研究

東工大ニュース

顔のマッサージにより皮膚血流量が増加

長期のマッサージで血管拡張能が変容することを発見

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2018.11.09

要点

  • 5分間の頬マッサージで、頬の皮膚血流量が10分間以上にわたって増加
  • 5週間、毎日5分以上の頬マッサージで、血流増加反応が変容
  • マッサージを用いた皮膚血流や血管機能の改善手段の開発につながる成果

概要

東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院の林直亨(はやし・なおゆき)教授らの研究グループは、マッサージローラーで右頬を5分間マッサージすると10分間以上にわたって、右頬の皮膚血流量が約20%増加することを発見した。また、5週間にわたって毎日5分以上マッサージすると、その部位のマッサージ刺激に伴う血流増加反応が低下した。一方、温熱刺激に対する血管拡張反応が増加する傾向を示した。マッサージ刺激が血流を増加させ、マッサージを繰り返すことによって、顔の血流応答が変化することが示された。

この成果は、マッサージが皮膚血流の改善に効果的であることを示唆するものであり、マッサージを用いた皮膚血流や血管機能の改善の手段の開発に役立つものとして期待される。

本研究は10月26日(日本時間)に欧州の補完医療専門誌「Complementary Therapies in Medicine誌」に掲載された。

研究成果

短期研究:被験者12名(平均年齢22歳)に安静測定後、市販の美容マッサージローラーで右頬のみに5分間マッサージを行わせ、その後10分間の安静を保たせた。マッサージは各自好みの強さ、速さで行った。何も行わずに安静を5分間保つ対照試行を30分以上の間隔をあけて行った。マッサージ前とマッサージ後10分間にわたって、レーザースペックル法[用語1]を用いて顔の血流を計測した。

その結果、マッサージ後10分間にわたり、安静値よりも平均20%の血流増加が認められた。マッサージをしない左頬および対照試行では血流の変化は観察されなかった。

長期研究:被験者14名(平均年齢36歳)に5週間にわたって毎日5分以上右頬にマッサージを、各自好みの強さ速さで行わせた。期間前後に血流反応を評価するため、3分間のマッサージ刺激と、1分間の40 ℃の温熱刺激に対する血流の変化量を計測した。被験者は5週間の累計で39回、平均236 分のマッサージを行った。右頬では、マッサージ刺激に伴う血流増加反応がマッサージ期間前の16%から期間後の6%へ有意に低下した。一方、温熱刺激に対する血管拡張反応は7%から20%へ増加する傾向を示した。温熱刺激に対する血流増加反応には、対照群では効果がなく、マッサージ群のみで効果があったものの、統計的には十分な効果(交互作用)がなかったことから、可能性を示唆するにとどまった。

頬へ5分程度のマッサージ刺激が血流を増加させることが明らかになった。さらに、このマッサージを繰り返すことによって、マッサージ刺激に対しては血管反応に慣れが、温熱の刺激に対しては血管反応性の増加が起こる可能性が示唆された。

5分間のマッサージ1分後の顔面血流の測定例。刺激前(左列)に比較して、対照試行では血流が変化していない一方、マッサージ試行(右下)では白枠で囲んだ右頬部分の血流が増加していることが分かる(血流が高くなるにつれ、青から緑、赤で表示されている)
図1.
5分間のマッサージ1分後の顔面血流の測定例。刺激前(左列)に比較して、対照試行では血流が変化していない一方、マッサージ試行(右下)では白枠で囲んだ右頬部分の血流が増加していることが分かる(血流が高くなるにつれ、青から緑、赤で表示されている)
5週間のマッサージ(右頬)あるいは対照(左頬)の前後における、3分間のマッサージ刺激(右)および1分間の温熱刺激(40 ℃)に対する血流の増加率を示した。マッサージを行った右頬では、マッサージ刺激に対する血流増加が有意に低下し、温熱刺激に対する血流増加反応が増加する傾向があった。何もしていない左頬では増加率に変化はみられなかった。
図2.
5週間のマッサージ(右頬)あるいは対照(左頬)の前後における、3分間のマッサージ刺激(右)および1分間の温熱刺激(40 ℃)に対する血流の増加率を示した。マッサージを行った右頬では、マッサージ刺激に対する血流増加が有意に低下し、温熱刺激に対する血流増加反応が増加する傾向があった。何もしていない左頬では増加率に変化はみられなかった。
*:介入前に比べて有意差 #:対照側に比べて有意差

背景

美容マッサージローラーは多くの者が利用している。ところが、その効果について定量的な論拠はなかった。先行研究(Franklinら Arch. Phys. Med. Rehabil. 95 (2014) 1127–1134, 2014)では、運動後の手によるマッサージの効果が血管反応に影響すると報告されているが、安静時の比較的刺激の弱いマッサージの効果は予想できなかった。

機械的な刺激が血管壁に力を加えることで、血管内皮からは一酸化窒素が発生する(Paniaguaら Circulation. 103, 1752–1758, 2001)。一酸化窒素は血管を拡張させる。したがって、マッサージのような機械的な刺激によっても血管が拡張し、その結果、血流が増加することが予想された。

今後の展開

血流の増加は酸素や栄養素の補給、二酸化炭素や代謝産物の除去に効果的であることから、マッサージには何らかの好ましい効果があることが推察される。また、長期のマッサージによって血管機能が変化したことから、血流や血管反応の改善手段の開発に役立つものとして期待される。

用語説明

[用語1] レーザースペックル法 : 光の干渉により得られえる斑点模様の変化する速さが、測定対象の表面にある物体の移動速度と関連することを用いた非接触の血流測定法。

論文情報

掲載誌 :
Complementary Therapies in Medicine 41: 271-276, 2018.
論文タイトル :
Short- and long-term effects of using a facial massage roller on facial skin blood flow and vascular reactivity
著者 :
A Miyaji, K Sugimori, N Hayashi
DOI :

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