東工大ニュース
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東京工業大学大学院の博士後期課程学生7名が教員3名とともに、7月16日、東京工業大学附属科学技術高等学校(東京都港区)を訪問し、高校2年生約200名に自分の研究テーマや大学院の研究の進め方について授業を行いました。大学院生にとっては最先端の研究を高校生が理解できるように伝える経験であり、高校生にとっても大学院生に直接質問し、大学院レベルの研究を知る機会となり、互いに交流を深めました。
この訪問は、東工大イノベーション人材養成機構(IIDP)が大学院で開講しているキャリア科目「アカデミックリーダー教育院(ALP)研修Ⅰ(ティーチング)」※の一環で実施しました。
東京工業大学附属科学技術高等学校は、1886年に設立された、現在も唯一の国立工業系専門高校で、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校です。1学年約200名で、2年次から自身の希望や適性に応じて5つの分野(応用化学、情報システム、機械システム、電気電子、建築デザイン)に分かれます。
附属高校と東工大の間には、附属高校生が東工大の研究室を訪れたり、講義を聞く「高大連携教育」制度が続いています。「高大連携サマーチャレンジ」(大学レベルの講義を高校生が体験するイベント)やキャンパス訪問などを通して活発に交流してきましたが、新型コロナウイルス感染症拡大でそのような場が大きく制限されています。それだけに、今回の大学院生による授業は附属高校生にとっても貴重な機会となりました。
将来アカデミック分野で活躍することを希望する学生が、授業実施や教材作成などの教授法の基礎知識を学んだうえで、ティーチングの実践経験を積む授業
当日は、高校側および大学側で万全の感染対策をとり、高校生は約50人ずつ4教室に分かれました。
まず、東工大教育・国際連携本部アドミッション部門の篠﨑和夫特命教授(東工大名誉教授)が「東工大の歴史」「東工大の教育の特色」「東工大の入試」「東工大にまつわるデータ」などについて説明しました。篠﨑特命教授の話は、他の3教室にはビデオ会議システム(Zoom)を通して配信されました。
高校生からは「東工大に入ってから海外留学はできるか」「英語での授業はあるのか」「最先端の研究を行うためには、どこの学院が最も時流に乗っているか」といった質問があり、東工大への関心を深めたようです。
次に、博士後期課程学生7名と教員1名(イノベーション人材養成機構の赤木泰文特任教授・東工大名誉教授)が4教室に分かれ、自身の研究内容について高校生に説明しました。
2名の留学生も日本語を使いました。学生7名と赤木特任教授の研究テーマは次の通りです。
パワーエレクトロニクス:電力工学と電子工学の融合(赤木特任教授)
学生は事前に発表用資料を作り、キャリア科目授業で担当の河内宣之・東工大名誉教授の指導のもと、互いにアドバイスしながら説明練習を重ねました。「高校生はどの程度内容を理解してくれるだろうか」と、やや不安を抱く学生もいたようです。当日は、電気電子分野の多くの高校生が「無効電力」という専門用語を理解していることに驚くなど、手ごたえを感じていました。
続けて、学生は「理工系や東工大を選んだ理由」「理工系の研究の面白さ、楽しさ、苦しさ」「博士後期課程進学の動機」についても話しました。過去の偉人の言葉を引き合いに研究のやりがいや高校生へのアドバイスを話す学生もおり、高校生たちは身を乗り出して聞いていました。
その後の質疑応答の時間には「東工大に入って良かったことは何か」「研究テーマは、いつ、どのように決めたのか」「修士課程と博士後期課程は何が違うのか」「留学生なのに日本語がとても上手だが、どのように学んだのか」「普段の研究はひとりで行うのか」などの質問が寄せられ、学生や教員は自身の経験や考えを率直に伝えました。
全体を通してのアンケートでは、次のような感想がありました。
「具体例や画像、動画、クイズを使い、わかりやすい言葉で理解しやすかった」
「前例がないものを手探りで研究するのは、とても大変そうだと思った」
「予想どおりにいかないことも研究の面白さなのかなと感じた」
「自分が苦手だと思っていた分野の研究も面白そうで興味がわいた」
「自分のやりたい研究を楽しみながらされていることが伝わった」
「研究プロセスを経験することが、その後の人生にも活きるのだとわかった」
「目標をもつことの大切さがわかった」
「今回のお話をもとに、自分の進路を改めて考えようと思う」
「東工大の充実した研究環境、特徴のある学修制度がよくわかり、興味が増した」
「自分も東工大で研究がしたいと思ったので、勉強を頑張りたい」
「生徒自身がどのような研究がしたいかを自分でみつけられるようなコーチング企画をやってほしい」
「高校3年生でも、もう一度お話を聞きたい」
研究のやりがい、楽しさ、大変さや東工大の魅力が充分に高校生に伝わったようです。
博士後期課程学生は、学会等での発表の経験は持っているものの、「専門外の人に自分の研究内容をわかりやすく説明する」経験が少ないため、その難しさや楽しさを学ぶ場となりました。さらにティーチングスキルを高め、自身のキャリア形成に向けて努力するきっかけともなりました。
東工大の博士後期課程学生向けキャリア教育
東工大では、大学院生向けに約500科目のキャリア科目を開講しています。
なかでも、博士後期課程学生向けには、自らのキャリアプランに応じた能力を養成する科目が多く用意されています。
特に、大学や研究機関への就職を目指す学生には、英語論文執筆・発表や日本学術振興会特別研究員の申請書作成を行う実習科目、学術の位置づけやティーチングスキルを学ぶ実践科目、国内外の大学や研究機関で研修を行う科目などを提供しています。
また、企業の第一線で活躍している方にファシリテーターをお願いし、顧客や社会が抱える課題の発掘・設定・解決法を学ぶ科目、グローバルに事業を展開する企業やベンチャー企業の方々から産業界の実態や研究開発の最先端を学ぶ科目、実際に企業でインターンシップを行うことで研究・開発の一端を経験する科目などを提供しています。