東工大ニュース
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東京工業大学は6月21日、第23回となる2024年度挑戦的研究賞の受賞者11人を発表しました。うち3人は、末松特別賞にも選ばれました。授賞式は9月13日に行われました。
挑戦的研究賞は、東工大の若手教員の挑戦的研究の奨励を目的として、世界最先端の研究推進、未踏の分野の開拓、萌芽的研究の革新的展開または解決が困難とされている重要課題の追求などに、果敢に挑戦している独創性豊かな新進気鋭の研究者を表彰するもので、受賞者には支援研究費を贈ります。40歳未満の准教授、講師または助教が対象です。これまで本賞を受賞した研究者からは、多くの文部科学大臣表彰の受賞者が生まれています。
挑戦的研究賞受賞者のうち特別に優れている研究者には「末松特別賞」を贈っています。「末松特別賞」は、末松安晴栄誉教授・元学長の若手研究者支援に対する思いを継承して設けられた「末松基金」による顕彰です。「末松基金」は、末松栄誉教授が2014年に日本国際賞を受賞した際、賞金の一部を東工大に寄附したことから、東工大が若手研究者を奨励するために設立したものです。多様な分野で、未開拓な科学・技術システムの発展を予知・研究し、隠れた未来を現実の社会に引き寄せる研究活動を奨励するため、若手研究者を中心に支援しています。
研究課題名:例外点プラズモニックセンサの実現と量子生物学への適用
研究課題名:観測誘起相転移の冷却原子系での実現に向けた理論構築
研究課題名:超小型ソーラーセイルの姿勢・軌道統合制御と多様なミッション設計および宇宙実証に向けた実践研究
研究課題名:電気・磁気・歪の相関関係による水素検出
研究課題名:CO2ダイナミクスに基づいた音響応答リポソームの設計と薬物徐放技術への展開
研究課題名:比較進化生理学的解析によるアクアグリセロポリン基質選択メカニズムの解明
研究課題名:コンクリート中の波動伝搬モデルの開発
研究課題名:クランプトアイソトープ分析技術が拓く海洋生物の生息環境履歴の解読
研究課題名:抗体分子の潜在的機能部位の網羅探査
研究課題名:欠陥秩序に基づく物質設計
研究課題名:分子ダイナミクスを起源とする非従来型熱輸送の探索
このたびは、栄誉ある東工大挑戦的研究賞および末松特別賞をいただき、大変光栄に思います。光科学分野において世界的に大きな貢献をなされた末松先生の名を冠した賞をいただき、光科学を専門とする研究者として大変感激しております。所属研究室の納富雅也教授(理学院 物理学系)をはじめ、これまでの研究活動を通じて出会い、お世話になった方々にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
ナノフォトニクスは、光の波長と同じ数100ナノメートルスケールの構造をつくりこむことで光の波動性が顕著に表れる舞台を生み出し、光の極限的な性質を引き出すことで光と物質の相互作用を制御する研究分野です。特に近年では、物性物理や量子物理で発展してきたアイデアを援用することによって、これまでの常識を打ち破るさまざまな光制御が報告されています。本研究では、非エルミート系(開放系)の物理学のアイデアを援用することで高感度な光センシングの実現を目指します。そしてこの高感度性を生かすことで、信号が小さいために測定が難しい量子生物学的な信号の検出にチャレンジします。物理学、工学、生物学の横断的な研究を通して、新しい学理の構築や光技術の開発が期待されます。
このたびは、栄誉ある東工大挑戦的研究賞および末松特別賞をいただき大変光栄に存じます。研究を支えていただいた、共同研究者の先生方、学生、スタッフの皆さま、家族には、この場を借りて心より感謝申し上げます。
ソーラーセイルとは、太陽輻射圧を利用する推進剤フリーな推進システムであり、軽量な超小型宇宙機とは特に相性が良く、超小型宇宙機による高頻度な宇宙探査ミッションに有用な重要技術の一つと考えています。ソーラーセイルを利用するためには、軌道力学の理解に基づいたミッション設計(軌道設計)、設計した軌道に沿わせるための制御が必要になりますが、ソーラーセイルの軌道制御は姿勢制御を介して行うため、姿勢と軌道を統合的に制御する考え方が必要になります。本研究では、セイル展開部に備えるジンバル機構を利用した姿勢・軌道統合制御則の確立、および月やラグランジュ点近傍におけるミッションを想定したさまざまな軌道設計を行いました。さらに宇宙での技術実証ミッションの準備を進めており、将来的には深宇宙探査での応用を目指します。
このたびは、栄誉ある東工大挑戦的研究賞および末松特別賞をいただき大変光栄に思います。これまでご指導いただきました先生方、共同研究でお世話になった先生方、また研究に携わってくれた学生など多くの方々に厚く御礼申し上げます。
私は、無機化合物の新規物質合成を行っています。本研究では、結晶中に生成する欠陥を合成方法や組成の制御によって配列させ、さまざまな結晶構造を作り出すことを目指しています。欠陥というと、一般的にはネガティブなイメージがあるかと思いますし、実際に多くの場合、物質の性能を低下させるさまざまな要因になります。しかし、欠陥を周期的に並べることができれば、美しく配列した結晶構造の一部となり、物質の性質を制御する手段となります。最近では、酸化物でよく知られていた欠陥の制御のコンセプトを、ペロブスカイト太陽電池で注目されている有機−無機ハイブリッド化合物にも展開できることを明らかにしました。今後も、さまざまな物質群において、自在に元素や欠陥を配列させることができる手法を開拓し、これまでになかった機能性材料を開発していきたいと考えています。