研究

東工大ニュース

伸び縮みによって色が変化する伸縮性カラーシートの開発に成功

皮膚に貼って画像を表示する電子皮膚応用へ向けて

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公開日:2020.06.15

概要

豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系の熊谷隼人(博士後期課程)、髙橋一浩准教授と、東京工業大学 生命理工学院の藤枝俊宣講師らの共同研究チームは、膜厚400ナノメートル(髪の毛の太さの100分の1以下)のシートを伸び縮みさせ、発色を変化させる可変カラーシートの開発に成功しました。この可変カラーシートは、エラストマーシートの中に形成した金属ナノ構造による発色を利用して、伸縮動作により波長域495-660ナノメートルの範囲で透過光の可逆的な波長制御を実現します。開発した伸縮性カラーシートはエラストマーの高い凝着性を利用して、皮膚への接着や様々な電子機器上へ室温で転写接着が可能なため、貼り付け型の表示素子への応用が期待されます。

伸縮性カラーシートの構造と伸び縮みの際の色変化

伸縮性カラーシートの構造と伸び縮みの際の色変化

詳細

金属のナノ構造を周期的に配列した構造の表面では、特定の光に対して電子が集団振動する表面プラズモンと呼ばれる効果を発生させることができ、この効果を利用して本来光が通過できない狭いナノ隙間を透過するカラーフィルタを作製することができます。この現象を光の異常透過現象と呼び、この原理を利用したカラーフィルタは顔料を利用した従来のカラーフィルタとは異なり、経年劣化の恐れがなく、スマートフォンなどに内蔵されているイメージセンサを構成するカラーフィルタに利用できると期待されています。また、最近では、表面プラズモンを生成する光の波長を制御する手法として、伸縮性の材料上に金属ナノ周期構造を形成し、シートの伸縮により構造の周期を変位させて色を変化させるダイナミックカラーチューニングが研究されています。この技術により、形態自由度の高いフレキシブルディスプレイや、構造のひずみを可視化するセンサ等への応用が期待されています。

しかしながら、これまでに報告されてきた研究報告例では、ナノ構造を支えるシートの膜厚がミリメートルオーダーであったため、マイクロマシン技術による駆動機構と組み合わせることが困難でした。また、支持シートの伸縮駆動に要する駆動力はシートの膜厚に依存するため、厚いシートはマイクロマシンデバイスの駆動電圧が増大する課題があります。

そこで、研究チームは、自動車用タイヤなどに使われているゴム材料の一種であるスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)の膜厚を1マイクロメートル以下まで薄膜化したエラストマーナノシートを使用して、伸縮性カラーシートを開発しました。ナノ薄膜化したエラストマー材料中に金属ナノ構造を埋め込むことによって、表面プラズモンを利用した光の異常透過を確認しました。このナノシートへひずみを与え、シートを透過する光が青、緑、赤へと変化することを確認し、表面プラズモンによる異常透過光の動的制御に成功しました。また、透過ピークの波長の495ナノメートルから660ナノメートルに及ぶ連続的な変化を実現するとともに、繰り返し伸縮動作が可能なことを実証しました。作製したカラーシートを伸縮するための駆動力は、従来の数値よりも2〜3桁小さく、一般的なマイクロアクチュエータの発生力で十分に駆動可能です。さらに、エラストマーの接着力によりあらゆる場所への貼り付けが可能なため、構造物のひずみの検出・視覚化を可能にし、さらにマイクロマシン技術との一体化により可変カラーフィルタの実現が期待されます。

今後の展望

研究チームは、伸縮性カラーシートをマイクロアクチュエータで駆動することにより電子的に発色を変化させる表示素子に適用可能であると考えています。シートの柔軟性や接着性を利用して、皮膚上に貼り付けて画像を表示する電子皮膚への応用が期待されます。

付記

本研究は、文部科学省科学研究費(基盤研究B、若手研究A、特別研究員奨励費)、卓越研究員事業、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)さきがけ 素材・デバイス・システム融合による革新的ナノエレクトロニクスの創成の助成によって実施されました。

論文情報

掲載誌 :
Advanced Optical Materials, 8, 1902074 (2020)
論文タイトル :
Stretchable and high-adhesive plasmonic metasheet using Al subwavelength grating embedded in an elastomer nanosheet
著者 :
Hayato Kumagai, Toshinori Fujie, Kazuaki Sawada, Kazuhiro Takahashi
DOI :

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