東工大ニュース
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6月4日から6月14日まで大岡山キャンパスで、本学の協定校である米国のジョージア工科大学より講師を招き、昨年度に引き続き「グローバルリーダーシップ実践-Global Leadership Practice」の集中講義(90分×8回)を開講しました。本講義ではリーダーシップ能力を育成するワークショップや、事例研究、ディスカッション、自己分析等を通じて、グローバルな環境において自身の価値や目的を実現するためのリーダーシップに必要な要素について学ぶことを目的としています。
「グローバルリーダーシップ実践」は本学の修士課程学生向けの授業として昨年度より開講され、今年度が2回目です。グローバル理工人育成コース上級の選択必修科目ともなっています。
合計10名の受講生の出身国は日本7名、イタリア1名、ウクライナ1名、チュニジア1名でした。2名のティーチングアシスタント(TA)はブラジルとインドネシアで、講師はアメリカ人2名、ゲストスピーカーはベトナム出身の本学卒業生です。日本人学生は2019年3月にジョージア工科大学にて実施したリーダーシッププログラムの参加者や留学経験者のほか、本学協定校への留学が決まっている学生や、近い将来留学を予定している学生が多く、留学生や講師に対し活発に話しかけている姿が印象的でした。
本講義は、ジョージア工科大学で実践されているリーダーシップの講義を基に、昨年度1回目の講義参加学生からのフィードバックを反映し講義内容を発展させたものです。
アメリカ型の授業では、入念な予習と復習を基に、授業では積極的に発言することが求められます。本講義も、講義開始以前から、リーダーシップに関する教科書を一冊読みこなし、その上で自身のリーダーシップやチームワークに関するブログを毎回アップロードするという多くの準備と課題が課されました。また、学生には講義に先んじてオリエンテーションを行い、計8回の講義に対し各回の講義内容のポイントや課題を1冊にまとめた英文のマニュアルを配布しました。マニュアルを事前に読んでおくことで、日本人学生もグループワーク・ディスカッションを効果的に行うことができました。講義はすべて英語で行われましたが、教室内を歩いて様々な学生と話をしたり、100枚のカードを用いたグループワーク、各国の挨拶の仕方をロールプレイングしたりと、笑顔が多いリラックスした雰囲気の中、講義が展開されていきました。
講義ではまずFamily Tree(ファミリー・ツリー)というテーマで自身の本質を振り返り、自身の長所・価値観・適正能力等の気づきを通じリーダーシップに必要な能力を養成する方法を主体的に学びました。
次に、チームワークについて学習しました。本セッションでは目標実現のためにはメンバーの長所や強みを生かし、協力して取り組むことが不可欠である、という前提のもと、異文化および分野横断的な環境の中でグループをまとめ、課題解決、調整する能力を身に付ける取り組みを行います。各チームは提供された材料全てを用いて画期的な設備を作ることに挑戦し、共通のゴールを達成するために必要なリーダーシップの方法を学びました。
また、各国のリーダーシップのスタイル(平等主義、階級主義)について、その国の歴史、文化、習慣も前提とした違いについても学びました。組織内での意思決定の方法は国によって大きく異なっており、各国のリーダーシップスタイルの特徴と、その中で起こりうる意識的あるいは無意識的な偏見への対処法などについて学びました。
チームビルディングのセッションでは、グーグルジャパンに勤務する本学卒業生のミン・グエン(Minh Nguyen)氏による講義を受けました。受講生たちはミン氏の実体験に基づく日本企業とグローバル企業の比較や、様々な環境の中で自分の能力を活かし目標を実現するための沢山のヒントを伺い、自身の将来の方向性を考える参考となりました。
最終日には3グループが、それぞれ世界各国のリーダー2名を選んで事例研究を行い、相違点やリーダーシップに必要な要素について分析を発表しました。ここでも履修生の多様な国籍を活かし、ソフトバンクのCEOであり日本を代表する実業家の孫正義さん、イタリアの物理学者であるファビオラ・ジャノッティ(Fabiola Gianotti)さん、日本人女性宇宙飛行士の山崎直子さん、トロント大学の心理学の教授でありベストセラー作家のジョーダン・ピーターソン(Jordan Peterson)さん、チュニジアの女性起業家・人権擁護活動家のアミラ・ヤヒアウイ(Amira Yahyaoui)さんといったリーダーを取り上げ、社会変革をもたらす方法について共有しました。
学生は最後に学んだことを今後どのように自分の将来に適用していくかを具体的に示しメンバーと共有しました。講師はこの集中講義後も彼らのリーダーシップ実践について個別にフォローアップをしていきます。
学生にとっては毎回の授業が刺激的でチャレンジを積み重ね、大きく成長につながった2週間となりました。
グローバル理工人育成コースでは引き続き、ジョージア工科大学に約2週間訪問しリーダーシップについて学ぶ短期留学プログラムとして「ジョージア工科大学リーダーシッププログラム」も2020年3月に開催予定です。今後も世界の企業、大学、研究所、国際機関など、様々な分野で活躍できる科学者・エンジニア・技術者=「グローバル理工人」を育成するためのカリキュラムを企画・提供していきます。