研究

東工大ニュース

自治体と連携し、未病改善に関する実証実験を実施

インフラ企業やヘルステックと協働し「未病改善プラットフォーム」構築を目指す

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2019.05.30

東京工業大学 未来型スポーツ・健康科学研究推進体(代表者 生命理工学院 生命理工学系 林宣宏准教授)は、共同研究先企業であるaiwell(アイウェル)株式会社(以下「aiwell」)と、静岡県掛川市において未病[用語1]改善に向けた「未病改善のための健康増進プラットフォーム」の構築に向けた実証実験を2019年2月12日~3月26日の6週間実施しました。

背景・概要

2025年には日本の人口の3割は65歳以上の高齢者になると予想されており、超高齢化社会の到来による医療費の増大は大きな社会問題になっています。また、増加する高齢者世帯では、高齢者の生活機能の低下の発見や対処が遅れる可能性が高く、健康上のリスクも高いと考えられています。

これらの社会問題にアプローチすべく、東工大 未来型スポーツ・健康科学研究推進体、AIプロテオミクス[用語2]を活用したヘルスケアプラットフォームを提供するaiwellと大崎電気工業株式会社(以下「大崎電気」)の3者が協力し、「地域健康増進プロジェクト」を2018年11月に発足させました。

この度、静岡県掛川市の協力のもと、地域の高齢者を対象に、血液検査、スマートウォッチ、スマートメーターからのデータ等、様々な生活データを収集・活用し、公的サービス・民間サービスが連携して個人の健康を支えることを可能にする「未病改善のための健康増進プラットフォーム」の構築を目指して本プロジェクトが実施されることとなりました。自治体も連携した未病改善に関する実証実験は、国内初の取り組みとなります。

実験参加者の基本的な健康データ(体組成、体重、血圧)を測定する様子

実験参加者の基本的な健康データ(体組成、体重、血圧)を測定する様子

実験参加者の基本的な健康データ(体組成、体重、血圧)を測定する様子

「未病改善のための健康増進プラットフォーム」の概要

  • 高齢者の健康状態を「見える化」するため、個人の不調具合の内観と、微量採血による血液検査データを取得。加えて、スマートフォン、各種センサー、スマートメーターからのデータを使って生活データを収集、それらを統合して分析を行う。
  • データに基づき、専門家や、ご家族、行政が健康増進のためのアドバイスを高齢者に提供。
  • アドバイスに基づき、個々人が日々の健康改善に取り組む。介護状態になる前に分析データによる「気づき」を得ることが可能になり、行政や民間サービスによる生活改善にむけたアプローチが可能になるプログラム。

実証実験の詳細

  • 実施期間:
    2019年2月12日~3月26日の6週間
  • 協力機関:
    東京ガス株式会社、静岡ガス株式会社、中遠ガス株式会社、大崎電気
  • 参加者数:
    18世帯19名のうち男性4名・女性15名、年齢68歳~79歳
  • 内容:
    福祉センターで月に2回実施されている健康増進のための体操の機会に、参加者の基本的な健康データ(体組成、体重、血圧)をチェックし、同時に微量採血を実施。また、参加者にはスマートウォッチを配布して、日常の運動量をモニターすると共に、各家庭に設置したスマートメーターや人体の動きを感知するセンサーによりご家庭での生活データを取得。

実証実験にて収集した生活データ・医療データ

「地域健康増進プロジェクト」の成果・今後の展開

今回の最大の成果は、問題意識のある地域住民の方々、そういった方々を支える行政の方々に「未病改善のための健康増進プラットフォーム」の考え方が伝わったことを、実施者が実感出来たことです。市民の方々との対話を通じて、何がどのように伝わり、どう受け止められたかを具体的に知ることが出来たことは、今後の活動に大きな影響を与えることになります。特に、なるべく近い将来に「未病改善のための健康増進プラットフォーム」のサービスを受けたいとの声が寄せられたことは、大きな意味を持ちます。

更に、各種データ取得における実地での実務レベルでの問題発掘がなされたことにより、使用者にとって現実問題として造作なく使える、使いたいと思えるサービスの構築が可能となり、今後はその実用化が加速します。

今後、今回得られたデータの統合と解析により得られた成果をもとに、随時、市民や行政の方々との対話を継続することで、「未病改善のための健康増進プラットフォーム」の構築とサービスの継続的な提供の仕組みの創出を目指します。また、要介護状態になる前の早期診断・早期対応の実現により、個人や家族のQOL(生活の質)を向上させ、誰でも「健康で長寿」が可能になる世の中を目指すと共に、増え続ける医療費や、介護難民、孤独死の予防などの様々な社会問題にアプローチできる取り組みに発展させていきます。

用語説明

[用語1] 未病 : 診断・治療のために“病気”が定義されますが、生物学的には病気と健常との間にはっきりした境目はありません。これまでは病気と診断されてから治療が施されてきましたが、その前段階から方策を施すことが出来れば、重篤な病気に悩まされることは無いことから、近年、病気と健常の間の状態が新たに“未病”状態と定義されて、病院に行く前に、自身で病気になるのを防ぐことが出来る状態として注目されるようになりました。

[用語2] AIプロテオミクス : 林准教授が研究を進める特許技術。二次元電気泳動で網羅的に画像化された血中タンパク質のデータをAIが解析し、様々な病気や怪我になる一歩手前の状態を発見(超早期診断)する研究。敗血症においては、98.2%の精度で的確に診断を可能にしました。2018年10月よりaiwellと共同研究を開始し、2019年4月に東工大キャンパス内に「aiwell AIプロテオミクス協働研究拠点」を開設し、AIプロテオミクスの実用化に向け研究開発とその実用化を推進しています。

[用語3] 微量採血検査キット「aiwell care」 : ジャパン・メディカルリーフ株式会社が開発した多機能微量採血管を特徴とする、日本初の血球検査を含む30項目の微量採血検査キット。医師の監修のもと疲労、脱水、エネルギー消費、骨密度、糖代謝、脂質代謝、肝機能、腎機能など、ヘルスケア評価と運動パフォーマンス評価の分析が可能です。一般の人間ドックにおける検査と同等の項目を、自宅で簡単に検査することが可能です。

[用語4] 生活データ・医療データを活用した東京ガスのサービス開発 : 東京ガスはエネルギー供給に加え、安全で安心できる暮らしをサポートするサービスを展開しており、食や健康など様々な分野におけるサービスの検討・開発も行っています。その取り組みの一つとして、電気、水道、ガス使用量データや室内空気質のデータ、スマートウォッチによる活動量データなどを活用し、睡眠アドバイスや部屋の環境改善など、生活をより豊かにするサービスの開発を行っています。

[用語5] 大崎電気の提供する「ホームウォッチ®」 : 創業 100 年にわたり電力量計等の計測制御機器の開発・提供を通して「見える化」したデータをもとに、最先端の IoTデバイスを専用アプリケーションと組み合わせて、トータルソリューションとして提供するスマートホームを実現する大崎電気のサービス。各種センサー設置により、家の中の活動量の測定が可能になり、高齢者の見守り・防災等への活用ができます。

[用語6] Origin Wireless Japan社の睡眠モニタリング : アメリカのメリーランド大学のRay Liu(レイ・リュー)教授が開発したTime Reversal Machine(タイム・リバーサル・マシーン)≪制作時注:TM上付きで付ける≫技術を用いたWi-Fiセンシングは電波反射の解析により空間イベントの検知を可能にします。睡眠時の微細な動きや呼吸の検知により医療器具と同等のレベルでレム、ノンレム睡眠などを含めた睡眠状態をモニタリング可能です。この技術はウェアラブルデバイスを必要とせず、人の動き、呼吸、転倒、認証、屋内測位などの検知を行えるため、高齢者の見守り、ライフログの提供など様々なサービスへの応用が期待されています。

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