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セルシュートセラピューティクス株式会社と「マルチモーダル細胞解析協働研究拠点」を設置

産学融合による創薬研究基盤の強化

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公開日:2021.10.06

東京工業大学とセルシュートセラピューティクス株式会社(以下、セルシュートセラピューティクス)は、創薬支援における新規技術開発を目的に、10月1日「マルチモーダル細胞解析協働研究拠点」を東工大すずかけ台キャンパス内に設置しました。この拠点では、拠点長である科学技術創成研究院細胞制御工学研究センター村田昌之特任教授らが、医薬品の標的となる新しい分子の探索、あるいは医薬品候補化合物のプロファイリング業務の高速化および効率化に活用できる、東工大発の細胞を基盤とした新規技術の開発とその応用展開を目指します。

(左から)益一哉学長とセルシュートセラピューティクスの田中寛代表取締役社長

(左から)益一哉学長とセルシュートセラピューティクスの田中寛代表取締役社長

近年、製薬企業における課題のひとつに、医薬品の作用点となる疾患関連性の高い標的分子の選定の難しさがあります。これまでの創薬標的分子として、疾患の原因を単一分子に求める傾向がありましたが、それでは複雑な生体分子のネットワークからなる「細胞」への薬剤の作用を捉えきることが困難です。村田拠点長の研究グループが開発したPLOM-CON(Protein Localization and Modification-based Covariation Network)解析法は、細胞染色画像ビッグデータからタンパク質の振る舞いの時間相関をもとに細胞の状態を「共変動ネットワーク(※1)」としてあらわす技術であり、医薬品の主作用・副作用の標的因子推定や機能解明につなげることのできる画期的な技術です。本技術に加え、細胞質交換(※2)による細胞レベルでの疾患状態を再現可能なセミインタクト細胞リシール技術や、蛍光などを使ったイメージング技術など、複数のモダリティー(※3)を組み合わせて駆使することで、細胞を基盤とした創薬のための新規技術開発を目指します。

セルシュートセラピューティクスは、アカデミア発の新技術を導入し、革新的な新薬の創製を実現すべく、2021年7月に誕生しました。基盤技術を支える「マルチモーダル細胞解析協働研究拠点」への期待は大きく、画期的新薬創製の鍵を握る重要な研究拠点と位置付けています。

※1

共変動ネットワーク:様々なタンパク質の量・質・局在情報をタンパク質ごとの「特徴量」という定量値として取得し、特徴量の時系列変動の相関の強さを指標に作成するタンパク質ネットワークのこと。

※2

細胞質交換:正常な細胞の細胞膜を薬剤や毒素タンパク質を用いて穿孔し、正常細胞質を流出させた細胞を作る(セミインタクト細胞という)。その細胞に、疾患モデル動物の組織などから調製した「病態細胞質」を導入することにより、病態モデル細胞を作成することができる。

※3

モダリティー:計測、方法、手段のこと。拠点名の「マルチモーダル細胞解析」とは、多様なモダリティーを用いて細胞を解析することを示す。

協働研究拠点の概要

名称

マルチモーダル細胞解析協働研究拠点

場所

東京工業大学 すずかけ台キャンパス S2棟

協働研究題目

創薬支援のための新規技術開発

研究期間

2021年10月1日~2024年9月30日

拠点長

村田昌之(東京工業大学 科学技術創成研究院 特任教授)

拠点長代理

加納ふみ(東京工業大学 科学技術創成研究院 准教授)

副拠点長

田中寛(セルシュートセラピューティクス株式会社 代表取締役)

すずかけ台キャンパス

お問い合わせ先

東京工業大学 オープンイノベーション機構

E-mail : admin@oi-p.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5180

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