西森秀稔名誉教授が紫綬褒章を受章

物理学の一分野である統計力学の手法を基盤にして、磁性体の一種のスピングラスや、量子アニーリングなどの研究に取り組んで参りました。今回の受賞でこれらの成果が認められたことが、地道な努力を日夜たゆまず続けている若い研究者や学生の皆さんに励みを与えることになれば、望外の幸せです。また、卓越した研究環境を提供して下さっている東工大に対しても、心より感謝申し上げます。

純粋な科学的興味からスピングラスの理論的研究を進める中で、偶然にも、厳密解を発見しました。その成果が伝統的な物理学の枠組みを超えて、情報科学との境界領域、特に統計的推定や量子コンピューティングにおける誤り訂正などにも応用されるようになったのは想像外の展開でした。さらに、スピングラスと深く関連したニューラルネットワークの研究から着想した量子アニーリングが、実デバイスの開発やその応用などにより大きな社会的影響力を持つに至ったのは、私自身の力量をはるかに超えた出来事であり、驚くばかりです。

今後も、研究や教育などを通じて、東工大および社会の発展に微力を尽くして参ります。