東工大ニュース
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東京工業大学が牽引する超スマート社会推進コンソーシアム(SSS推進コンソーシアム)は、3月15日に「超スマート社会 × Industry 5.0」と題した技術フォーラムを大岡山キャンパスのディジタル多目的ホールおよびオンラインによるハイブリット形式で開催しました。学内外から現地参加者40人が、Zoomでは217人が参加しました。
超スマート社会時代のプロダクションや工場全体のプロセス管理は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が進展することで大きく変容していくと考えられます。ここではAI、ML(マシンラーニング)(注1)、CPS(サイバーフィジカルシステム)(注2) などのICT技術を積極的に活用することで、より効率的で高精度なものに進化していくことが期待されています。
さらに、ロボットと人との共存、ホログラフィックコミュニケーション、VR/ARとの融合などにより、産業構造やプロダクションは革新的なフレームワークに進化していくと考えられます。
本フォーラムでは、来るべき新世代プロダクションを支える要素技術から、それらが導く未来の超スマート社会実現までの幅広いテーマについて、革新的技術や最先端の知見が紹介されました。
フォーラム会場の様子
フォーラムはまず、東京工業大学 工学院の福田英輔特任教授(超スマート社会推進コンソーシアム推進委員長)によるあいさつの後、超スマート社会 × Industry 5.0をテーマにした革新的技術や最新の知見についての講演が続きました。
神藤氏
神藤氏からはDMG森精機株式会社の取り組みについて(1)工程集約 (2)自動化 (3)DXの3つの項目に分けての説明がありました。それぞれ、(1)複数の専用機械が必要だった工程を複合加工機一台に集約させた結果、寸法精度や形状精度が向上したこと、(2)人と共存可能な自走ロボットの開発、(3)製造現場でのデータ集約、物理特性モデルのシミュレーションといった様々なケースにおけるDXの活用例が紹介されました。
中野氏
中野氏からは、種類や量が様々かつ重厚長大な特徴ある製品を作る川崎重工業における自動化・デジタル化の取り組みについての発表がありました。組み立てラインの生産計画の最適化、作業ミスの防止、外観キズ検査の自動化、設計・生産情報のデジタル化、遠隔操縦ロボットの開発など、様々な取り組みが紹介されました。まとめとして、自動化・デジタル化を通して、熟練・ベテラン社員の代替、労働者確保の多様化、働き甲斐の向上を目指すことが言及がされました。
小渕氏
小渕氏からは、強化学習を活用した酢酸ビニル製造プラントのシミュレーターでの動作実験や、実際のプラントの制御トレーニング実験装置での実証実験といった横河デジタル株式会社における制御用AI開発についての講演がありました。また、AIによる自律制御で化学プラントを35日間連続で制御することに2022年に成功し、24時間オペレータが必要だった以前と比べて大幅な効率化が達成されたことが報告されました。
小野崎氏
小野崎氏からはジェイテクトにおけるAI活用の事例として2件の最新技術が紹介されました。1つは樹脂射出成型工程における例として、機械学習を活用した品質予測手法やAIを利用した成形条件自動調整システムの紹介がありました。2つ目は外観検査工程における良否判定技術として、ルールベース判定とAI判定を組み合わせたハイブリッド判定について説明されました。
村井氏
村井氏からはロボティクスソリューションの進化として、AI活用例、新型自律ロボット、人協働ロボットについて紹介されました。データ活用によるモノづくり革新について言及され、工程プロセスなどをデジタル化することによって自動化の付加価値を高められることが述べられました。さらに、その具体例としてモータ向上においての適用事例が紹介され、蓄積されてできたデータチェーンを活用することで次の生産への計画と実行に自在性が生まれると説明がありました。
田中准教授
田中准教授からはAM(アディティブマニュファクチャリング)のプロセスと利点について説明がありました。産業用の造形機や金属材料の例、加工装置の比較、AMの価値を高めるための研究などのほか、実際のAM応用例としてインソールプリンティング、4Dプリンティング3Dフードプリンタが紹介されました。また、AMの課題として、加工能率、加工表面の粗さ、高精度部品加工における機械間精度保持が挙げられました。
閉会あいさつをする阪口教授
フォーラムの最後に、超スマート社会卓越教育院長である工学院 電気電子系の阪口啓教授(超スマート社会推進コンソーシアム コーディネーター)からの閉会あいさつがあり、参加者からは、「自律化という今の時代のキーワードを認識できて良かった」、「普段関わることの無い異業種の取り組みを知ることができ、自社でのDX導入を見直すための参考になった」などの感想が寄せられました。
本コンソーシアムからは今後も引き続き、最先端のテーマを扱う技術フォーラムの開催が予定されています。
登壇者と参加者による記念写真