東工大ニュース
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東京工業大学大学院の博士後期課程学生6名が7月14日、東京工業大学附属科学技術高等学校(以下、附属高校)にて約180名の高校2年生を対象に、自身の研究テーマや大学院での研究の進め方についての授業を行いました。附属高校と東工大の間には「高大接続・連携」のさまざまな交流があり、今回の授業は東工大イノベーション人材養成機構(IIDP)が開講しているキャリア科目「博士アカデミックティーチング」の一環として、教員も3名同行し、昨年度に続いて2回目の実施となりました。
附属高校は、1886年に設立された、唯一の国立工業系専門高校であり、また文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定を2002年度の制度開始から継続して受けている数少ない高校の1つです。1年次は理工系の基礎科目を学習し、2年次から希望や適性に応じて5つの専門分野(応用化学、情報システム、機械システム、電気電子、建築デザイン)に分かれて学習します。
当日は、情報システム分野と電気電子分野を合同クラスとし、高校生たちは4教室に分かれました。
はじめに、教育本部アドミッション部門の篠﨑和夫特命教授(名誉教授)が「東工大の教育の特色」「東工大にまつわるデータ」「オープンキャンパス」について説明しました。この説明について、アンケートでは「東工大の研究環境の素晴らしさが伝わってきた」「教員1人あたりの学生数がとても少ないので、充実した勉強ができそうだと思った」「東工大について、もっと調べてみようと思った」といった感想が寄せられました。
次に、博士後期課程学生が4教室に分かれ、自身の研究内容について高校生に説明しました。学生のうちの1名は、海外留学中だったため、オンライン(Zoom)で参加しました。
環境・社会理工学院 社会・人間科学系の黒丸愛美さん(博士後期課程2年)の「クラシックバレエを科学する」は、自身も幼い頃から現在に至るまで関わっているバレエの動きを機械的に分析するスポーツバイオメカニクスの研究についての授業でした。プロのバレエダンサー15名のジャンプの角度を動作解析ソフトでモーメント算出した結果を解析した上で、「大好きなバレエを追究する毎日は、大変なこともあるけれど、とても充実している」「自身の研究は新規性に富んだものであると思うので、頑張って研究して社会貢献したい」と話しました。
授業に参加した高校生は、「ケガをするジャンプとケガをしないジャンプの差は何か」「股関節を伸縮させて着地するジャンプは、ジャンプ力にどのような影響を与えるのか」「性別の違いによってデータに差があるか」などと質問しました。
黒丸さんは附属高校の卒業生でもあり、高校時代の経験が現在につながっていることを伝え、後輩である高校生たちにエールを送りました。
各学生は今回の授業のために、シミュレーション動画を作成したり、スライドの作成方法を工夫したり、「どのように説明したら自身の研究内容が短時間で高校生(専門外の人)に伝わるか」を真剣に考え発表練習を行い、互いに改善点を指摘しながら準備を重ねました。また、それぞれ発表内容の要点をまとめた資料を作成し、高校生に配布しました。授業の合間に、学生は、「東工大を選んだ理由」「理工系の研究の楽しさ、苦しさ」「博士後期課程進学の動機」などについても話をしました。
授業を行うことで、最先端の研究を専門外の高校生が理解できるように伝える、またその難しさや教える楽しさを学ぶとともにティーチングスキルを高める体験となりました。高校生にとっても、理系の大学院の研究を知り、大学院生と直接交流を深める貴重な機会となりました。
東工大では、大学院生向けに約600科目のキャリア科目を開講しています。
なかでも、博士後期課程学生向けには、自らのキャリアプランに応じた能力を養成する科目が多く用意されています。
特に、大学や研究機関への就職を目指す学生には、英語論文執筆・発表や日本学術振興会特別研究員の申請書作成を行う実習科目、学術の位置づけやティーチングスキルを学ぶ実践科目、国内外の大学や研究機関で研修を行う科目などを提供しています。
また、企業の第一線で活躍している方に講師をお願いし、顧客や社会が抱える課題の発掘・設定・解決法を学ぶ科目、グローバルに事業を展開する企業やベンチャー企業の方々から産業界の実態や研究開発の最先端を学ぶ科目、実際に企業でインターンシップを行うことで研究・開発の一端を経験する科目などを提供しています。