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東工大関係者6名が令和5年春の叙勲を受章

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公開日:2023.06.02

令和5年(2023年)春の叙勲において、長年に渡る教育研究の功労に対し、東京工業大学の安藤恒也栄誉教授が瑞宝重光章を、上田光宏名誉教授、圓川隆夫名誉教授、小林英男名誉教授、古屋一仁名誉教授、丸山茂徳名誉教授が瑞宝中綬章を受章しました。

安藤恒也栄誉教授 瑞宝重光章

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安藤恒也栄誉教授
安藤恒也栄誉教授

永年にわたり、物理学の教育と物性物理学分野の理論研究に携わってきました。特に、磁場中の2次元電子系の量子輸送現象と量子ホール効果、半導体超格子・量子井戸・量子細線、カーボンナノチューブ、2次元物質であるグラフェンなど、さまざまな量子ナノ構造が示す新しい電子物性について研究してまいりました。それらが認められたのかも知れません。
大学院を修了したときは就職難が始まった頃で、長期間ドイツやアメリカなど海外での研究を経験することになりました。日本でもいろいろな場所を渡り歩くことになりましたが、最後にたどり着いたのが東京工業大学です。研究室に所属した若い学生さんはそれぞれ個性的で、大変楽しく議論することができました。また、学位論文を書くときの学生さんの頑張りには驚くばかりでした。これまでで最も楽しく過ごすことができたと思います。
定年の時に事務の方から、12年後ぐらいに推薦するので、業績リストなどを準備せよと言われました。ただ実際に推薦されるとかなり大変な作業が必要なようで、東工大で研究室の最初の助手を務められた鈴浦秀勝氏に大変お世話になりました。ここで感謝したいと存じます。

上田光宏名誉教授 瑞宝中綬章

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上田光宏名誉教授
上田光宏名誉教授

波動が伝搬する媒質中に反射体が存在するとき、波はどのように伝搬するか、あるいはその波の情報より反射体の物理定数をどのように推定するかという波動伝搬解析および波動応用計測に関する研究を進めてきました。これに関しては従来有限要素法などの数値モデルを用いた手法が多く提案されていますが、物理モデルを中心とした手法を開発してきました。なかでも近代物理学創生の当初より未解決な問題として残されてきた波の反射体による回折・散乱問題に対応するために、反射体により形成された鏡像と鏡像、あるいは鏡像と実像の間に見掛けの不連続が形成され、この不連続線を介して波が伝搬されるという見掛けの不連続原理を提案し、無回折くさびにこの原理を適用することにより、任意の剛体くさびの遠方漸近解が得られ、これは厳密解より得られものに完全に一致しており、この原理の正当性を示唆するものと注目されています。このようにどのように役立つかわからない基礎研究を評価していただいたことに御礼申し上げるとともに、これまで支えてくださった多くの方々に深く感謝申し上げます。

圓川隆夫名誉教授 瑞宝中綬章

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圓川隆夫名誉教授
圓川隆夫名誉教授

今回の受章、まず長年励ましをいただいた東工大教職員や研究室の学生の皆さまにお礼を申し上げたい。
実学ともいえる経営工学の分野で学術論文を書くことに当初苦労したが、多くの留学生を抱えていたことから行った研究に、消費者や企業経営のエスノグラフィックな大規模な調査がある。そのひとつが日米独仏の先進4カ国、これに中国、タイ、インドネシア、ボリビアの新興国を対象とした15の製品の顧客満足度と消費者文化の測定・比較である。その結果本来高品質のはずの日本製品を使用している日本の消費者の顧客満足度が何と一番低い、すなわち厳しいことに驚いた。これは日本の消費者が"モノ"や"時間"に対する不確実性回避傾向が著しく高いことに起因し、工業化社会では、"厳しい消費者が日本の品質を鍛えた"という好循環がうまく機能した。しかし21世紀になり、消費者の視点が"モノ"から"コト"に移行し高品質=高顧客価値が成立しなくなってくると、過度の正確さ・清潔さ・新鮮さを追い求めるガラパゴス化に陥り、今や"安い日本"である。
失われた30年から脱するには、今こそ"コト"の顧客価値創造に優れた人材の育成が喫緊に求められているのではないか。

小林英男名誉教授 瑞宝中綬章

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小林英男名誉教授
小林英男名誉教授

東京工業大学において40年の間に、先輩、同輩、後輩、そして何よりも学生に恵まれ、教育研究の道を全うすることができました。瑞宝中綬章の受章は、その証です。改めて、本学と関係者の皆様に、感謝申し上げます。
私の専門分野は、機械工学です。本学の機械系に、機械宇宙学科、機械宇宙システム専攻を誕生させることができました。現在、機械宇宙の名称は、多くの大学で踏襲されています。
私の教育研究分野は、材料力学です。材料力学の分野に、新しく破壊力学という講義を本学で開講しました。現在、破壊力学の講義は、多くの大学に普及しています。
私は教育者であって、研究者ではなく、研究は教育の手段であることを自覚し、実践してきました。しかし、破壊力学の研究と、材料力学を機械工学の枠を超えた工学全般に展開した学問的業績は、著書、学術論文、技術解説の質と量によって、国の内外の多くの学協会で高い評価を得ています。この学術論文のすべてが、指導した学生との共著です。
さらに、国の審議会、多くの学協会に参画し、技術規格の制定、破壊事故解析、リスクベース工学の普及によって、安心で安全な社会の構築に貢献できたことも、広い意味での教育研究の成果で、望外の喜びです。ありがとうございました。

古屋一仁名誉教授 瑞宝中綬章

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古屋一仁名誉教授
古屋一仁名誉教授

東京工業大学には学部入学から博士修了まで9年、助手から教授まで36年、実に45年の長きにわたりお世話になりました。教育研究では光ファイバ通信の実用を見通すまでと、その後、量子現象のデバイス応用開拓を目指しました。この間に在外研究員としてベル研究所、光エレクトロニクス指導員としてインドネシアジャカルタ、赴日留学生指導員として中国長春に滞在しました。学内で評議員、量子効果エレクトロニクス研究センター長を務めました。遂に転出し東京工業高等専門学校校長を6年務めました。その間に全国高専連合会会長、国立高専機構理事を兼務しました。現在、全日本学生児童発明くふう展審査委員長などを務めております。
最先端分野での教育研究とティーンエイジャーへの最新の技術者教育およびその運営に、終始面白がって、携わらせていただきました。東京工業大学、高専の皆様から温かいご指導ご支援をいただきましたことに大変感謝しております。

丸山茂徳名誉教授 瑞宝中綬章

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丸山茂徳名誉教授
丸山茂徳名誉教授

このたびの受章に際し、わたしの研究を支えてくださった数多くの方々にお礼を申し上げます。東工大で研究を実施するにあたり、場と機会を与えてくださった皆さま方、そして、共に研究に参加してくださった研究仲間に感謝します。
わたしのもともとの研究は地域地質の調査から始まりましたが、1994年に開始された全地球史解読研究を機に地球の起源と進化、そして、そこで育まれた生命の起源と進化の研究にまで発展しました。いつ、どこで、どのようにして生命惑星・地球が誕生し、その惑星上でどのようにして原始生命が誕生したのか。さらに、ヒトに至る生命進化が宇宙と地球のシステム変動によってどう進んだのかを、検証可能な科学研究として推進しました。2012年に設立された地球生命研究所では、地球科学からゲノム科学に至る超学際融合研究を牽引し、原始生命誕生モデルを構築することができました。また、生命進化のメカニズムについて、ポストダーウィン進化論というべきモデル(作業仮説)も構築できました。これまでの研究を通して、地球と生命の起源と進化の謎を解く役割を果たしたことはわたしの大きな喜びであり、この研究を推し進めるために惜しみない支援をしてくださった方々とともに本章を受章するものであると思っています。

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