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東工大グローバル水素エネルギー研究ユニット 第4回公開シンポジウム開催報告

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2019.02.26

東工大グローバル水素エネルギー研究ユニット(GHEU)は、未来の「水素社会」に向けて、水素の利用体系について総合的かつ技術的な検討を進め、産官学の連携の下、さまざまな活動を展開しています。

加えて、国内外の水素利用技術の現状と将来展望を関係者の間で共有するために、公開シンポジウムを1年に1回開催しています。

4回目となる今回は「中国の水素エネルギーR&Dと将来動向を知る」と題し、1月31日に東工大蔵前会館くらまえホールで開催しました。来場者は年々増え、今回は312人となり、開始前から会場が満員となりました。

来場者の多くは、メーカーやエネルギー関連企業、建設会社、商社など幅広い分野の企業の方々をはじめ、政府や自治体の方々、大学や研究機関の関係者たちなどです。水素利用技術に対する関心がますます高まっていることを感じるシンポジウムとなりました。

シンポジウム後に行われた意見交換会も、予想を超える人数の方に参加いただき、会場を広い場所に急きょ変更したほどです。ここでも企業や業種の壁を越えた活発な交流が生まれました。

開会の挨拶をする益学長
開会の挨拶をする益学長

午後1時30分、シンポジウムが始まると、最初に東京工業大学の益一哉学長が壇上に立ち、開会の挨拶をしました。

益学長は、前職の科学技術創成研究院長のときからGHEUの発展を応援してきたことを伝えながら、「この研究は非常に重要であり、本学が主導し、そして皆様と一緒になって社会に貢献していきたい」と抱負を語りました。

今回は、新しい国内外の動きを知ることができる、二つの招待講演を実施しました。

招待講演

「中国の水素エネルギーの現状と展望 Chinese Hydrogen Situation and Vision」

清華大学(中国) 教授 毛宗強(マオ ゾン チャン)氏

中国の水素エネルギー協会会長などを歴任し、国際水素エネルギー協会(International Association for Hydrogen Energy:IAHE)の副会長を務めている毛宗強教授をお招きし、中国で精力的に進められている水素エネルギー利用技術のR&Dについて、現状を語っていただきました。

中国では2017年から2018年にかけて、燃料電池など水素関連の投資額が2,292億元(約3兆6672億円<1元=16円>)に上るなど、毛教授のさまざまな話からその開発の規模の大きさをうかがい知ることができました。

「水素社会実現に向けた経済産業省の取組」

経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギーシステム課長 江澤正名氏

経済産業省の江澤正名氏をお招きし、日本がこれからどのように水素エネルギー利活用を広げていくのか、国の取り組みを説明していただきました。

水素のコストを将来20円/Nm3まで下げることなどの水素基本戦略のポイントや、2019年に改訂される「水素・燃料電池戦略ロードマップ」で検討されていることなどについて、分かりやすく解説していただきました。

講演する毛教授(清華大学)
講演する毛教授(清華大学)

講演する江澤新エネルギーシステム課長(経済産業省)
講演する江澤新エネルギーシステム課長(経済産業省)

講演

「再エネとCO2フリー水素導入拡大に向けた課題と動向」

東京工業大学 科学技術創成研究院 特命教授 グローバル水素エネルギー研究ユニット ユニットリーダー 岡崎健

講演する岡崎特命教授
講演する岡崎特命教授

シンポジウムの後半は、まず、GHEUユニットリーダーの岡崎健特命教授が登壇し、「再エネとCO2フリー水素導入拡大に向けた課題と動向」と題した講演を実施しました。

その中で、水素社会を実現するための論点を整理したり、余剰電力の考え方や熱・産業プロセス等の低炭素化の観点、またグリーン水素および低炭素水素の定義について見解を紹介したりなど、多くの示唆を含む考えを示しました。

東京工業大学が参加する水素関連NEDOプロジェクト報告

「トータルシステム導入シナリオ調査研究:学理に基づく定量的解析による水素の役割と水素社会の将来像」

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 教授 伊原学

講演する伊原教授
講演する伊原教授

続いて、東京工業大学が水素関連で参加する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトについて、3人の教授が報告しました。

一人目は、伊原学教授で、NEDOの事業「トータルシステム導入シナリオ調査研究」について説明しました。

水素エネルギーシステムの価値が社会の中で最大限発揮されるために必要となる要素・システム技術や、その開発目標を明確にするための技術開発シナリオを検討しながら、その技術目標の妥当性を学理に基づいて評価するとともに、多様な評価軸についても提案していく事業内容について、ていねいに解説しました。

「酸素水素燃焼タービン発電システムの研究開発」

東京工業大学 工学院 機械系 教授 店橋護、東京工業大学 工学院 機械系 教授 野崎智洋

その後、店橋護教授と野崎智洋教授がNEDOのプロジェクト「酸素水素燃焼タービン発電システムの研究開発」について説明しました。

まず、店橋教授が、発電効率75%を達成できるシステムの技術成立性や、経済性確保の見通しの検討、競合技術と比較するフィージビリティスタディについて解説しました。

次に、野崎教授が、実用化されているコンバインドサイクル(Combined Cycle)より約10ポイントも効率が高くなるグラーツサイクル(Graz Cycle)の水素・酸素燃焼の可能性について話しました。

講演する店橋教授
講演する店橋教授

講演する野崎教授
講演する野崎教授

総合討論

「水素エネルギー導入に関する日中の連携のありかたについて」

総合討論の様子
総合討論の様子

すべての講演が終わったところで、総合討論の時間が設けられました。テーマは「水素エネルギー導入に関する日中の連携のありかたについて」で、司会の岡崎特命教授が来場者に議論の参加を促すと、毛教授に対する質問が多く出ました。

会場から出た「日本と中国の協力ではどのような方法があり得ると考えますか」という質問に対して、毛教授は「多くの領域で協力ができると考えています。例えば、水素ステーションを建設することや再生可能エネルギー由来の水素製造でも協力できるでしょう。今後は乗用車の燃料電池車も積極的に開発したいと思っているので、この分野でも協力してほしい」と答えました。

また、水素に関わる技術について、「中国ではたくさんの課題があります。今回、私が来日した目的は、日中の協力関係を築くことです」と話し、中国における技術開発の参加を来場者に呼びかけていました。

最後に、岡崎特命教授が「皆様のおかげで予想以上の盛会となり、ありがとうございました」と謝意を述べ、第4回シンポジウムは閉会となりました。

意見交換会にて(左から岡崎特命教授、毛教授、益学長)
意見交換会にて(左から岡崎特命教授、毛教授、益学長)

満員の会場の様子
満員の会場の様子

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院

グローバル水素エネルギー研究ユニット

E-mail : ghec@ssr.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3335 / 3019

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