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東工大の教職員3人に2023年IEEEフェローの称号を授与

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公開日:2023.05.11

東京工業大学 工学院 システム制御系の中臺一博教授、工学院 電気電子系の岡田健一教授、工学院 集積Green-niX研究・人材育成拠点の堀敦URAが、電気電子工学と情報工学分野では世界最大で最も権威がある学会IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers、アイ・トリプル・イー)フェローの称号を授与されました。表彰式や受賞記念講演会は研究領域ごとに行われ、3月17日にオンラインで行われたIEEE東京支部の総会では、3人が揃って表彰されました。

IEEEフェロー

IEEEは、人類社会の有益な技術革新に貢献する専門家組織であり、世界160ヵ国40万人を超える会員が活動しています。フェローはその会員の中で最高級のグレードで、上級(シニア)会員歴が連続5年以上、IEEEの指定する分野で非常に優れた資質と経験を有し、その分野において著しい貢献をした人物に授与されます。毎年、会員数の0.1%しか認定されず、IEEE本部に設けられたフェロー審査委員会のメンバーが厳格な審査を行って昇格を決める業績表彰です。

中臺一博教授

授与理由

ロボット聴覚および音環境理解研究への貢献

コメント

中臺一博教授
中臺一博教授

この度IEEEよりフェローの称号を頂きましたこと、光栄に存じます。これは、長年にわたり取り組んできたロボット聴覚研究について、研究分野の提案、技術の研究開発、社会実装や展開活動といった一連の研究活動、ならびに成果が国際的に評価されたものです。

ロボット聴覚は2000年に、奥乃博先生(京都大学名誉教授、現早稲田大学)と共に、「『ロボットの耳』の機能を創ろう!」というキャッチフレーズのもと、日本発の研究テーマとして提案した研究領域です。ロボットの耳には、さまざまな音が混じった混合音が入力されることから、音を聞き分ける機能が必須になります。この機能を実現するため、人や生物に倣った両耳聴処理、複数のマイクロホンを用いたマイクロホンアレイ処理、深層学習に代表される機械学習ベースの処理などを中心に、世界をリードして研究を継続してきました。

2008年には、ロボット聴覚技術をパッケージ化したオープンソースソフトウェアHARKの一般公開を開始、毎年のアップデートや一般向け講習会を行いながら、現在に至るまで公開を継続しています。現在では、HARKを起点に、災害救助ロボット、野鳥の歌声シーン解析技術、聴覚障がい者コミュニケーション支援システムといった展開も進んでいます。また、ロボット聴覚を意味する“Robot Audition”という言葉も2014年にIEEE Robotic and Automationソサエティで研究分野を表すキーワードとして認定されました。

このような成果は、これまでご指導やご支援をいただいたみなさんの力がなければ成し得なかったものです。前職である株式会社ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパンを始め、共同で研究を進めてさせていただいた国内外の大学の先生方や学生のみなさん、OB・OGを含めた中臺研究室の学生・スタッフのみなさんに、この場をお借りして、深く感謝いたします。

研究成果の概要図:ロボット聴覚研究の変遷

研究成果の概要図:ロボット聴覚研究の変遷

岡田健一教授

授与理由

ミリ波無線通信回路に関する研究

コメント

岡田健一教授
岡田健一教授

この度、IEEEよりフェローの称号を頂き、大変光栄に感じております。これは、私が長年取り組んできたミリ波無線通信回路に関する研究が国際的に評価されたものです。

スマートフォン等の無線機器では、これまでマイクロ波という電波を用いて通信が行われてきましたが、第5世代移動体通信システム(5G)ではマイクロ波にあわせてミリ波も用いられるようになりました。高速な無線通信には広い周波数帯域幅が必要ですが、マイクロ波は既にさまざまな無線通信システムに割り当てられており、これ以上の高速化が難しい状況にあります。ミリ波は、マイクロ波と同じく電波の一種ではありますが、従来のマイクロ波に比べて周波数が10倍以上高く、広い帯域幅の割り当てが可能なため、非常に高速な通信が可能です。

ミリ波による無線通信は、5Gで利用が始まったばかりですが、社会インフラを支えるために必要不可欠な技術として、今後もその本格化・高度化が期待されています。現在は、将来の6Gや衛星通信等を見据えて、共同研究企業と実用化への研究開発に邁進しております。また、本フェロー選定にあたり評価して頂いた研究成果は独力では成し得なかったものです。共同研究者の皆様や学生の皆様に深く感謝いたします。

堀敦URA

授与理由

低消費電力CMOSデバイスに関する研究

コメント

堀敦URA
堀敦URA

この度IEEEより栄誉あるIEEEフェローの称号を頂き、大変光栄に存じます。

私は1990年代に電機メーカーにおいてCMOSデバイスとその回路実証の研究を重ねました。当時Intelが世界の半導体業界を牽引しており、研究開発も高速化一辺倒という時代でした。私は早くから低消費電力化に着目して、デバイスの静特性だけでなく回路面でも低消費電力になるような提案を致しました。

消費電力はfCV2で表されます(f:周波数、C:容量、V:電源電圧)。私は寄生容量の削減及び電源電圧の低減にフォーカスし、半導体中の不純物イオンを自己整合的に局在化した新構造デバイスを考案、簡単なCMOSテスト回路を作製しその効果を実証しました。これらの結果をまとめた論文が電子デバイスの分野では世界で最も権威のある国際学会IEEE IEDM(International Electron Devices Meeting)に4年連続を含む、計6回採択されました。さらに学会の委員会活動や提案の事業化においても低消費電力という軸を貫きました。今回のフェロー称号授与はこれら一連の活動成果に対するものです。

東工大には5年前に赴任し、その後も低消費電力化を目指した研究に参加できたことも認められたと思います。

これまで研究のご指導を頂いた諸先輩方、東工大の関係者ご一同、支えてくれた家族に深く感謝申し上げます。

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