東工大ニュース

ゴミにならないエコなコンクリート 近藤正聡准教授がプレスセミナーで説明

易融金属繊維補強コンクリートでさらなる資源循環を目指す

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公開日:2021.04.20

東京工業大学 科学技術創成研究院 先導原子力研究所の近藤正聡准教授は、2月18日、大学などの広報担当者が作る科学技術広報研究会(External site)が主催したオンライン・プレスセミナーで「液体金属を応用した「ゴミ」にならないエコなコンクリート」と題して研究成果を発表しました。資源循環型社会を実現する易融金属繊維補強コンクリート研究の最先端を説明しました。

プレスセミナーで易融金属繊維補強コンクリートを紹介する近藤准教授

プレスセミナーで易融金属繊維補強コンクリートを紹介する近藤准教授

この研究は、リサイクル可能な新しい繊維補強コンクリートの開発と、その新素材を社会で循環させる仕組みを築くためのシステムの構築が目的です。液体金属技術を研究する近藤准教授と、コンクリート構造を専門とする環境・社会理工学院 土木・環境工学系の千々和伸浩准教授、金属化学を専門とする物質理工学院 材料系のオ・ミンホ(O Minho)助教が連携し、チームで取り組んでいます。

千々和伸浩准教授
千々和伸浩准教授

オ・ミンホ助教
オ・ミンホ助教

千々和伸浩准教授
千々和伸浩准教授

オ・ミンホ助教
オ・ミンホ助教

近藤准教授は、プレスセミナーの冒頭で、明治時代に、当時最も大きな木造の建築物であった浅草の凌雲閣(1890年竣工。高さ52メートル、12階建て)と、平成に竣工された六本木ミッドタウン(2007年竣工。高さ248メートル、54階建て)を例として取り上げ、この二つの建造物から日本におけるコンクリート建築の急速な発展と、現代社会におけるコンクリートの重要性を紹介しました。

続いて、廃コンクリートの発生量が、日本国内だけでも年間約3,000万トンもあり、現在深刻な問題として話題になっている日本国内の廃プラスチックの発生量年間約900万トンよりも多い事などから、ゴミの問題と限りある資源の有効活用を訴えました。なお、現在も廃コンクリートは回収され、分離処分の上、リサイクルされていますが、大半のリサイクル材は路盤材としてのみ使用されており、その用途は限定的です。

コンクリートの割れやすい特徴を補うために、様々な素材の繊維を分散させた繊維補強コンクリートが多くの分野で使用されていますが、リサイクルすることができません。そこで近藤准教授と千々和准教授、オ・ミンホ助教のチームは、この繊維補強コンクリートに注目し、廃材からの分離回収を容易にするために、融点の低い金属(易融金属)を繊維としてコンクリートに分散させ、補強した「易融金属繊維補強コンクリート」を提案しています。

その金属繊維には融点の低いスズ[用語1]アルミニウム[用語2]、これらの合金などを用います。分散させる易融金属の繊維の形状を工夫し、強度の検証に加え、廃コンクリートを加熱して、金属繊維を液体にして分離回収することを目指しています。

セミナーでは、新開発の易融金属繊維補強コンクリート素材の試作品の実物を紹介するとともに、実際に約30度で融解するガリウム[用語3]を用いて、金属が溶ける様子を実演しました。さらに、繊維含有率ごとの試作素材の靭性[用語4]の検証作業と、その結果に触れ、廃材から金属を分離する方法を紹介しました。

易融金属用に形状検討した試作品
易融金属繊維の形状の検討例

試作した易融金属繊維補強コンクリートの一つ
試作した易融金属繊維補強コンクリートの一つ

近藤准教授は、生活に欠かせないコンクリートだからこそ、それを資源として循環し続けるために研究を続けていることを説明し、多くの方に賛同してもらい革新に挑戦し続けていることへの感謝でプレゼンテーションを結びました。

この研究は、第2回東工大リサーチフェスティバル(Tokyo Tech Research Festival 2018、TTRF)を契機に発足した異分野融合の研究チームで実施されています。研究分野の多様性を活かした異分野融合研究を推進するために創設された東工大の「異分野融合研究支援(External site)」に採択されています。

近藤正聡准教授のコメント

近藤正聡准教授

私が10年以上にわたり研究してきた液体金属という物質は、"エネルギープラント等において熱を効率良く伝える特殊な液体"という役割以外にも、未知なる可能性を多く秘めていると信じてきました。しかし、まさか土木建築材料の分野で応用のチャンスがあるとは思いませんでした。土木分野で活躍されている千々和先生や金属化学の分野で活躍されているオ・ミンホ先生と学内の異分野融合研究のイベントを通じてチームを結成する事ができましたので、これからも社会の持続的発展を支える革新的な土木建築材料開発を続けていきたいと思います。研究分野が異なる私たち3名が出会い、研究チームを立ち上げることができたのは、研究プロジェクトの運営支援を専門とされるリサーチアドミニストレーター(URA)の協力のおかげです。井上素子URA、川口恵美子URAをはじめ、異分野融合研究を応援する方々に感謝します。

オンラインプレスセミナーの動画(抜粋版)

科学技術広報研究会とプレスセミナー

科学技術広報研究会(JACST:Japan Association of Communication for Science and Technology)は研究機関や大学など約130の機関の広報担当者約230名が参加し、所属組織の枠を超えたネットワークです。
2月18日開催のプレスセミナーは「世界の課題に立ち向かう、7つの日本の最先端研究」と題して、新型コロナウイルスから銀河宇宙まで7件のテーマを取り上げました。内外の報道機関を対象とし、日本語と英語の逐語通訳でライブ配信されました。

発表資料

用語説明

[用語1] スズ : 原子番号50番の元素で、元素記号はSn。融点の低さから加工がしやすいため、古来より食器などに使用されています。

[用語2] アルミニウム : アルミニウムは原子番号13番の元素で、元素記号はAl。1円玉硬貨や、飲料缶などに使用される生活に身近な金属です。

[用語3] ガリウム : 原子番号31の元素で、元素記号は Ga。融点が29.8度と低いため、建造物には使用していません。

[用語4] 靭性 : 建築材料において、ある程度の荷重にも耐え、変形や割れることなく、元に戻る力があること。粘り強さを示します。

お問い合わせ先

総務部 広報課

E-mail : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975

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