東工大ニュース

東工大理学院×すうがくぶんか 「現代数学レクチャーシリーズ」第1回開催報告

RSS

公開日:2019.10.23

東京工業大学理学院が行う社会連携のひとつの試みとして、リカレント教育や大人のための数学教育で最近注目を浴びている株式会社「すうがくぶんか」と協力して、2019年度から「現代数学レクチャーシリーズ」というレクチャーシリーズを始めています。このレクチャーの柿落とし(こけらおとし)として、9月29日、大岡山キャンパス西講義棟のレクチャーシアターで「現代数学レクチャーシリーズ第1回」を開催しました。

近年、現代数学の重要性は社会の至るところで認識されるようになってきました。そのため、高校・大学数学だけでない、その先の数学の講義や研修が至るところで開催されるようになってきています。その中で、社会のより広い層に、本格的な数学の世界を発信していく企画として、今回のレクチャーシリーズを始めることになりました。

第1回の「現代数学レクチャーシリーズ」は、定員200人のところに応募が殺到し、募集開始から1日たらずで全ての席が埋まってしまうという、主催者も驚くほどの人気でした。当日は本学理学院長の山田光太郎教授の挨拶の後に、理学院数学系の教員4人によるレクチャーを行いました。

200名超の数学ファンたちで埋め尽くされた会場
200名超の数学ファンたちで埋め尽くされた会場

山田理学院長の挨拶
山田理学院長の挨拶

講演内容

正井秀俊 助教

ジャグリングの“かたち“

正井秀俊助教「ジャグリングの“かたち”」
正井秀俊助教「ジャグリングの“かたち”」

要旨:「かたち」を理解したい。そう思った時、最初に考えつくのは長さや面積を測ってみることです。きっとたくさん学校でも勉強しますね。でも、もう少し、ゆったり、考えてみてみると?一つ一つ、長さや大きさは違っていても、木はみんな「木のかたち」をしているし、ドーナッツもみんな「ドーナッツのかたち」をしています。こんな感覚をことばにする、一つの方法にトポロジーという数学があります。この講演では、トポロジーを使って、ジャグリングの色々なワザの「かたち」を理解していきます。きっと、「かたち」という考え方に新しい視点が得られるはず。もしかしたら、「家族のかたち」とか「愛のかたち」とかも、わかる、かも?しれません??

鈴木正俊 准教授

ゼータ関数の解析接続を理解しよう

鈴木正俊准教授「ゼータ関数の解析接続を理解しよう」
鈴木正俊准教授「ゼータ関数の解析接続を理解しよう」

要旨:素数の神秘を内包した特別な関数として、ゼータ関数は整数論について触れた一般向け書籍でもしばしば紹介されています。 しかしながら、 ゼータ関数を正しく理解するのに必要不可欠な「解析接続」という概念については、きちんと説明されていないことが多々あります。実際、解析接続は大学の学部3年生頃に習う高度な概念ですから、そのような扱いがなされるのは致し方ありません。そこでこの講義では、ゼータ関数の解析接続について、具体的な計算法も込めて解説します。ここが理解できれば、ゼータ関数論の初級は卒業と言えるでしょう。

川平友規 准教授

「かたち」を引き寄せる「かたち」:フラクタル、IFS、そして不動点定理

要旨:平面集合のいろいろな「かたち」。たとえば、自然界にも頻繁に現れる、フラクタル集合。その際立った性質を、巧みな数学的定式化であぶり出してみましょう。「かたち」が「かたち」を引き寄せる、集合たちの織りなすダイナミックな世界をお楽しみください。

加藤文元 教授

合同数問題とL関数


加藤文元教授「合同数問題とL関数」

要旨:古代から知られている合同数問題「与えられた自然数dを面積とする3つの辺がすべて有理数である直角三角形はいつ存在するか」は、楕円曲線の有理点問題を経由してBSD予想とも関連する深い問題です。この講演では、有理点の具体的な計算を見ながら、合同数問題とL関数の特殊値との関係を実感することを目指します。

どのレクチャーも、本格的な現代数学に触れるものでした。5時間にも及ぶ長丁場で、しかもずっと数学のレクチャーばかりという、あまり類例のない会であったにもかかわらず、会場に詰めかけた200人超の参加者の関心度は非常に高く、会場は常に熱気に包まれていました。

「現代数学レクチャーシリーズ」はこの第1回だけでなく、今年度だけでも第2回と第3回のレクチャーが既に予定されています(第2・3回目は小規模の講義となる予定です)。詳しくは、「社会人のための数学教室 すうがくぶんか」のHPをご覧ください。

理学院

理学院 ―真理を探究し知を想像する―
2016年4月に発足した理学院について紹介します。

理学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

お問い合わせ先

理学院運営事務グループ

E-mail : sci.adm@jim.titech.ac.jp

3月3日9:30 川平准教授の写真を非掲載としました。

RSS