東工大ニュース
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東京工業大学ものつくり教育研究支援センターと学生支援センターは、6月15日、22日の2日間にわたり、「MATLAB(マトラボ)× AIロボティクスワークショップ」をテーマに「IoT導入教育セミナー」を開催しました。このセミナーは、IoT(Internet of Things:モノとインターネットを繋ぐ技術)に欠かせない各種の技術をハンズオンで学ぶことを目的として年に4回、東工大の卒業生が活躍している企業に協力を得て実施しています。
今回は、エンジニア体験の場として「シミュレーション」をテーマにしました。シミュレーションは現実の世界で起こっている現象を数学モデルで記述し、コンピュータ内で模擬的に再現することで、現象を解析する手法です。産業界のものつくり現場でも、従来の試作・実験の繰り返しをシミュレーションで代行することで、開発期間とコストの大幅な削減がはかられるようになりました。大規模・複雑化した現代のシステム設計において、ものつくりの現場ではシミュレーションの活用範囲が拡大しています。MATLAB/Simulink(シムリンク)は、システム設計、ハードウェア移行前のシミュレーション、実装への展開などに利用され、航空宇宙、自動車、通信、エネルギー生産、金融サービスなど、多様な産業で使われています。
本セミナーでは、その使い方の基礎から、シミュレーションテストの実施までを、MATLAB/Simulink開発元のMathWorks(マスワークス)社の講師などから学びました。
なお、本学では、すべての学生、教職員、および研究者が、キャンパス内外で、MATLABとSimulink製品を使用できる全学利用向けライセンス(Campus-Wide License:キャンパス・ワイド・ライセンス)を導入しています。
セミナー1日目は、「MATLAB入門編」として、東工大MATLAB TAの持田峻佑さん(工学院 システム制御系 博士後期課程2年)を講師に迎え、上記ラインセンスで42名の参加者がMathWorks社による自己学習形式でMATLABの基礎についてオンラインで学びました。
セミナー2日目はMathWorks社よりメイン講師として東工大卒業生でもある遠藤眞覇人さんを招き、対面でワークショップをおこないました。補助講師の野田光世さん、宮﨑陽子さんも本学卒業生で、参加者の学習を手厚くサポートしてくれました。
人数制限を設けておこなわれたこの日のセミナーは参加者13名で、遠藤さんの丁寧な解説のもと、シミュレーションプログラムの作成、テスト、その結果を検証するという一連の作業をハンズオンで学ぶことができました。
2日目のワークショップのタイトルは「MATLABによるAIロボティクスワークショップ~ディープラーニングによるライントレースロボット~」でした。コース上に描かれた白線の上を、実物のロボットが線をトレースしながら走行する様子を実機で見学するところからワークショップはスタートしました。
引き続き、ディープラーニングによるライントレースロボットの開発ワークフローを理解した参加者は、講師のきめ細やかな説明のもと、1つ1つのステップを手元のPCで進めていきました。ここでは実機の代わりにMATLAB/Simulinkで3Dシミュレータの環境を用意して、実際にプログラムを動かしてシミュレーションの結果を2次元・3次元で可視化したり、アニメーションで確認したりしました。
まずは、様々な角度で撮影した画像を大量に用意し、次に、ロボットがコースを走ったときにコースから外れないように、各画像に対して目標座標のラベル付けをしました。その後、カメラ画像から目標座標を予測する回帰ネットワークの構築と学習を行いました。各ステップでシミュレーションを行い、意図した結果になっているか確認しながら進めました。
ワークショップの最後には、システムシミュレーションによりライントレースの動作確認を行いました。最初は、うまくトレース出来ない人がほとんどでしたが、講師陣のアドバイスのもとパラメータを1つ1つチューニングすることで、多くの参加者がより正確なライントレースを実現することができました。
今回のワークフローの最終ステップである実装・実機での実行は、ワークショップの中では行いませんでしたが、独力で取り組みたい学生向けに詳細な資料が講師から共有されました。
学生達にとって、有意義で関心が高い内容だったことが、ワークショップの途中、参加者から数多くの質問が出たことによりうかがえました。
今後のIoT導入教育セミナーは、10月、12月、1月に開催する予定です。