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学生による国際交流プログラム「7th ASCENT」開催報告

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公開日:2016.12.22

2016年8月、東工大生自身の手で身近な国際交流活動を積極的に進めている東京工業大学 国際交流学生会SAGE(以下、SAGE)が、第7回アジア理工系学生連携促進プログラム「7th ASCENT」を開催しました。アジア圏6ヵ国から学生20名が参加し、東工大生と交流しました。

ASCENT参加者の集合写真

ASCENT参加者の集合写真

ASCENTの概要

アジア理工系学生連携促進プログラムASCENTは、Asian Students Collaboration Encouragement Program in Technologyの略称で、SAGEが主体となって企画・運営を行う10日間の国際交流プログラムです。アジア圏の理工系学生間の持続的ネットワーク構築と参加者の学術的および人間的成長を目的としています。

ASCENTでは毎年異なるテーマを設定しており、参加者はそのテーマに関連した研究やビジネスを行っている企業、研究所、学内研究室の見学や基調講演を通して、日本の技術や研究について学びます。これを基に、近年アジア各国が抱える問題についての解決策や適応案をグループで話し合い、最終報告会で成果報告を行います。各グループでは熱心に議論が行われ、一つの結論を共に創りあげる経験を通して、強固な学生間ネットワークが生まれます。また、学術的な活動を軸に据えながらも、文化交流会・日本文化研修などを通して異文化交流や学生間の交流を促進し、学習だけではない総合的な体験の場となることを目指しています。

7th ASCENTの開催

今回の7th ASCENTは8月19日~29日に開催されました。6th ASCENT以前は毎年3月に開催していましたが、ASEAN諸国のセメスター制度の変更に伴い、時期を8月に変更して開催しました。

今年は「アジアを支えるロボット技術 Robotics & Asian Society」をテーマに掲げ、様々なプログラムを実施しました。中国、韓国、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナムの6ヵ国から合計20名が参加しました。参加者はそれぞれグループに分かれた後、講演・見学・ディスカッションなどを経て、テーマに関する提案を最終報告会にて行いました。

スケジュール

8月19日
到着日、歓迎会
8月20日
開会式、基調講演(産業技術総合研究所)
8月21日
事前学習報告会、文化交流会
8月22日
研究室見学(大岡山キャンパス 中島研究室、鈴森・遠藤研究室)※台風のため中止
8月23日
研究室見学(大岡山キャンパス 山北研究室、武田研究室)
8月24日
企業見学(株式会社大林組 技術研究所)
8月25日
企業見学(株式会社ハイボット)
8月26日
留学説明会、中間報告会
8月27日
最終報告会、閉会式
8月28日
日本文化研修、送別会
8月29日
出国日

参加国・参加大学

  • 日本:東京工業大学
  • 中国:清華大学
  • 韓国:韓国科学技術院(KAIST)
  • インドネシア:バンドン工科大学、ガジャ・マダ大学、インドネシア大学
  • タイ:チュラロンコーン大学
  • フィリピン:デラサール大学
  • ベトナム:ハノイ工科大学

プログラム内容

  • 基調講演

毎回ASCENTでは基調講演を行い、その年のテーマへの導入を行っています。基調講演を聞くことで、参加者がテーマに関する理解を深め、今後の議論が活性化することを目的としています。今回は産業技術総合研究所の方に講師をお願いしました。講演では、日本やアジア諸国が抱える社会問題という大きなものから、日々の生活の中に潜むニーズという小さなものに至るまで、ロボット技術を用いてこれらの問題を解決しようとする試みについてのお話しがありました。

産業技術総合研究所からの講師による基調講演

産業技術総合研究所からの講師による基調講演

  • 企業見学・研究室見学

企業見学と研究室見学では、テーマに関連した企業や研究室を訪問し、ロボット技術に関する知識、技術を用いて問題を解決する具体例を習得します。企業見学では大林組技術研究所とハイボットを、研究室見学では大岡山キャンパスにて山北研究室、武田研究室を見学し、最先端のロボット技術に関して学びました。企業では建築現場や災害現場、プラントなどで活躍するロボットの動く姿を実際に見せてもらいました。研究室ではロボットの機構や制御の研究についての説明を受けました。

ロボット技術の先進国である日本の技術に対して参加者は大いに関心を持ったようで、時間の許す限り質問をしたり、見学から刺激を受けてロボットのコンセプトを描く人もいました。ある参加者は今回見学した研究室に研究生として留学に来ることが決定しています。この見学はASCENTのテーマを深めるだけではなく、海外の学生に東工大をアピールするという側面もあります。

  • ハイボットでヘビ型ロボットを見学

    ハイボットでヘビ型ロボットを見学

  • 山北研究室で説明を受ける参加者

    山北研究室で説明を受ける参加者

  • ディスカッション・中間報告会・最終報告会

各グループはディスカッションで日本を含めたアジア諸国が抱える問題について抽出した後、見学や講演をヒントにして解決策を練り上げます。同じテーマであっても、認識している問題が個人・グループごとに異なっており、ディスカッションの内容はどのグループも興味深いものでした。これは出身国や専門分野等、様々なバックグラウンドを持った人がASCENTに参加しているからであると言えます。

中間報告会で他の参加者やスタッフからフィードバックをもらってから、最終報告会を行いました。最終報告会では10日間のプログラムで学んだことを活かしてそれぞれのグループが発表を行いました。発表では見学の際に学んだロボット技術を応用して、問題を解決するためのロボットを各グループが提案しました。どのグループもオリジナリティ溢れるロボットを提案し、他の参加者やスタッフが発表に聞き入っている姿が印象的でした。

  • 他の学生の意見に真剣に聞き入る参加者

    他の学生の意見に真剣に聞き入る参加者

  • 最終報告会で各自考えたロボットを発表する参加者

    最終報告会で各自考えたロボットを発表する参加者

  • 事前学習報告会・文化交流会・日本文化研修

各国の参加者が自国についての紹介を行う企画や日本の文化を知ってもらうための企画もあります。事前学習報告会では、各国の参加者が来日前に今回のテーマや自国に関して調査してきた事項を他国の参加者に向けて発表し、アジアの現状について把握します。文化交流会では参加国伝統のアクセサリーを一緒に作ったり民族衣装を着たりするなど、参加者は普段体験しない他の国の文化に触れることができました。プログラムの終わりには日本文化研修として日本の有名観光地へ出かけます。今回は鎌倉へ出向き、大仏見学や神社を訪問するなど、参加者同士の友好が更に深まっただけでなく、日本の文化を知る良い機会になりました。

  • 文化交流会で自国のアクセサリーの作り方を説明する参加者

    文化交流会で自国のアクセサリーの作り方を説明する参加者

  • 鎌倉の大仏見学

    鎌倉の大仏見学

プロジェクトリーダー総括

参加者と握手を交わすプロジェクトリーダーの李さん
参加者と握手を交わすプロジェクトリーダーの李さん

李 恒さん(工学部 電気電子工学科 3年)

ASCENTは、東工大生が東南アジアにて学習を行う短期海外派遣プログラムJAYSES(Tokyo Tech-AYSEASの前身プログラム)に参加した学生が「日本で勉強できる同じようなプログラムがあればいいな」という現地の学生の声を聞き、SAGEを設立してプログラムの企画を行ったという経緯があります。私自身、Tokyo Tech-AYSEAS 2015に学生リーダーとして参加し、「参加者視点」という立場・経験を踏まえて本プログラムの企画を進めてきました。

第7回となる今回は、新たな海外参加大学として中国(清華大学)・韓国(韓国科学技術院(KAIST))・ベトナム(ハノイ工科大学)を迎え、名実ともにアジア理工系学生対象のプログラムとしてのスタート地点に立ちました。しかし、ホスト大学である東工大における知名度および学生への影響力は未だに成長過程であり、国内外での本プログラムの更なる発展に期待しています。 個人的な所感としては、1年半もの歳月をかけて大学生活および私生活と並行して運営準備を行ってきたため、楽しさよりも戸惑いや葛藤の方が遥かに大きかったというのが正直なところですが、プログラム最終日に参加者たちの笑顔を見て、自分の歩んできた道に間違いは無かったと確信しました。

8th ASCENTについて

次回のASCENTは2017年夏に開催予定です。アジア諸国が抱える問題や社会現象などの時事に基づいてテーマを選定し、講演や見学先を順次決定していきます。8th ASCENTの応募は来年3月頃に海外の大学で、4月頃に東工大で開始します。

ASCENTは東工大生はもちろん、アジアの大学に属する学士・修士・博士後期課程の学生であれば、誰でも応募することが出来ます。プログラムの詳細や応募方法などはSAGEのウェブサイトや各種SNS、メールマガジンを通じて発信される予定です。

今後もSAGEは、海外学生とのネットワークがプログラム終了後も継続し、東工大生の国際的な活動を促進していけるようなASCENTを開催していきます。

お問い合わせ先

東京工業大学 国際交流学生会SAGE

Email : sage.tokyo.tech@gmail.com

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