような栄えある賞をいただくにあたり、これまでご指導くださった先生方、共に研究を行った研究室スタッフ・学生の皆様、学内外のプロジェクトでお世話になった関係者の方々にこの場をお借りして感謝申し上げます。

分子触媒と固体触媒の融合による機能集積型触媒の開発

分子触媒と固体触媒の融合による機能集積型触媒の開発

大上雅史 情報理工学院 情報工学系 助教

受賞業績:生体内のタンパク質等の相互作用の網羅的な予測研究

大上助教
大上助教

生体内のタンパク質をはじめとする分子間相互作用の理解は、生命現象の解明、疾病要因の特定、新規薬剤設計の開発促進など、生命科学・医学・薬学のさまざまな問題の解決に関係します。生物学的実験を介することなく計算機によって分子間相互作用を予測することができるようになると、これらの研究の大幅な加速が期待されます。

私はこれまで、タンパク質等の生体分子間の相互作用を計算機で網羅的に予測する技術を開発してきました。生体内にはきわめて多数の分子が存在しますが、多数の分子の網羅的な(多対多の)相互作用を現実的な時間内で扱うためには、方法論の抜本的な改良と、TSUBAMEに代表される世界最高規模のスーパーコンピューターの活用が不可欠です。分子の立体構造情報を網羅的に活用することに着眼し、またTSUBAMEを高効率に扱うための並列化実装に取り組み、百万件の分子間相互作用の予測をわずか半日で実行可能にすることに成功しました。今後、本研究成果の製薬産業等での利活用や、新たな薬剤標的探索技術の開発に結びつけていきたいと考えています。

本受賞は、秋山泰教授をはじめとするご指導いただいた先生方や共同研究者の方々、秋山研究室の皆様のご支援ご指導の賜物です。この場を借りて改めて感謝申し上げます。今回の受賞を励みに、より一層研究・教育活動に励んで参ります。また、本受賞業績の一部は「研究の種発掘」支援および「情報理工学院若手研究プロジェクト」支援により得られたものであり、この場を借りて感謝申し上げます。

大量の分子構造情報を活用した網羅的な分子間相互作用予測技術の開発

大量の分子構造情報を活用した網羅的な分子間相互作用予測技術の開発

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広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

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