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オンライン授業で変わる大学教育を議論

教育革新シンポジウム2020 第3回 開催

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公開日:2021.02.26

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、世界中の大学はオンライン授業に移行し、大学教育のあり方は大きく変わりました。東京工業大学で教育方法の研究開発やオンライン教材など学習環境の整備に取り組む教育革新センター(Center for Innovative Teaching and Learning、CITL)は12月21日、学外から専門家を招き、大学教育の変容について検討するオンライン・シンポジウムを開きました。学内外から162名が参加し、コロナ禍をきっかけとして進む新しい大学教育について意見を交わしました。

全体テーマ「COVID-19 インパクトは大学教育の未来を変える」

教育革新センターは2015年度から毎年、教育革新シンポジウムを開き、大学教育について議論しています。6年目となる2020年度は全体テーマを「COVID-19 インパクトは大学教育の未来を変える—学習者中心の教育を再考する—」と題して計3回、開催しました。第1回と第2回は参加者を学内に限定し「東工大オンライン授業のグッドプラクティス(優れた取組)」を紹介しました。

12月21日のオンライン・シンポジウムは2020年度の教育革新シンポジウムの第3回目です。2020年1月の教育革新シンポジウムの続編と位置づけ「学生のエンゲージメントを高める授業づくり2」をテーマとしました。2020年度の全体テーマを総括するとともに、学外から登壇者を招き、COVID-19のインパクトを踏まえた未来の大学教育の変容について検討するシンポジウムとなりました。学内外から参加者を募り、日英同時通訳によるオンライン開催で、162名が参加しました。

さらに、議論をその場で文字やイラストで整理し、出席者が共有できるようにするグラフィックレコーダーに清水淳子さんを招き、登壇者が提供した話題や対話、全体討議の内容を整理し、オンラインで可視化してもらいました。清水さんは自身の著書で、グラフィックレコーダーについて「人々の対話や議論の内容を聞き分け整理しながら、リアルタイムでグラフィックに変換し、可視化する」(清水淳子著『Graphic Recorder 議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書』(2017))と説明しています。

セッション1 大学教育で起こる変化を5名が報告

シンポジウム冒頭、益一哉学長が開会挨拶を行い、教育革新センターの田中岳副センター長よりシンポジウムの趣旨説明がありました。
セッション1は「話題提供」と題し、5名の登壇者がそれぞれの立場・視点から、未来の大学教育で起こり得る変化について報告しました。
北星学園大学経済学部の金子大輔教授は、COVID-19のインパクトを踏まえ、キャンパスで学ぶことの意義について語りました。広尾学園中学校・高等学校の金子暁副校長は、中学・高校現場の視点から、学校、教室、授業という枠組みを超えた学びの可能性について説明しました。

金子教授の話題提供

金子教授の話題提供

金子副校長の話題提供

金子副校長の話題提供

東京大学社会科学研究所の池田めぐみ助教からは、クラブやサークル活動などの様々な正課外活動(授業以外の活動)が学生・教員・社会にもたらすものについて紹介がありました。経済協力開発機構(OECD)アナリストの大久保智哉氏は、 OECD調査から見る日本の教育と評価の諸問題について、教育評価の視点から話題を提供しました。

池田助教の話題提供

池田助教の話題提供

大久保氏の話題提供

大久保氏の話題提供

最後に、教育革新センターの大浦弘樹准教授が、本学におけるオンライン授業の実施状況と今後のオンライン授業の展開に向けての諸課題を話しました。

大浦准教授の報告

大浦准教授の報告

セッション2 新しい視点が加わった対談

続くセッション2「対談」では、セッション1の登壇者が二人一組となって対談を行い、新たな視点や課題を加えていきました。
金子教授と金子副校長との対談では、ICT環境整備の重要性を取り上げました。池田助教と大久保氏との対談では、多面的で複層的な評価の重要性について新たな視点が語られました。

金子教授(左)と金子副校長による対談

金子教授(左)と金子副校長による対談

池田助教(右)と大久保氏による対談

池田助教(右)と大久保氏による対談

全体討議 大学の役割を再検討

セッション1の話題提供とセッション2の対談を踏まえ、最後に全体討議及び質疑が行われました。
全体討議では、経済力と学力・学習意欲(学習機会の保障)への着目、COVID-19を契機に「大学」の役割・在り方の再検討の必要性、学校のインフォーマルな教育機能の重要性などが取り上げられ、活発な議論が展開されました。こうした諸問題への対応には全学で組織的な取り組みが不可欠であるという指摘もありました。
田中副センタ―長より、今回の討議で提出された視点・アイデアが今後の大学を始めとする教育現場の一つの指針(コンパス)になれば幸いだとのコメントがあり、全体討議及び質疑を終えました。
シンポジウムは水本哲弥理事・副学長(教育担当)の閉会挨拶で終了しました。

活発な議論が続いた全体討議

活発な議論が続いた全体討議

全プログラムを終えて行ったアンケート(81名)では、来場者の満足度は「満足」と「やや満足」を合わせて89%と概ね高く、特にセッション1(話題提供)が有益であったことが見て取れました。自由記述には「パネラーからそれぞれ整理された情報提供を伺い、多面的に大学教育を考える機会となりました」「大学とは何のための場所か、キャンパスとは何か、原点に帰って考え、皆様の意見を非常に興味深く拝聴しました」「たいへん有意義で充実した内容のシンポジウムでした。グラフィックレコーディングという新しい試みもよかったです」などの感想が寄せられました。

※当日の清水氏制作によるグラフィックレコーディングの作品は、教育革新センターウェブサイトからダウンロードできます。

グラフィックレコーディングの作品

お問い合わせ先

教育革新センター

E-mail : citl@jim.titech.ac.jp

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