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東工大DLabがJST主催の科学イベント「サイエンスアゴラ2019」にて高校生を中心としたワークショップを開催

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公開日:2020.05.26

東京工業大学未来社会DESIGN機構(以下、DLab)は、人々が望む未来社会とは何かを、社会の一員として、学内外の様々な方と広く議論しながらデザインしていくための組織です。2020年1月20日、DLabのおよそ1年半にわたる活動から生まれた「未来社会像」と「東京工業大学未来年表」を発表しました。

2020年度はこれまでの活動をさらに推進するとともに、「ありたい未来」の実現に向けて取り組んでいきます。

DLabニュース

DLabは、2019年11月16日にテレコムセンタービルで行われた科学イベント「サイエンスアゴラ2019」に出展し、高校生が中心となって未来社会を考えるワークショップを実施しました。参加した高校生からは「未来や技術と社会の関わりについて考える良い機会になった」などの感想が寄せられました。

ワークショップの詳細については、以下の記事をご覧ください。

DLab構成員に聞く「DLabってどんなところ?」

人々が望む未来社会像を多様な視点で議論していくため、DLabには学内外から様々な経歴を持つ構成員が集まっています。なぜDLabの活動に参加することになったのか、今後の活動にどのような期待を持っているのかインタビューしました。構成員の紹介とともに、それぞれが思い描くDLabの姿をご紹介します。(肩書はインタビュー当時のもの)

議論の先へいく設計を

DLab Team Create(チーム クリエイト)所属 桑田薫
東京工業大学 副学長(研究企画担当)・学長特別補佐

1981年日本女子大学 家政学部 家政理学科一部卒業、1994年法政大学 大学院社会科学研究科 修士課程 修了、1998年法政大学 大学院社会科学研究科 経営学専攻 博士後期課程 単位取得退学、1981年日本電気株式会社、2003年NECエレクトロニクス株式会社、2008年技術研究組合 超先端電子技術開発機構(ASET) 研究員、2010年ルネサス エレクトロニクス株式会社、2011年一般社団法人 半導体産業研究所 客員研究員、2016年東京工業大学 フロンティア研究機構 特任教授(URA)、東京工業大学 科学技術創成研究院 特任教授(URA)、2018年より現職。

桑田副学長は、エレクトロニクス関連企業、シンクタンクを経て、URA(リサーチ・アドミニストレーター)として本学に着任しました。エンジニアとしての経験やマーケティング・マネジメントの経験を活かし、大学の研究を社会実装に結び付けることで、未来の社会を創造する活動を推進しています。

DLab Team Create所属 桑田薫さん
DLab Team Create所属 桑田薫さん

DLabに関しては、副学長として立ち上げ当初からイベントに関わり、強い興味を持って見守っていました。そんな中で折良くバックキャスティングのフェーズに入ってくると、URAの視点で貢献したいという気持ちが湧いてきて、DLab構成員に立候補しました。東工大においてURAが目指す役割とは、単なる研究支援だけでなく、研究成果の市場性や経済効果などを含めて貢献シナリオを書き、教員の研究を世に送り出す全体をプロデュースすること。戦略的な志向で、研究構想時からいろいろな情報を提供する研究のパートナーであることが理想です。ではDLabにおいてのURAはどうでしょうか。私が以前、普及学を研究していた際に、社会とどう繋がるのか、市場をつくっていくためにはどうするのかということを追求していたのですが、その視点がまさにDLabにおいてのURAの役割だと思いました。せっかく描いた未来を塩漬けにしないためには、構成する未来の市場を設計し、実現の活動に繋げなければなりません。バックキャスティングするにあたって、今までTeam Imagineが描き出した宝の山である未来像を科学技術的な構成で分解しているだけでは、ありたい未来が単なる技術的なロードマップになってしまいます。DLabの活動が技術ロードマップを作ることに留まらないよう、バックキャスティングをもっと人文・社会科学的な視点でアプローチできればと思っています。例えば、社会のシステムができあがるためには、技術的システム基盤の様な視点だけでなく、社会規範を考え、同時に、社会のみなさんがワクワクしながら新たなシステムを受け入れるような仕掛けが必要です。そこを解き明かしてバックキャスティングしていきたいと考えています。実際にDLabに参加した今、私の立場から積極的に取り組みたいことは、未来社会の構成を科学技術、人文・社会科学の視点でバックキャスティングし、その構成ピースを埋める未来社会創造の活動に繋げるフレームワークを作ることです。カリスマリーダーがやるから成功するのではなく、誰がやっても同じ様に良いものが作れるフレームワークにし、それを東工大メソッドとしてプロモーションしていきたいと考えています。バックキャスティングの手法を確立し、事例をつみあげ、アクティビティへ。その中で未達なものを研究要素にフィードバックすれば、未来創りに足りないものをまた生み出すことができる。DLab発のメソッドで、私たちが描く豊かな未来社会へ、一歩ずつ近づいていけると考えています。

技術の積み上げだけでは到達できない未来へ

DLab Team Create所属 新田元
東京工業大学 研究・産学連携本部 本部長付 (兼)地球インクルーシブセンシング研究機構 リサーチ・アドミニストレーター(URA)

1988年東京工業大学 電気電子工学科卒業、1990年東京工業大学 大学院理工学研究科修了、ソニー株式会社勤務、慶應義塾大学産学連携コーディネーターを経て2017年より現職

新田URAは、電気機器企業にて民生用ビデオ機器を中心に商品開発に従事してきました。電子回路工学、システム設計を専門としています。産学連携コーディネーターの経験を生かし、DLabと企業とを繋ぐ立場から未来社会への想いを語ります。

DLab Team Create所属 新田元さん
DLab Team Create所属 新田元さん

私が企業にいた時代は、電気機器がアナログからデジタルへと移行していく時期でした。映像がデジタル化するイノベーティブな瞬間に立ち会うことができ、DVD、ハードディスク、ブルーレイと何をやっても新しく、本当に多くの貴重な経験をしてきました。最先端の技術と向き合いながら同時にお客様の顔も見える。自分たちの生み出したものが世の中にどのように伝わっていくかを肌で感じることができたのです。それは同時に競争の最前線にいることでもあり、みんなが同じものを目指す中でいかに独自の工夫を凝らすか、魅力的な付加価値をつけていくかを追求する日々でもありました。世の中にないものを送り出し、真っさらな所で競争していくためには、最先端の技術を開発しながらマーケットも創造していかねばならないのです。理想のユーザーエクスペリエンスというものがまずあって、そこに到達するための技術をどうやって開発するかということを、日々考えて過ごしていました。思い返せば今から20年以上前に、既にバックキャスティングを実践していたのです。

その後、慶應義塾大学での産学連携コーディネーターを経て、よりテクロジーに近い環境で様々なミッションに挑みたいと思い、東工大へ移りました。昔からゼロから何かを作り出すことが好きだったので、未来をデザインするという活動は面白そうだと思い、DLab立ち上げ時からメンバーに加わりました。DLabの活動には多様な人々が参加しており、「そんな考え方もあるんだ」といった普段は思いもよらない意見を聞ける場となっています。異なるバックグラウンドを持つ人たちが集まり、それぞれの立場から様々な意見を交わし合い、そこから何かを創り出していくということにとてもやりがいを感じます。DLabにおいて、私がいちばん注力しているのは、描いた未来社会像をどうやって研究に落とし込んでいくかという点です。まさにバックキャスティングにあたる部分ですが、そこから更に社会そのものや社会システムにどのようにアプローチをするかというのは、私にとって本当に未知なところです。企業では数年後の未来を予測して商品を開発しますが、実現まで何十年もかかることに対して、企業と同じやり方では思うようには進まないという壁に今、直面しています。しかし、だからこそそこにチャンスがあると私は思っています。何十年も先の未来を考えて、その実現に向けて活動を続けていくというアプローチは大学にしかできないことです。バックキャスティングの精度を上げることや、技術をとことん分析・分解して潮流をつかむといったアプローチだけではダメで、リベラルアーツであったり、アートであったり、異なった視点の人たちと一緒になって考えていく場をどう作っていくか。それを考えることが真の文理融合であり、未来のビジョンを共有することに繋がると思います。そして、そこにこそDLabの醍醐味があります。対話があってこそ気づきがあり、ギャップを埋めていくヒントがある。単なる技術の積み上げでは到達できない未来を期待しています。

未来社会DESIGN機構

社会とともに「ちがう未来」を描く
科学・技術の発展などから予測可能な未来とはちがう「人々が望む未来社会とは何か」を、社会と一緒になって考えデザインする組織です。

未来社会DESIGN機構(DLab)outer

お問い合わせ先

未来社会DESIGN機構事務局

E-mail : lab4design@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3619

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