東工大ニュース
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東京工業大学学生支援センター未来人材育成部門は、毎年春と秋に「アーティストとアートを体験するセミナー」を開催し毎回好評を博しています。このセミナーでは、東工大生がアートを通して新たな知識と発想を得て、独自の創造的表現方法を見つけ出すことを目的としています。
11月17日、講師は前回と同じく、元東工大非常勤講師で画家・詩人のツーゼ・マイヤー(Zuse Meyer)氏をお招きし、初めてすずかけ台キャンパスでのアートセミナー開催が実現しました。
すずかけ台キャンパスには、研究室所属の学生が多く在籍しているため、参加者は修士課程と博士後期課程の学生がほぼ半数ずつを占めていました。セミナーが英語・日本語の併用で行われることもあり、参加者17名のうち11名が留学生と、多様な背景を持つ学生たちが集まりました。また、岡村哲至学生支援センター長も飛び入りで参加し、学生たちとの交流を楽しみました。
セミナー当日は、テーマに沿った講義、いくつかのタスクに分けての演習、最後に、講師と参加者相互の講評という流れで進みました。
今回のテーマ「ヨーロッパの風景画/ゴッホ」にちなみ、マイヤー氏がゴッホの作品を時系列に紹介しながら、その半生について解説する講義からセミナーは始まりました。
ゴッホの初期の少し不格好な絵を取り上げ、「テクニックはアートとは関係ない。機械ではできないような、心から湧き上がってくるものが人々を惹きつける」というマイヤー氏の力強い言葉に、学生たちは引き込まれました。学生からも積極的に質問があがり、続く演習の前に、アートに関する知見を十分に広げました。
続いての演習は4つのタスクに分かれており、それぞれ美しいフランスの風景を題材とし、多彩な方法で絵を描くことにチャレンジしました。
初めに、スクリーンに映し出されたゴッホの風景画を鉛筆で描写するよう指示があり、さらに「一筆書きで描いてみましょう」というマイヤー氏の一言に、皆一瞬驚いた様子でしたが、すぐに各々のスケッチに取りかかりました。
参加者は時々首を傾げながらも、手は止めずに一筆書きを進め、作品が完成した頃には皆達成感を味わいました。
続いて、利き手と反対の手で行うスケッチの指示がありました。こちらも最初は戸惑いつつも、参加者は題材の南仏の風景を熱心に描き始めました。
利き手でない手を使うことで、「上手く描こうとする気持ちよりも、心から湧き出てくるものが描ける」というマイヤー氏の言葉通り、同じものを題材としてもそれぞれ個性的な作品が仕上がりました。
スケッチを2枚書き終わった時点で、皆でお互いの作品を見て回り、インスピレーションを受けた後、後半のタスクに取りかかりました。
ここでは色を使った絵を描く演習を行いました。題材の風景写真には、木々が写っていましたが、「全て必ずしも緑を使う必要はない。自分が感じる好きな色を使って良い」というマイヤー氏のアドバイスもあり、参加者は思い思いの色を選び、伸び伸びと絵を描くことを楽しみました。
最後のタスクでは、描くことにも意外な指示にも少し慣れた様子で、学生たちは迷うことなく活き活きと描き進めました。同じ題材を使用しても個性が際立つ作品が並びました。
全てのタスクを終え、最後には全員で1人1人の作品を見て回りながら、互いにコメントし合い、マイヤー氏からも温かく丁寧な講評を受けました。コメントをもらった学生は、少し照れくさいような表情を浮かべながらも、自信に満ちた面持ちとなりました。
マイヤー氏は、「東工大生は、パッションとエネルギーに溢れていて素晴らしいチームになれた」と絶賛しました。参加した学生は、国籍や専攻を越えて、アートを通して交流を深めました。