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東工大グローバル水素エネルギー研究ユニット 第2回公開シンポジウム 開催報告

2016.12.26

将来の水素利用体系に関する総合的かつ技術的な検討を推進することを目的に発足した「東工大グローバル水素エネルギー研究ユニット」(以下、GHEU)は、10月5日、国内外の水素利用技術の現状と将来展望を共有するため、公開シンポジウムを開催しました。東工大蔵前会館の会場に用意した席がほぼ埋まる約261名の参加者が集まり、水素エネルギーに対する関心の高さがうかがえました。

  • 会場の様子

    会場の様子

  • 積極的に質問をする参加者

    積極的に質問をする参加者

開会の挨拶をする三島学長
開会の挨拶をする三島学長

開会挨拶で壇上に登った三島良直学長は、4月に10個の研究ユニットを立ち上げたことを紹介し、そのうちの一つがノーベル賞を受賞した大隅良典栄誉教授がユニットリーダーを務めていることに触れ、今回の受賞で大きな期待が東工大の研究ユニット全体に寄せられていると強調しました。また、岡崎健特命教授が率いるグローバル水素エネルギー研究ユニットもますます発展して欲しいとエールを送りました。

GHEUの活動と今後の戦略について説明する岡崎特命教授
GHEUの活動と今後の戦略について説明する岡崎特命教授

続いて、GHEUのユニットリーダーである科学技術創成研究院の岡崎健特命教授が、この研究ユニットの活動と今後の戦略について説明しました。研究活動の方針は、水素サプライチェーン構築に向けて産官学のメンバーが連携し、(1)正しい情報収集・整理・分析、(2)ボトルネックと研究課題の抽出、(3)社会実装に向けた方策の検討により、未利用エネルギーからの水素エネルギー利用体系の構築に向けた活動を共同で推進することであると話しました。また、今後の展開として、この研究ユニットに含まれる「グローバル水素エネルギーコンソーシアム」の充実をはじめ、プロジェクトの推進と次期プロジェクトの検討、国内の研究機関や産業界との連携、水素社会実現の本質的意義を伝える社会発信や社会貢献、世界的な研究ハブのイニシアチブをとるための国際展開を掲げました。

その後、東工大における水素研究の最新動向について、工学院の店橋護教授と環境・社会理工学院の梶川裕矢准教授がそれぞれ発表しました。

梶川准教授は「トータルシステム調査研究の取り組み」と題して、水素エネルギーが社会に実装されるためには何が必要かを説明し、科学技術の社会実装は要素技術だけでは決まらず、社会的なレジームで決まると指摘しました。さらに、社会の動向や社会にとっての水素エネルギーの価値を分析し、社会に発信しながら、同時に要素技術の開発を推進することが重要だと主張しました。また、この調査研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「水素利用等先導研究開発事業」の支援を受けていることを報告しました。

続いて、店橋教授は「水素燃料の本質的理解とその応用」というタイトルで、水素発電用のガスタービンの技術を実現するためにはどのような課題があるかを解説しました。水素だけを燃やす水素専燃の場合には、燃料と酸化剤の混合ガスを燃焼室に流入させる予混合燃焼と、燃料と酸化剤を別経路で燃焼室に流入させる非予混合燃焼が考えられると説明し、水素発電用のガスタービンには、きちんと燃える予混合の専燃技術が最終的に求められ、この研究開発が必要となるだろうとの見通しを示しました。また、予混合の水素専燃ガスタービンを実現するために乗り越えなくてはならない課題についても具体的に提示しました。

東工大の水素研究の最新動向について発表する梶川准教授
東工大の水素研究の最新動向について発表する店橋教授

東工大の水素研究の最新動向について発表する梶川准教授と店橋教授

今回のシンポジウムでは2名のゲストを招き、招待講演も実施しました。

招待講演1「水素社会の実現に向けた取組の加速~ロードマップの改訂について~」

経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部
新エネルギーシステム課長 水素・燃料電池戦略室長 山澄克氏

2016年3月に改訂された「水素・燃料電池戦略ロードマップ」の内容についての解説と、フェーズ1の定置用燃料電池や燃料電池自動車及び水素ステーション、フェーズ2の水素発電と大規模な水素供給システム、フェーズ3の再生可能エネルギー由来水素についての講演がありました。

講演をする山澄氏
講演をする山澄氏

講演をする山澄氏

招待講演2「ドイツにおける水素エネルギーと燃料電池技術」

ドイツ 水素・燃料電池技術研究機構
マネージング ディレクター バンホッフ博士

ドイツにおけるさまざまな水素エネルギーや燃料電池の技術や利用を紹介してもらいながら、国の取り組みなどの現状と今後の展望に関する講演がありました。

講演をするバンホッフ博士
講演をするバンホッフ博士

講演をするバンホッフ博士

最後に、この研究ユニットに参加する企業・組織のメンバーを交えたパネルディスカッションが開かれました。

パネリスト

  • 笹津浩司氏 電源開発株式会社 技術開発部長
    石炭のガス化とクリーン利用について提言しました。

  • 斎藤健一郎氏 JXリサーチ株式会社 エネルギー技術調査部長
    水素の製造・輸送・貯蔵・利用について、将来に繋ぐ論点を提示しました。

  • 中島良氏 株式会社東芝 次世代エネルギー事業開発プロジェクトチーム サブプロジェクトマネージャー
    再生可能エネルギー由来の水素を利活用する東芝の取り組みについて報告しました。

  • 大平英二氏 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 新エネルギー部主任研究員
    水素エネルギー利用の展開について多様な視点を提供しました。

  • 橋本道雄氏 東京工業大学 環境・社会理工学院 特任教授、GHEUメンバー
    水素発電による水素の大規模な利活用について説明し、水素エネルギーを推進する意義を訴えました。

上記のパネリストの他、冒頭に講演した店橋教授と梶川准教授も加わり、進行役はGHEUのユニットリーダーである岡崎特命教授が務めました。

閉会にあたって、岡崎特命教授は、学理に根ざした研究を基本に、水素社会の実現に向けた活動を活発化させたいと述べ、産官学の連携については、コンソーシアムの機能を強化してさらに密な活動を進めていくため、参加したい企業や組織があれば、いつでも声をかけて欲しいと呼びかけました。また、今後は、海外の大学との協力関係の強化も目指したいとの抱負を語りました。

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院
グローバル水素エネルギー研究ユニット

E-mail : gheu@ssr.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3335