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東工大DLabが「未来社会像」と「東京工業大学未来年表」の発表イベントを開催

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公開日:2020.05.27

東京工業大学未来社会DESIGN機構(以下、DLab)は、人々が望む未来社会とは何かを、社会の一員として、学内外のさまざまな方と広く議論しながらデザインしていくための組織です。2020年1月20日、DLabは「未来社会像」と「東京工業大学未来年表」を発表しました。

2020年度はこれまでの活動をさらに推進するとともに、「ありたい未来」の実現に向けて取り組んでいきます。

DLabニュース

2020年1月20日、DLabのおよそ1年半にわたる活動から生まれた「未来社会像」と「東京工業大学未来年表」の発表イベントが、東京・渋谷スクランブルスクエアの「渋谷キューズ」で開催されました。当日は、高校生、大学生、企業・官公庁の方々など100名を超える参加者が集まり、トークセッションやワークショップも行われました。

発表イベントの詳細については、以下の記事をご覧ください。

DLab構成員に聞く「DLabってどんなところ?」

人々が望む未来社会像を多様な視点で議論していくため、DLabには学内外から様々な経歴を持つ構成員が集まっています。なぜDLabの活動に参加することになったのか、今後の活動にどのような期待を持っているのかインタビューしました。構成員の紹介とともに、それぞれが思い描くDLabの姿をご紹介します。(肩書はインタビュー当時のもの)

未来社会DESIGNからACTIONへ:東工大の「行動力」でDLabの活動を一巡させたい

梶川裕矢

DLab Team Imagine(チーム イマジン)所属 梶川裕矢outer
東京工業大学 環境・社会理工学院 イノベーション科学系/技術経営専門職学位課程outer 教授

1999年東京大学 工学部 化学システム工学科卒業、2001年東京大学 大学院工学系研究科 修士課程修了、2004年東京大学 大学院工学系研究科 博士後期課程修了。2007年東京大学 大学院工学系研究科 特任講師などを経て、2012年東京工業大学 大学院イノベーションマネジメント研究科 准教授。2016年 東京工業大学 環境・社会理工学院 准教授、2017年より現職。

梶川教授の専門は技術経営学や科学技術政策などで、データ分析や知識工学を用いてイノベーションを創出するための方法論などを研究しています。東工大では主に技術経営専門職学位課程の講義を担当し、研究室に在籍する大学院生のほとんどが、企業での研究開発や事業企画の第一線を担う社会人です。DLabでは創設メンバーとして組織の立ち上げから関わってきました。そんなDLabの生みの親の一人とも言える梶川教授に、DLabの創設や今後の活動への思いについて聞きました。

私はDLabの立ち上げ当初からメンバーとして活動に関わらせてもらってきました。東工大の組織であるDLabが未来社会のあり方を世に提示していくのであれば、学術機関としての知見と洞察に裏づけられた、魅力的かつ説得力のあるものにする必要があります。そのような未来社会像を世に問うていく一方で、東工大は理工系総合大学として全学の方向性が比較的揃いやすく、何より提示した未来社会像を実現するのに欠かせない技術力もある。そうした強みをDLabの活動のなかでも生かしていければと考えてきました。

ここ20年来、世界の学術界では「社会に貢献することは大学の責務」という考え方が強くなっています。もちろん、「自分の選んだ専門分野をとことん突き詰めるなかで、新たな知を発見する」という従来型の研究も重要であることに変わりはないのですが、1割くらいは「人々が望む未来社会をつくるには、どんな技術が必要か」という発想で、新分野を切り開いていく研究があってもいい。そうした研究を大学発で生み出していくことは大学の社会的使命であり、東工大のプレゼンスをグローバルに高めることにもつながっていくはずです。

私は、DLabの活動は、「社会とともに人々が望む未来社会を考え、そこで必要となる技術や政策を検討し、それらを具現化して社会に貢献する」というところまでがワンセットだと考えています。DLabは2020年1月、およそ1年半にわたる活動を経て、未来社会を俯瞰するためのツールとなる「東工大未来年表」と最初の「未来社会像」を発表しました。これは大きな区切りの一つではありますが、社会に貢献するという意味合いでは、本当のチャレンジはむしろここからだと言えるでしょう。

未来社会像の実現や社会への波及効果を考えれば、企業との協力関係もより深めていく必要がありますし、同様の活動を行っている外部組織と連携してもいい。もちろん、東工大内部でも関連した研究開発や実証を進めていくことが大切で、この2020年度からは、未来社会像の実現に繋がる研究などを公募して支援するプロジェクトが開始されます。社会の皆さんとありたい未来を考え、それを具現化して社会に貢献し、さらに多くの方に参加してもらい、大学自身もコミットしてプロジェクト化し、DLabの活動を推進することで、未来社会像の実現に向けて小さくとも確かな一歩を踏み出す。未来社会像を実現する中で社会的評価を受けたり、活動の輪が広がったり、そういったサイクルをどんどん回すためにも、まずはDLabの活動をDESIGNからACTION、REALIZATIONへと一巡させられればと思います。

発想法の探究―未来社会のデザインのために―

鈴木悠太

DLab Buzz Session(バズ セッション)所属 鈴木悠太outer
東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院outer 准教授

東京大学 教育学部卒業、東京大学 大学院教育学研究科 修士課程修了、東京大学 大学院教育学研究科 博士課程修了 博士(教育学)。東京大学 特任講師を経て、2017年より現職。主著に『教師の「専門家共同体」の形成と展開―アメリカ学校改革研究の系譜―』(2018年、勁草書房)(2019年日本学校教育学会賞)。

鈴木准教授は、教育学、学校改革研究を専門とし、「学校現場の声を聴き、学校現場から学ぶ」ことを大切にしながら、学校の内側からの改革の発展と支援について研究を進めています。担当する講義は、教職課程の授業や大学院の授業のほかに、東工大の教養教育のコア科目である、「東工大立志プロジェクト」や「教養卒論」の実施にも責任をもって取り組んでいる鈴木准教授に、DLabへの参加のきっかけや活動についての抱負を聞きました。

私がDlabに加わったのは、2017年度に学内で行われた2つの大規模なワークショップへの参加がきっかけとなりました。一つは、学内の理工系・人文社会科学系の研究者が集まって次世代の研究のあり方について話し合うものでした。もう一つは、学生、職員、教員、卒業生の方々が一堂に会して、東工大のより良い未来について話し合うものでした。これらは私にとって東工大の未来を考える上でとても良い機会となりました。特に、大学を、それを取り巻く外側の社会に向けて開くことと、大学の内側を開いていくことの双方の意義を感じました。大学を外側にも内側にも開く、こうした地道な取り組みを継続していくことが、10年、20年先のより良い東工大を準備することだと思いました。そこで、ワークショップの最後の発表の際に、参加者全員に向けて「こうした開かれた対話の機会を継続的に作っていきましょう」と率直な感想を述べたところ、それがきっかけとなり翌年に発足するDLabのメンバーとして声をかけて頂くことになりました。

未来社会をデザインするという営みを東工大がリードして、高校生、学生、職員、教員、そして市民の方々と幅広く対話を重ねながら実行していくというプロセスは、DLabの特徴の一つだと思います。私はDLabの中のBuzz Sessionというチームに所属し、そうした対話の機会をさざ波のように継続して作り出していくことに関わっています。

私がDLabに関わるにあたって着想したことは、かつて東工大の文化人類学の教員であった川喜田二郎先生が開発された「発想法」のアイディアを生かしたいというものでした。川喜田先生はその名が由来の「KJ法」がよく知られており、ワークショップが発展している現代においてKJ法は再び脚光を浴びていると思います。ただし、KJ法は、単に情報を整理したり、ワークショップを進めたりするための手段などではなく、その本質は、川喜田先生も繰り返し述べていた通り「発想法」にあります。つまり、今までに考えついたことのない新しいアイディアを「発想」するのがKJ法なのであり、それはとても困難な作業である、ということです。東工大のDLabにおいて未来社会をデザインする営みにおいて、川喜田先生の「発想法」から今一度私たちが学ぶことは多いと思っています。

私の専門である教育学という学問は、学校のことだけを考えているのではなく、より良い未来の社会を建設するために、学校や教育という営みがあるという視点を大切にしていると思います。その社会のデザインにおいて、「民主主義」は大切な概念であると思います。すべての人々がその社会の主人公である、という社会の在り方を示す概念です。このことについてもDLabの活動の中で考えていきたいことです。

現在、DLabの理念や活動は、東工大の教育においても生かされ始めています。直接的には、DLabのメンバーが担当する学士課程向け授業「未来社会デザイン実践」や大学院課程向け授業「未来社会デザイン論」があります。また、今後は、東工大の教育の伝統でもある教養教育においてもDLabの理念や活動が生かされていくと思います。全東工大生の必修授業である学士課程1年目の「東工大立志プロジェクト」は、まさに自身の志を、実現したい未来社会において構想する授業ですし、5000字から10000字の論文を執筆する学士課程3年目の「教養卒論」では、自らの探究したい主題を未来社会の構想の中で設定し論じるからです。今後も、未来の社会をデザインするという発想が、東工大の研究や教育をより良くし、社会の発展につながっていく道を探っていきたいと思います。

未来を担う当事者とともに未来社会を考える

栁瀬博一

DLab Team Create(チーム クリエイト)所属 栁瀬博一outer
東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院outer 教授

1988年慶應義塾大学 経済学部卒業。日経マグロウヒル社(現・日経BP社)に入社し、雑誌「日経ビジネス」編集部などで記者や編集者として活動した後、出版局で書籍編集に従事。 日経ビジネスオンラインの事業構築にも参画し、2008年より同媒体のプロデューサー、2012年より「日経ビジネス」「日経ビジネス オンライン」双方のチーフ企画プロデューサーを務める。2018年より現職。

栁瀬教授はメディアの第一線での30年近いキャリアをもとに、メディア論を研究しています。大学では「メディア論」のほか、「教養特論:未来社会デザイン入門」や、社会貢献の視点から東工大での学びを見つめ直す「教養卒論」などの科目も担当し、DLabでは未来社会像を強い説得力を持つように仕上げるTeam Createに所属しながら、社会と広く対話を行うBuzz Sessionの活動にも関わってきました。そんな栁瀬教授に、DLabの特色などを聞きました。

私は2018年4月に東工大に着任するまでは、ずっとメディアの世界で仕事をしてきました。大学ではその経験をもとにメディア論を教えながら、各種対外コミュニケーション活動にも関わっており、DLabにもその一環で参加することになりました。

現在、政府、シンクタンク、企業など、さまざまな組織で未来社会について考える取り組みが進められています。そのなかで、大学の組織であるDLabならではの特徴を挙げるとすれば、「“未来社会”をつくる当事者が関わっている」ことだと言えるでしょう。つまり、高度な科学技術力をもって次世代の社会づくりを担っていこうとする学生が、未来の社会を考える場に加わっているということです。

DLabではワークショップやイベントを通じ、学内外の幅広い方と未来社会のあり方を考えています。理系の学生に対しては、一般に「口下手」や「内気」というイメージを持つ人が少なくないように思うのですが、東工大生は実際に対話の場を用意するとよく話す人が多い。しかも高校生、OB・OG、メディアの人など自分とは異なる立場の人がグループにいると、同世代だけの時より話が盛り上がります。これは新しい発見でした。

科学技術の話を無視して説得力のある未来社会像を描こうとするのが難しい一方で、社会、経済、人々の意識などへの視点が欠けたまま未来社会像を描いても、それは危ういものになってしまいます。ですからDLabでも、多様なバックグラウンドを持つ人々が対話しながら検討を進めることが非常に大切。東工大生にはそうした場を経験しながら、技術と見識をもって未来を築いていく力を高めていってもらえたら嬉しいですね。

ITツールやSNSの普及によって、メディア以外の人も発信手段を手にするようになった今は、あらゆる個人・組織がメディア化した時代だと言えるでしょう。なかでも多くの研究者が新発見に向けて努力を重ね、多彩な一次情報が集積している大学には、メディアとしての大きな可能性と責任があると考えています。DLabでもその自覚を持って、自分たちに何ができて、どんな潜在能力があり、どうすれば社会により貢献できるかをしっかり考え、責任をもって発信し、実行していくことが大切だと考えています。

未来社会DESIGN機構

社会とともに「ちがう未来」を描く
科学・技術の発展などから予測可能な未来とはちがう「人々が望む未来社会とは何か」を、社会と一緒になって考えデザインする組織です。

未来社会DESIGN機構(DLab)outer

お問い合わせ先

未来社会DESIGN機構事務局

E-mail : lab4design@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3619

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