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オープンファシリティセンターが「TCカレッジシンポジウム」を開催

オールジャパン型高度技術人財育成の取り組みの今と今後の展望

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公開日:2023.03.15

東京工業大学オープンファシリティセンター(OFC)は、1月27日に研究基盤EXPO2023の企画として「TCカレッジシンポジウム~オールジャパン型高度技術人財育成の取り組みの今と今後の展望~」を、研究基盤協議会(CORE)および研究基盤イノベーション分科会(IRIS)の後援の下、オンライン開催し、産官学から287人が参加しました。

2021年にOFCは次世代型研究支援組織の構築を目指し、その中核となる高度研究支援人財(テクニカルコンダクター、TC)を育成するためにTCカレッジを開校しました。
TCカレッジは、研究基盤を中核とした産官学協働による、オールジャパンの人財養成モデルの構築を目指しており、日本全体の科学技術の推進に寄与できる人財の輩出に向け、東工大の研究推進のみならず、全国の技術系職員および技術者に広く門戸を開いています。

TCカレッジシンポジウム参加者たち

TCカレッジシンポジウム参加者たち

あいさつをする渡辺OFCセンター長
あいさつをする渡辺OFCセンター長

本シンポジウムはTCカレッジ共通カリキュラムの一部として、プロジェクトリーダーの資質を身につけることを目的に、受講生が企画・運営に携わりました。

渡辺治OFCセンター長(理事・副学長)による開会あいさつに続き、岩附信行OFC研究基盤戦略室長(副学長)が東工大コアファシリティ事業の紹介、TCカレッジコース担当(研究基盤戦略室長補佐)および事務局統括によるTCカレッジ構想の説明を行いました。

協力メーカーの講演

TCカレッジへの期待と日本電子の取り組み

有福和紀氏(日本電子株式会社)

有福氏は「『TC』の位置付けは、高い専門性を横軸、様々な分野を縦軸とし、それらの両者に対して高い次元で力を発揮できる人財であると考えている。メーカーとして必要とする人財を検討するにあたり、ある専門的な分野に特化されるが、その専門分野を伸ばしていく人財やその逆に分野を広げていく様々な人財がいて良いと思っているので、我々としてもそのような人財の育成にぜひTCを活用したい。TCカレッジに対しては、傍観者になって手伝うのではなく、当事者として一緒に作り上げ、最終的には当社の教育を受け持つ機関として、様々な人財育成にTCカレッジを活用したいと考えている。今後、TCカレッジが全ての技術者に対する最高学府に位置づけられるよう、我々も一緒に活動を行っていきたい。是非オールジャパンで盛り上げたいと思う」と話しました。

TCカレッジへの期待と島津製作所の取り組み

櫻井久雄氏(株式会社島津製作所)

櫻井氏は、下記の3つのTCカレッジへの期待について語りました。

  1. 1. 専門人財の育成
    「目指すべきTC像、KPI、カリキュラムがそれぞれ明確に設定され、プロフェッショナル技術職員であるテクニカルコンダクター(TC)取得への受講プロセスが明確化され、今後多くの専門人財が育成されるものと期待している。」
  2. 2. 教育プログラムの共同開発
    「高度技術人財を育成するために、研究機器設備メーカーとしては、機器設備を運用する専門人財の育成について非常に期待しており、共同研究・共同開発を進めている。」
  3. 3. 研究設備共用のあり方
    「若手人財育成を含む次世代研究基盤に関する活動に対して大いに期待しているとともに、研究設備の共用化の仕組みや運用などについても、分析計測メーカーの立場として強みが生かせる協業を引き続き進めたいと考えている。」

3つの期待を語った櫻井氏は、またTCカレッジの今後の発展に関して、「多角的かつ総合的な解析ができる人財の育成に期待している。このような人財を育成する教育プログラムとして、カリキュラムのブラッシュアップを継続して行う必要があると考えており、当社としても今後も積極的に提案したいと思う」と述べました。

日本電子株式会社の有福氏(左)と株式会社島津製作所の櫻井氏(右)

日本電子株式会社の有福氏(左)と株式会社島津製作所の櫻井氏(右)

オールジャパン型高度技術人材育成—サテライト校の取り組み紹介—

「TCカレッジ」ネットワーク形成について、3校の取り組みを紹介しました。

山口大学 河元信幸氏

山口大学は第4期中期目標・中期計画において、大学間相互連携による技術職員のスキルアップとキャリア形成に取り組むことを掲げています。TCカレッジ情報系コースのカリキュラムを大学間相互連携により共同開発することで、将来的にはこの仕組みが本学総合技術部と他大学との相互連携による高度専門技術者育成プログラムを構築する際にも応用できると考えている、と河元氏は話をしました。

長岡技術科学大学 河原夏江氏

長岡技術科学大学はTCカレッジにおいて、遠隔分析DX系コースを担当しています。本コースでは、機器分析分野の幅広い知識と技術を習得するとともに、電子顕微鏡などの研究設備を遠隔利用できるTCの養成を目的としており、専門的なスキルに加えて、マネジメント科目も学ぶことにより、遠隔利用による機器の共用化をリードするとともに、分野や機関を越えた複合的な課題にも参画できる高度専門人財を養成します。河原氏は今後、TCカレッジを通して全国の技術者に向けた遠隔利用・DXに関する講義や実習を提供することにより、リモート機器ネットワークの拡大にもつながると、期待を寄せました。

岡山大学 阿部匡史氏

大学の中期目標・中期計画における、研究設備機器の全学的なマネジメントによる戦略的な設備共用を進めるために、コアファシリティ化の考えに基づき、岡山大学はトップマネジメントの下で推進にあたるコアファシリティ組織の2023年度創設を目指しています。コアファシリティでは、研究設備の一体運用と技術スキルの一体運用について取り組んでおり、技術スキルの一体運用の中に、東工大TCカレッジ協同による技術力の底上げが組み込まれていると語りました。 また、阿部氏は現在、TCカレッジ新規コース開設に向けた検討を進め、医学部と工学部に所属する技術職員が多いため、医学分野に工学的な知識や技術を取り入れて課題解決できるTCの養成を目指したコース設計を進めていると述べました。

山口大学の河元氏(左)、長岡技術科学大学の河原氏(中央)、岡山大学の阿部氏(右)

山口大学の河元氏(左)、長岡技術科学大学の河原氏(中央)、岡山大学の阿部氏(右)

受講生からの報告

桑名亮一技術職員(東工大 情報系TCコース受講生)

桑名技術職員は情報セキュリティに関するこれまでの振り返りや特筆すべき事象および最近のトレンドについて次のように話しました。
「インターネットが普及する前からコンピュータウイルスは存在し、コンピュータへの不正アクセスなどの問題は約40年前から起こっている。以前は感染させること、もしくは不正アクセスを成功させること自体が作成者の目的となっており、簡単に作成者を突き止めることができた。ところが、現在では匿名性が高く、容易に追跡できない高度なネットワークを利用した犯罪などが多くなり、世界規模の問題となっている。実験装置・機器はもちろん、家電などの一般的なものまでが感染対象となっており、普段業務で使っているパソコンから共用研究設備の遠隔化・自動化といったサービスについても、セキュリティの面でもよく考える必要がある。」

柗見吉朗氏(鳥取大学 マネジメント系TCコース受講)

柗見氏はTCカレッジを受講して感じたことや意気込みを以下のように話しました。
「TCカレッジの実践的かつ独自のカリキュラムを通して、様々なステークホルダーとの折衝力を『修行』している。また、個人的には2022年度の技術研究支援発表会でOFCセンター長賞の初代受賞者になり、非常にやりがいを感じている。
今後は、マネジメント系TCが主導する産学連携の共創イノベーションにより、地方大学の役割の一つである『地域の方々に夢を魅せ続ける大学』をさらに発展させたい。加えて、TCカレッジでの修行を通して、技術情報のリエゾンとなりながら、大学の研究戦略を支えたいと考えている。TCカレッジにおいては、開講している8コースのうち、マネジメント系コースを除いた7コースに対して、下から支えられるようなTCを目指したい。現在、東工大をはじめ、全国の9大学から受講生が集まっている。将来的には、TCネットワークを日本全国に広げたいと考えており、東工大を中心としたネットワーク構築に期待している。」

東工大の桑名技術職員(左)と鳥取大学の柗見氏(右)

東工大の桑名技術職員(左)と鳥取大学の柗見氏(右)

講評:文部科学省科学技術・学術政策局研究環境課の渡辺隆之専門職

渡辺専門職は文部科学省としても、多様な観点で協力しながらTCカレッジの活動を盛り上げることができればと考えていると述べ、TCカレッジの取り組みが技術職員の参加を促進させながら、このような取り組みを通じて職員の活躍の場が広がり、大学等の研究力強化に繋がることへ期待を寄せました。

文部科学省の渡辺専門職(左)と江端TCカレッジ長(右)

文部科学省の渡辺専門職(左)と江端TCカレッジ長(右)

最後に閉会のあいさつとして、江端新吾TCカレッジ長より、研究基盤にかかわる人財育成に関する全国ネットワークがTCカレッジを通じて既に出来上がってきており、今後、受講生や東工大・サテライト校の技術職員の人的ネットワークをさらに拡大させ、オールジャパン型の高度技術人財育成を進めると共に、来年度はさらに世界の技術者との繋がりも構築するとの意気込みを参加者に伝え、本シンポジウムを締めくくりました。

東工大TCカレッジ(2021年6月開校)

東工大コアファシリティ構想における⾼い技術⼒・研究企画⼒を持つ「⾼度専門⼈財養成」のため、研究力を飛躍的に向上させる「Team東工大型革新的研究開発基盤イノベーション」を牽引するプロフェッショナル技術職員を「テクニカルコンダクター(TC)」として認定する称号制度を導入している。
TCを養成するための「東工大TCカレッジ」をOFCに創設し、社会のニーズに合わせたTC人財像をもとに独自のカリキュラムを開発し、学内外の受講者に提供している。

お問い合わせ先

オープンファシリティセンター TCカレッジ事務局

Email tccoll-office@ofc.titech.ac.jp

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