東工大ニュース
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東京工業大学グローバル理工人育成コースでは修士課程学生向けに、協定校であるジョージア工科大学(米国ジョージア州アトランタ)の教員が教える「グローバルリーダーシップ実践-Global Leadership Practice」集中授業(100分×8回)を2018年度から開講しています。3回目となる2020年度は、アトランタと東京をオンラインで結び、リアルタイムの双方向型授業で6月9日から19日まで行いました。18名の学生が受講し、オンラインであっても成果をあげた授業の様子を紹介します。
グローバルリーダーシップ実践授業は、ワークショップや事例研究、ディスカッション、自己分析などを通じて、グローバルな環境で自身の価値や目的を実現するためのリーダーシップに必要な要素を学ぶことを目的としています。
2018年度と2019年度はジョージア工科大学の教員を日本に招きました。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン開講となりましたが、授業スタイルは双方向型で、テレビ会議システム「BlueJeans(ブルージーンズ)」や学習プラットフォーム「Pear Deck」(ペア・デック)などのツールを活用しました。履修生は、講師、ティーチングアシスタント(TA)、クラスメートとグループワーク、ディスカッションを中心に積極的な交流を展開することができました。
なお、この授業は東工大グローバル理工人育成コース上級の選択必修科目ともなっています。
ジョージア工科大学があるアトランタと東京の間には13時間の時差があります。東工大生は朝8:00から授業に参加し、ジョージア工科大学の教員は夜19:00から授業を行う形で授業時間を設定しました。
ジョージア工科大学側の教員とTA、および日本側のグローバル理工人育成コースの教職員と留学生TAの間で2カ月前からオンラインで打ち合わせを重ねました。過去の本科目の履修生の支援により新しいアプリなども開発し、対面型で行っていたグループワークをオンラインでも効果的に実施する方法について検討を重ねました。
教員・学生ともに新しい方法にチャレンジするという発想のもと、テクノロジーを活用して柔軟な思考力とタイムマネジメント力を発揮しました。コロナ禍で制限がある中でもリーダーシップを基盤とした国際協働、多文化理解について多様な文化背景をもつ参加者同士で話し合い、学びを深めることができました。
18名の履修生の出身国は日本9名、中国、インド各2名、アメリカ、オーストラリア、インドネシア、カザフスタン、アルジェリア各1名で、クラスの半分が留学生です。3名のTAはインド、ブラジルとバングラディシュ出身で、講師はアメリカ人、ゲストスピーカーはベトナム出身の本学卒業生です。日本人学生は2020年3月にジョージア工科大学のリーダーシッププログラムに参加する予定であった学生のほか、留学経験者や将来の留学を希望する学生が多く、グループワークやディスカッションに活発に取り組みました。
この授業は、ジョージア工科大学で実践されているリーダーシップの授業を基に、過去2回の履修生からのフィードバックを反映し、授業内容を発展させたものです。
アメリカ型の授業では、予習と復習をこなして、授業では積極的な発言が求められます。本授業も、授業開始以前から、リーダーシップに関する本を一冊読み、リーダーシップやチームワークに関するブログを合計6回投稿する課題が課されました。また、履修生には授業に先んじてオンラインでオリエンテーションを行い、計8回の授業内容のポイントや課題をまとめたマニュアルを配布しました。マニュアルを事前に読んでおくことで、日本人学生もグループワークとディスカッションに率先して参加できました。
授業はすべて英語です。学生の参加を促す学習プラットフォーム「Pear Deck」で「今日の気分」や「今日一番学んだこと」を投稿し、クラス内で共有しました。休憩時間は出身国で人気のある曲をかけて紹介し、授業全体として異文化理解を継続できました。また、過去の対面授業の際行われた「100枚のカードを用いて自身が重要だと思う価値観を選択する自己分析ツール」をプログラミングし、オンラインでも対面で行う活動と同様の効果を得ることができました。
次に、チームワークについて学習しました。このセッションでは目標実現のためにメンバーの長所や強みを生かし、協力して取り組むことが不可欠である、という前提を共有します。異文化および分野横断的な環境の中で協力し、課題を解決し調整する能力を身に付けます。各チームの代表が家の中にある10の素材を準備し、チームのアイデアをもとに「世界の問題を解決する画期的なシステム」を作ることに挑戦しました。気候変動の影響を受ける中で、「環境変化に適応する鳥の餌入れ」、衛生環境を向上させるための「ポータブルな水の浄化装置」、新型コロナウィルスに対応するための「使い捨てできるスマホカバー」や「通気性がよい抗菌マスク」、東工大の日本人学生向けの「留学促進マスコット」などを協力して作り共通のゴールを達成するために必要な方法を学びました。
また、各国のリーダーシップのスタイル(平等主義、階級主義)について、その国の歴史、文化、習慣を前提とした違いについても学びました。組織内での意思決定の方法は国によって大きく異なっており、各国のリーダーシップスタイルの特徴と、その中で起こりうる意識的あるいは無意識の偏見への対処法についても学びました。
チームビルディングのセッションでは、グーグルジャパンに勤務する本学卒業生のミン・グエン(Minh Nguyen)さんがゲストスピーカーとして参加しました。ミンさんの実体験に基づく日本企業とグローバル企業の比較や、様々な環境の中で自分の能力を活かし目標を実現するためのヒントを履修生は聞くことができました。
グローバルリーダーシップ実践では、毎年、履修生と教員、TAが懇親会を行い、親睦を深めます。今回、講師とTAは来日できなかったため、テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」を利用した懇親会、Zoomパーティーを開きました。ジェスチャーゲームや、お題に沿って物を持ってくるスカベンジャーゲームで遊び、それぞれの国の印象と良いところを語り合いました。
最終日には5グループが、それぞれ2名のリーダーについて事例研究を行い、リーダーシップに必要な要素を分析し、結果を発表しました。履修生の多様な国籍を活かし、アメリカ公民権運動のキング牧師(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、アメリカのバラク・オバマ前大統領、台湾の蔡英文総統、発明家のニコラ・テスラ氏、スウェーデンの家具チェーンIKEA(イケア)創業者のイングバル・カンプラード氏、アリババ創業者のジャック・マー氏、プロサッカー選手の長谷部誠氏、アメリカ人女性科学者のアニタ・ボルグ氏、テスラCEOのイーロン・マスク氏といったリーダーを取り上げ、社会変革をもたらす方法を語り合いました。
履修生は最後に、学んだことを今後どのように自分の将来に適用していくかを具体的に示し、メンバーと共有しました。講師はこの集中授業が終わった後も履修生の成長、学びについて個別に、フィードバックします。
履修生にとって、全8回の授業は刺激的で成長できる2週間となったようです。多様な文化に属する参加者とオンラインで交流を深めることができ、場所を選ばない国際協働の方法を学びました。