東工大ニュース
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東京工業大学は、理工系の学生が芸術からインスピレーションを得て自分の創造的な表現を見つけるため、毎年2回、「アーティストとアートを体験するセミナー」を開いています。2021年前期は、5月19日に開催し、入学したばかりの学士課程1年生を含む7名の学生が参加しました。
このセミナーはアーティストの講師によるレクチャーのあと、肖像画を描く実習です。新型コロナウイルス感染予防のため、昨年に続き今年もオンラインを使った体験となりました。自画像・肖像描画用の道具を持ち合わせていない参加者のために、スケッチブック、クレヨン、鏡などの備品を学生支援センター窓口で貸出しを行いました。オンラインの特性を活かし、思い思いの場所でアートを体験したセミナーの様子をご紹介します。
アートセミナーは東工大の元非常勤講師で画家・詩人のツーゼ・マイヤー(Zuse Meyer)氏が講師として教えます。マイヤー氏はベルリン国立芸術大学出身で、現在はベルリンや東京で創作を行い、独創的なアートワークショップ、アートスクールを主催しています。
例年、受講生は、講師からテーマに沿った講義(英語・日本語の両方を使用)を受けます。その後、鉛筆のデッサン、クレヨンの描画など、各自がアート作品の制作に取り組みます。描画実習が終了すると、講師による講評という流れで進みます。
事前に講師から送られたハンドアウトをもとに、ピカソ、ゴッホ、ヤン・ファン・エイク、デューラー、レンブラント、リヒターなどの肖像画やアートに関する言葉を引用し、それぞれの作品とともに学びました。
ピカソは「創造性の主たる敵は、いわゆる良いセンス」と言っています。マイヤー氏は、「上手に描くことが目的ではなく、見えたまま、心で感じたままを描くことが大事」ということを強調しました。
今回のセミナーでは3回の描写実習を行いました。1回目の実習タスクは、「紙から手を離さず、一筆書きで自分の顔を描いてみよう」というものでした。一色のクレヨンを使い、手の進むままに一気に自画像を描き進めます。
Zoomのブレイクアウトルーム機能を使い、参加者が2人または3人でお互いの肖像を描きました。普段一緒に絵を描くことのない学生とお互いの肖像を描くことで、アートを通して知り合うことが出来ました。出来上がった絵を見せ合うと参加者も盛り上がり、講師の講評が延長してしまうこともありました。
最後の実習は、好きな色のクレヨンをすべて使って自由に自画像を描きました。レクチャーでは、心で感じたままを描くことを学んだので、参加者は見えているものだけではなく感じたまま自画像を描き、自由に何枚も自画像を描いた人もいました。
2017年から続いている、マイヤー氏のアートセミナー。今年は昨年に引き続き、オンラインでの開催となり、参加者が好きな場所から(今回は電車の中でも)レクチャーを聴くことができ、家についてから実習に参加するなど、オンラインの特性を活かしたフレキシブルなセミナーとなりました。アートを体験することで、今後の研究へのインスピレーションになったり、自分自身の幅を広げることにも繋がるなど、自分でも気づかなかった新たな自分を発見できたようです。アートセミナーを通して今まで会ったことがなかった東工大の学生と楽しく知り合うこともできました。