東工大ニュース

学生による国際交流プログラム「8th ASCENT」開催報告

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公開日:2017.11.01

8月19日から28日までの10日間にわたり、東工大を拠点に国際交流活動を行っている東京工業大学 国際交流学生会SAGE(以下、SAGE)が、第8回アジア理工系学生連携促進プログラム「8th ASCENT」を開催しました。本プログラムには、日本を含むアジア圏7つの国と地域から学生25名が参加しました。

ASCENT参加者の集合写真

ASCENT参加者の集合写真

ASCENTの概要

アジア理工系学生連携促進プログラムASCENTは、Asian Students Collaboration Encouragement Program in Technologyの略称であり、SAGEが企画・運営を行う10日間の国際交流プログラムです。アジア圏の理工系大学に所属する学生間のネットワーク構築を目的としています。

本プログラムでは、科学技術に関連するテーマを開催年ごとに設定します。参加者はテーマに関連した研究や事業を行っている民間企業や研究所、官公庁、学内研究室を訪問することで、テーマに関して理解を深め、ビジネスにおける応用例を学びます。さらに、これらの訪問を基にして、近年アジア各国が抱える問題に対する解決策を少人数のグループで話し合い、最終日に報告会を行います。各グループはさまざまな国籍のメンバーで構成されるので、文化や習慣の違いに困惑することがあります。しかし、自分たちが見つけた問題に対して議論を交わし、解決策を共に創りあげる経験をすることによって、学生間の強固なネットワークを構築することができます。また、学術的な活動を軸に据える一方、文化交流会や日本文化研修なども行います。それらの企画を通して異文化交流や学生間の交流を促進させ、本プログラムが学術的な側面だけではなく総合的な体験の場となることを目指しています。

最優秀賞獲得チーム

最優秀賞獲得チーム

8th ASCENTの開催

8th ASCENTは8月に10日間にわたって開催しました。今回のテーマは「The Dawn of IoT~IoT時代の幕開け~」です。近年、市場規模が拡大し続けているIoT(Internet of Things)技術に関して理解を深め、どのようにIoT技術を用いればアジア諸国が抱える複雑な問題を解決できるのか議論しました。本プログラムには、中国、台湾、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、日本の7つの国と地域から合計25名が参加しました。参加者は基調講演や企業見学、ディスカッションなどを経て、最終報告会ではIoT技術を用いた新しい製品やサービスを提案しました。

スケジュール

8月19日
海外学生到着、歓迎会
8月20日
開会式、事前学習報告会
8月21日
特別講義、企業見学(横河電機株式会社)
8月22日
文化交流会、研究室見学(すずかけ台キャンパス 益・伊藤研究室)
8月23日
基調講演(経済産業省)、中間報告会
8月24日
研究説明(大岡山キャンパス 井村研究室)、企業見学(株式会社小松製作所)
8月25日
企業見学(NTT コミュニケーション科学基礎研究所 スポーツ脳科学プロジェクト)
8月26日
ディスカッション
8月27日
日本文化研修
8月28日
最終報告会、閉会式、送別会

参加国・参加大学

  • 日本:東京工業大学、一橋大学
  • 中国:清華大学
  • 台湾:国立台湾科技大学
  • インドネシア:バンドン工科大学
  • タイ:チュラーロンコーン大学、タンマサート大学
  • フィリピン:デラサール大学
  • ベトナム:ハノイ工科大学

プログラム内容

基調講演・企業見学・研究室見学

基調講演では、経済産業省を訪問し、IoTの概要や現在行っている政策、国際的な協力体制などについて学びました。企業見学では、横河電機株式会社、株式会社小松製作所、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の3社を見学しました。IoTに関して各企業で行われている事業の説明だけでなく、プラントで用いられる計測機器の見学やセミオートマチック運転制御システムが搭載された建機の運転体験、運動計測に用いられるシミュレーター体験などを行いました。研究室見学では、本学 工学院電気電子系の益・伊藤研究室への訪問と、工学院 システム制御系の井村順一教授による講演を行いました。農業分野におけるIoTの活用方法や、スマートグリッドでの分散型電力制御について学ぶことができました。

ドローンによる計測デモ(小松製作所にて)

ドローンによる計測デモ(小松製作所にて)

特別講義

本学 環境・社会理工学院 融合理工学系のホープ・トム准教授による、魅力的なプレゼンテーションに関する特別講義も行いました。参加者は聞き手を引きつける話し方やプレゼンテーションの構成、注意点などに関する講義を受けました。その後、プレゼンテーションの練習として「IoT分野における各国の違い」というテーマについてミニ発表を行いました。この特別講義で学んだことが中間報告や最終報告に活かされたようです。

ホープ准教授によるプレゼンテーション特別講義

ホープ准教授によるプレゼンテーション特別講義

ディスカッション・中間報告会・最終報告会

参加者25名は4つのグループに分かれ、アジア諸国が抱える問題を1つ取り上げ、それに対する解決策を話し合います。企業見学や研究室見学などで学んだことを参考にしつつ、今までにない新しい製品やサービスを考えます。各グループは国籍や専門分野が異なる学生で構成されることでさまざまな意見が飛び交い、非常に白熱したディスカッションとなりました。

5日目に行われた中間報告会では、日本企業のIoT活用事例に関する記事に対する考察とディスカッションの進捗状況について報告してもらいました。他の参加者やSAGEメンバーからフィードバックをもらい、後半のディスカッションに活かしてもらうことが狙いです。

最終日の最終報告会では、10日間にわたる活動のまとめとして、各グループで考えた新しいIoT活用方法の提案をしました。各グループで取り上げた問題はさまざまであり、その問題に対する解決策はオリジナリティ溢れるものとなっていました。ただ単に新しい製品やサービスを提案するだけでなく、提携企業や運用リスクなどの実現可能性についても言及されており、どのグループも中身が非常に濃い発表となりました。

特に、最優秀賞を獲得したチームの発表では、ウェアラブル端末を用いて子供の健康状態を確認するサービスが提案されました。

最終報告会

最終報告会

最終報告会

事前学習報告会・文化交流会・日本文化研修

本プログラムは、学術的な活動だけでなく、アジア各国について学ぶ企画も行います。事前学習報告会では、各国の参加者が自国に関する文化的・社会的情報と自国のIoT関連企業について紹介します。文化交流会では、各国の文化を紹介し、それらを参加者全員で体験しました。各国の有名なお菓子を食べたり、伝統的なダンスや習字などに挑戦したりするなど、普段の生活では体験しない他国の文化に触れることができました。予定していた時間では物足りないくらい非常に盛り上がった交流会となりました。プログラムの終盤には、日本文化研修として国内の文化的に有名な観光地へ出かけます。今年は埼玉県の川越を訪れ、蔵造りの町並みや、伝統的な川越まつりで用いられる山車の展示などを楽しみました。海外学生はもちろん、日本人学生にとっても日本文化を知る良い機会になりました。

文化交流会

文化交流会

文化交流会

日本文化研修(川越にて)

日本文化研修(川越にて)

SAGE代表総括

表彰式にて(右側が釜坂さん)
表彰式にて(右側が釜坂さん)

釜坂みおさん(工学部 高分子工学科3年)

私はこれまで2年半の間SAGEに在籍し、今年は代表として団体全体をまとめつつ、7thの経験を活かし8th ASCENTの内容決定にも深く関わりました。10日間の本番に対し1年以上にわたってメンバーと共に調査や話し合いを重ね、より充実したプログラムの開催に向け尽力しました。プログラム内容を洗練させ、参加者選考や資金獲得など多岐にわたる準備を進めることは、想像以上に大変なことでした。最終的に、国際交流に対して熱意があり非常に信頼できるメンバーと、1つのプログラムを完成させることが出来た時は、安堵感と達成感を感じました。

今年は初めて台湾からの参加学生を迎えたり官公庁を訪問したりと、年々プログラムの内容は多様性を高めています。海外参加者のほとんどにとって、ASCENTが初めて日本に来る機会でしたが、過去の参加者の中には、現在東工大に在籍している留学生や日本での就労者もいます。ASCENTが参加者にとって、ただの留学経験でなく人生における転機となる大変貴重な10日間であると確信し、開催意義を感じています。

国際交流の魅力は、さまざまな背景を持った人々が交流することで、新たな価値観や発見が生まれることだと思います。SAGEは今後も東工大生が気軽に国際交流を出来る機会を設け、メンバー・参加者共に成長していけるような団体でありたいです。

9th ASCENTについて

次回のASCENTは2019年春に開催予定です。アジア諸国が抱える問題や社会現象などの時事に基づいてテーマを選定し、講演や見学先企業を順次決定します。9th ASCENTの応募は、海外大学生向けは来年8月頃、東工大生向けには9月頃に開始する予定です。

ASCENTは東工大生はもちろん、アジアの大学に属する学士・修士・博士後期課程の学生であれば、誰でも応募することが出来ます。プログラムの詳細や応募方法などはSAGEのウェブサイトや各種SNSを通じて発信します。

東工大生の国際的な活動を促進するASCENTを今後も開催していきます。

お問い合わせ先

東京工業大学 国際交流学生会SAGE

E-mail : sage.tokyo.tech@gmail.com

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