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未来社会DESIGN機構(DLab) 2018年度のあゆみとこれから

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公開日:2019.03.29

2018年9月に発足した「未来社会DESIGN機構(以下、DLab)」は、東工大と社会が一緒に、これまでの科学・技術の延長線上で予測する未来とは異なる「人々が望む未来社会」を考える場です。未来への道筋をデザインし、その未来デザインを社会と共有し、真の社会貢献を実現することを目指しています。

DLabは、学内だけでなく学外からも構成員を迎え、発足前から活動開始に向けた準備を活発に行ってきました。例えば、2018年6月と8月に構成員たちが本学に集まり、プレミーティングとプレワークショップを行いました。また、学内では少なくとも週1回以上のミーティングや打合せを行いました。これらの内容を踏まえて、10月28日、広く外部からの参加者を集めたキックオフイベントを開催しました。

以上の活動成果を反映した上で、2019年度からはより具体的なプロジェクトの始動を予定しています。

DLabは、東工大と社会が混ざる組織

DLabには、所属、役職、専門分野、年齢、性別と、あらゆるボーダーを超えた多様なメンバーが参加しています。東工大からは、学院やリベラルアーツ研究教育院、科学技術創成研究院等のさまざまな専門分野を持つ教員と多様な部署から集まった事務職員が参加し、専門分野の壁、教職員の壁を超えたアイデアを出しあっています。さらに、他大学の教員、行政、広告会社、メディアなど様々な分野の有識者が、世の中の期待や現状を可視化し、政策研究や課題解決の視点を提示していきます。このようなメンバーが、ワークショップなどのイベントに参加する東工大生、高校生や一般の方などと一緒に、30~50年先の豊かな未来社会像をデザインし、活動の輪を広げていきます。

指定国立大学法人としての強みを活かした「未来」のビジョン策定

DLab設立の背景には、東工大が指定国立大学法人となったことがあります。 2018年3月20日、東工大は、文部科学大臣から「指定国立大学法人」の指定を受けました。世界最高水準の教育研究活動の展開が見込まれる国立大学として選ばれたのは、現時点で、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、そして東工大の6大学です。

同年4月に就任した益一哉学長は、次のように語っています。

本学の指定国立大学法人構想は、これまで進めてきた教育改革・研究改革・ガバナンス改革を強みとして、創立150周年を迎えようとする2030年に向けて、更なる飛躍を目指すものです。本学は、卓越した教育研究活動により優秀な人材を社会へ輩出すること、及び優れた研究成果を還元することで、社会課題の解決を図るという国立大学としての責務を果たすとともに、本学の行っている活動をより広く発信することで社会との連携を一層強め、指定国立大学法人として豊かな未来社会の実現に貢献して参ります。

どのように「豊かな未来社会」を実現するか。そこで創設されたのが、DLabです。

DLabは、東工大と社会とが積極的に交わり「人々が望む未来社会とは何か」を一緒になって考え、そこに至る道筋をデザインしていく組織です。遠い未来像を夢想するだけでなく、現代社会において顕在化している課題とともに、将来の潜在的課題や生じ得る変化を分析し、「既存の科学・技術、政策」や「明らかになっていないが必要と目される科学・技術、政策」も併せて提示し、バックキャスティング(未来の視点から今を思考すること)により実現すべき未来社会像と、そこに至る道筋を導き出すことを目指しています。

これまでのDLab

2018年6月と8月にDLabの構成員たちが集まり、プレミーティング、プレワークショップを開きました。様々なバックグラウンドを持つ人たちがそれぞれの思い描く「未来」像を出し、どんな「未来」をDLabとして提案すべきか、その道筋をつけるためのアイデアを自由に出し合いました。そのイメージを軸に、さらにたくさんの外部の人々を招いた本格的なワークショップを開催して、DLabのお披露目としました。それが、10月に開催されたキックオフイベントです。

プレミーティング 個々の考える「未来」と「夢」を

6月1日に行われたプレミーティングでは、参加メンバーがグループワークでブレインストーミングを行い、学内外の構成員等で「未来」や未来に対する「夢」を描いていきました。

  • 科学・技術が底流にあるが、一見原始的な自給自足型の農耕経済が実現している社会こそが未来です
  • 2030年より遥か先の想像もつかない未来を、今見てみたい
  • 主観である幸せをなんとか数値化できると、未来が見えるはず
  • 地球の最後に思いを馳せたい。そのとき人類は、宇宙に羽ばたいているのか
  • ものづくりから、価値づくりの時代になる
  • 「~すべき」未来ではなく「~たい」未来
  • すべての武器を楽器にかえて
  • 「会いたい!」をかなえるスーパー交通システム

グループワーク終了後は、自由に考えた未来について、意見交換を行いました。

アラジンの魔法のランプにお願いするなら、こんな夢

アラジンの魔法のランプにお願いするなら、こんな夢

プレワークショップ 「未来のイメージ」を集約しよう

8月6日のプレワークショップでは、最初に、構成員のうち学外と学内からの数名に「私の創りたい未来社会のイメージ」を発表してもらいました。その後、構成員がその発表を基にグループワークを行い、グラフィックレコーディングで可視化されたイメージを共有し、参加者の未来のイメージを語り合いました。

話題が尽きないテーマ「未来」

話題が尽きないテーマ「未来」

  • 今よりベターなNEO東京を世界中の都市のモデルに
  • 冒険できる!楽観的で、帰れる場所があって、目的と違うものに興味があって
  • 時計の針をいつでも巻き戻せる自由を
  • 人々が生き生きとするために

ワークショップ終了後、多様なアイデアが出たこのワークショップを土台として、DLabで何度もミーティングを重ね、より具体的な「未来のイメージ」を集約していきました。

高校生から専門家まで、130名が集まったキックオフイベント

10月28日に行われたキックオフイベントには、DLabの構成員はもちろん、東工大の学生・教職員、学外からは高校生、社会人、卒業生、さらにメディア関係者など130名以上の多様な方々が参加しました。

テーマは「ボーダーを、超えよう。」

DLabの構成員である3名の教員が、専門分野からかんがみた「未来」を語り、その内容を元に参加者全員が4~5名のグループに分かれて議論し、最終的には全員がオリジナルの「未来のイメージ」を文字と絵で表現しました。

みんなの創造力を掻き立てる130以上の未来社会イメージの絵

みんなの創造力を掻き立てる130以上の未来社会イメージの絵

第1ラウンドは、工学院 電気電子系の岡田健一准教授の「無線のボーダーを超える」。第2ラウンドは、環境・社会理工学院 土木・環境工学系の鼎信次郎教授の「変化する地球の環境-『ボーダー』を考えるために-」。第3ラウンドでは、生命理工学院 生命理工学系の山口雄輝教授による「創薬の壁を超えて」。

1.通信、2.環境問題、3.医療・健康と、未来を考える上で不可欠な科学・技術のリアルを教えてもらった上で、3つのラウンドでは毎回メンバーを変えて、新鮮な顔ぶれで対話をしてもらいました。例えば、高校生とリベラルアーツ研究教育院の教員と東工大の卒業生とメディア関係者が同じテーブルで話し合うなど、未来を創造する上で理想的な「混ざり方」が実現し、オリジナリティ溢れるアイデアがたくさん出てきました。

今回のワークショップは、リベラルアーツ研究教育院の中野民夫教授が活用する「えんたくん」という折りたたみ式の丸いダンボールを4名の膝の上に乗せて、その上にメモを書いていく、というスタイルです。初めて経験した人にも、「お互いの距離が近いので自由に話ができる」「若い人が臆さず意見を出せる」「それぞれのアイデアを文字とイラストなどで繋いでいけるため、新しい考え方が生まれやすい」と大好評でした。

ワークショップのまとめとして、DLabの佐藤勲機構長(理事・副学長(企画担当))からは、こうする「べき」という未来よりもこうあり「たい」という未来をみんなで創造していきたいので、今後もより積極的にイベントやワークショップに参加してもらいたい、との要望がありました。最後にDLabの上田紀行構成員(リベラルアーツ研究教育院長)の司会で学外構成員とのミニシンポジウムが行われ、DLabへの大きな期待が語られました。

130名の参加者が描いた「私の創りたい未来」は、後日、東工大大岡山キャンパスの百年記念館にも展示されました。

これからのDLab

2年目を迎える2019年度には、いよいよ「未来社会像」を発信する予定です。

軸となるのは、キックオフイベントに集った130名以上の参加者が描いた未来像です。多様で膨大な個人個人が描いた未来像に込められたアイデアをどうやって活かし、DLabの「未来社会像」につなげていくのか。DLabはすでに何度となくミーティングを繰り返しています。数々の素晴らしいアイデアをただのアイデアで終わらせないためにも、DLabでは自由に未来を語れる場として、賛否両論を巻き起こすような未来社会像を社会に提示したいと議論を深めています。

もちろん、「人々が望む未来社会」像は1つではないはずです。異なった背景をもつ人々の未来像はさまざまですし、テーマや切り口によって「豊かな未来社会」のイメージは異なってきます。DLabは、社会の皆さんとの対話、未来社会像の提示とそこに至る道筋の共有というプロセスを幾度となく繰り返して、社会からの批評を得て、真に「人々が望む未来社会」を模索し続けます。

また、DLabの構成員である外部の専門家や教職員、イベントに参加した高校生や東工大生、メディア関係者などのインタビューをウェブ上で発信し、DLabの活動の魅力を視点を変えて伝えていきます。

DLabの取り組みは発足前の活動を含めた1年を経て、ようやくその緒についたばかりです。幸い、数多くの多様な人たちからサポートをいただき、より良い「未来」をデザインする用意が整おうとしています。ツイッターやフェイスブックも開始しましたので、楽しんでいただけるようなメッセージやコンテンツを発信します。また、楽しみながら未来を語れるワークショップやイベントの開催も予定しています。

どうぞ、今後もDLabの活動にご期待ください。

Tokyo Tech 2030

ちがう未来を、見つめていく。
役員・教職員・学生の参加によるワークショップを通じて、2030年に向けた東京工業大学のステートメント(Tokyo Tech 2030)を策定しました。

Tokyo Tech 2030

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