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ペロブスカイト太陽電池特性の再現性、安定性を向上 プレスセミナーを開催

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2019.11.14

10月28日、物質理工学院 応用化学系の脇慶子准教授によるプレスセミナーを大岡山キャンパスにて行いました。

太陽電池は、太陽の光エネルギーを電気に変換します。一般的に普及している太陽電池はシリコン太陽電池で、変換効率が高いものの重量や製造コストなどに課題があります。

ペロブスカイトと呼ばれる結晶材料を光吸収に用いるペロブスカイト太陽電池※1は、溶液塗布で簡便に作成することができ、次世代の太陽電池として注目されています。実用化するには、発電効率の向上、大面積化、高耐久性の付与などをクリアする必要があります。また、通常ペロブスカイト太陽電池のホール伝導層※2には高分子材料や金が使われていますが、吸湿性があり劣化しやすいという問題もあります。

今回のセミナーでは、酸素官能基※3を導入したカーボンナノチューブ紙状電極※4をホール伝導層に用いることで、安定的な発電効率の向上を実現した研究成果について説明がありました。

プレスセミナーの様子

プレスセミナーの様子

開発のポイント

ホール伝導層を炭素材料にする研究は最近盛んに行われており、安定性向上とコスト低減は達成できましたが、発電効率は従来型に及ばないことが課題でした。

脇准教授らは、長年取り組んできた多層カーボンナノチューブの研究をもとに、カーボンナノチューブ紙状電極にカルボキシル基(-COOH)やフェノール基(-OH)といった酸素官能基を導入し炭素の仕事関数を制御することによって、発電効率を高められると考えました。

官能基を導入したカーボンナノチューブを電極に用いて太陽電池を作製した直後の性能がばらついても常温常圧で放置すると、酸素官能基はペロブスカイトと強い相互作用をすることで水分の侵入を防ぎ、接合界面の再構成を引き起こすことがわかりました。再構成により接合界面が強固に安定化し、ペロブスカイト層を水から守る効果も発揮しました。その結果、電荷移動抵抗がさがり、初期効率が3%程度のセルであっても放置後11%に向上した例もあり安定性も高くなりました。

今後の展望

ペロブスカイト層の組成や厚さ、電極界面などを最適化することで、発電効率と安定性をさらに向上させ実用化を目指します。この最適化は、材料の本質を理解して初めて達成できるもので、基礎研究をさらに充実させていく必要があります。

ペロブスカイト太陽電池について説明する脇准教授

ペロブスカイト太陽電池について説明する脇准教授

資料

※1 ペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイトと呼ばれる結晶材料を光吸収に用いた新しいタイプの太陽電池。塗布技術などの湿式法で容易に作製できるため、既存の太陽電池よりも低価格になると考えられています。

※2 ホール伝導層

太陽電池に光(光子)が当たると、光子のエネルギーによって電子と正孔が発生し、これらの粒子が移動することで電気が流れます。正孔を収集する電極をホール伝導層といいます。

※3 酸素官能基

有機化合物は、その性質によってグループに分類されます。同じグループに属する化合物がもつ、性質を特徴づける原子団を官能基といいます。アルコール類のヒドロキシル基(-OH)、カルボン酸類のカルボキシル基(-COOH)のように酸素を含む官能基を酸素官能基といいます。

※4 カーボンナノチューブ紙状電極

炭素(カーボン)でできた直径がナノメートルレベルのチューブ状の素材がカーボンナノチューブです。軽量で曲げなどに強く、電気を通す性質があります。このカーボンナノチューブを薄膜状にしたものは電極などへの応用が考えられています。

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