東工大について

桜花観賞

東工大の桜を楽しむ 桜花観賞

毎年、春を迎えると、東工大大岡山キャンパスの桜並木が一斉に咲き誇ります。

東工大の桜について知りたい方へ

東工大大岡山キャンパスの見事な桜並木。これはどのような経緯で植えられ、それを守るためにどのような取組がされてきたのでしょうか。

東工大の桜について書かれた記事をここでご紹介いたします。

東工大の桜を楽しむ 桜花観賞

桜の気持ち人の心

春の訪れと共に、その年の卒業生に母校の伝統や温かみを印象付け、新入生には東工大の歴史と期待に満ちた学園生活を感じさせる桜は、本館前の老木を代表に、学内各道路に並木状に植栽され、年月の経過と共に学内の学生、教職員をはじめ、周辺の住民、また多くの卒業生にも広く愛されてきた。桜は一般に剪定不適合とのいわれから、これまで、自然な成長を見守りながら、風害や雪害、あるいは有害な徒長枝などの除去に留めた樹形維持の管理および病害虫の防除等が成され、現在に至っている。

当時桜を寄付された卒業生はもちろん、桜を愛してきた学内外の人達や桜を管理してきた当事者も、桜の長寿を願う気持ちにおいては皆共通であろう。各地においても桜を守る活動や取り組みがいろいろなレベルで行われており、本学の桜に対する本学の取り組みの姿勢が問われているところである。

最近、放送でも取り上げられている2)ように、桜の延命については、これまで言われてきた定説を覆す取り組みが実績として評価され、新たな定説となりつつある。それは、桜であっても思い切って剪定を行い、特に老木においては強剪定により古い枝を除去し、新しい芽を育てて新しい枝に成長させる、いわゆるカットバック(切り戻し剪定)手法の適用である。有名な弘前公園の桜は、昭和30年代以降、この手法によって今でも健全な枝を伸ばし、毎年満開の花を咲かせ人々を楽しませている。その中には樹齢123年の染井吉野も含まれている。

切り戻し剪定は、主に果樹を中心に、前年に徒長した枝先を切りつめ、樹形の乱れを防止し、結果良好な母枝の成長を促す目的で行われる剪定手法であるが、一定間隔で植栽された果樹園では、どうしても年数と共に樹形が大きくなり、隣の樹と競合したり、樹高が高くなって、養水分の運搬が出来ず天頂部の樹勢が低下したり、樹木内部の採光が不十分となって病害虫が発生しやすくなるなどの弊害が出てくることから、大きな枝を計画的に切り戻し、新しい若い芽をそこから発生させて、新たな枝とし、樹形を維持し、同時に若い活力ある枝から良質な果実を実らせる強剪定手法もその範疇に含まれ、後者は特に英語のカタカナ表現であるカットバックと称して実施されている。

さて、本学の植栽年齢50年以上の、いわゆる老木に属する染井吉野における上述した諸々の障害の状況を認識したとき、我々は今後どのように染井吉野と向き合い、取り組んでいくべきか、姿勢が問われていると考えている。すなわち、一つは木の自然な管理に努め、半球状の美しいシルエットを維持し、残念ながら樹勢が衰え、枯死した場合には、若木を植栽して次の世代(染井吉野は実はルーツが同じ一種のクローンである)にバトンタッチさせる考え方である。もう一つは、上述したカットバック手法を中心に、可能な手当てを施し、樹の延命をはかる考え方である。本稿を執筆したのは、この選択が、後述するように今後の桜の形態においても大きな違いとなることをあらかじめご理解いただきたいためである。すなわち、カットバック手法による樹の維持管理には、後述するいくつかの大きな問題点も含んでいるからである。桜の気持ちは果たしてどうであろうか。我々の桜に寄せる思い、人の心は通じるであろうか。

カットバックによる樹形等主な特徴の変化は、表1に示すとおりである。まず、樹形は半球状から平板状に、樹高も現在の高さからその1/2~2/3に、樹の構造も自然なツリー状から一種の棚作り状に、それに伴って景観や印象も大きく変わる。おおかたは、樹形が変わっても延命出来るなら良しとしようとお認めいただけるかもしれないが、樹の状態を注意深く見届けながら、手当てを施すため、100%すべてが成功すると言えない点もご理解をいただきたい。カットバックによって覚悟しなければならないリスクを表2に示す。

写真1 本館前の桜の状況
写真1 本館前の桜の状況

表1 カットバックとその効果
樹形半球状 → 平板状
樹高1/2~2/3に低下
構造ツリー状 → 強いて言えば棚状
樹勢枝の更新により健全化
管理常に計画的管理が必要
表2 カットバックのリスク
更新枝は主幹との付け根が折れやすい
樹勢が保てない場合もある

本学では、この桜の状態を大変重く認識しており、基本的に樹形の変更を伴っても極力延命させる方針で今後望んでいこうと考えている。実際に、前記16本のうちの1本(写真1)は既にかなり樹勢が衰えており、今秋以降、落葉を待っての手当てが間に合うかどうか疑問であるが、先輩方より受け継いだ貴重な財産を、ここに述べた考え方で積極的に手を入れ、守っていこうとする方針にぜひご理解をいただき、今後徐々に樹形を変えていく染井吉野を応援していただければ幸いである。

1.
保里ほか : 大岡山の桜並木—桜を支えた人達の物語—,蔵前工業会誌,No.936,1999年1月号,p. 41.
2.
NHK : よみがえれ わが心の桜,難問解決ご近所の底力,平成17年5月19日放送。

情報理工学研究科情報環境学専攻 笹島 和幸 教授、企画室企画員(東工大クロニクル No.402より)

大岡山の桜並木 桜を支えた人達の物語

[ この記事について ]

この記事は、『蔵前工業会誌』No.936、1999年1月号、p.41に掲載されたものです。

(注1)… 写真は省略します。

(注2)… 記事掲載時で約50年です。

昭和24年初冬 桜が植えられていないのがわかる
昭和24年初冬(須山氏撮影)
桜が植えられていないのがわかる

最近東工大大岡山キャンパス本館前の桜が有名になっています。満開時に桜の下に入ると幽玄の境に浸り、しばし大都会の中にいるのを忘れさせてくれます。

古い卒業生にとってはあの桜がこんな大木になったとは信じられないでしょう。最近の卒業生にして見れば満開の桜は大学生活の重要な記憶の一駒になっていることでしょう。

そこで、今回はグラビア頁に3枚の写真を用意して母校の桜を改めてご紹介しようと思います。

植樹直後の桜
植樹直後の桜(須山氏撮影)

上段は平成9年の桜(中村健次郎氏(26化)撮影)(注1)であり、左下は昭和25年末頃に須山英三氏(28化工)が撮影した写真で、小さな桜が植えられているのが判ります。須山さん、良くぞ貴重な写真を今迄保存されていたものと思います。

右下は昭和40年頃の写真です(安田栄一氏(41化工46博化工)撮影)。この3枚の写真から現在の桜が植樹後約50年(注2)経過して、今日の立派な並木になったことが証明されましょう。

それではこの桜は誰が植えたのか?

約30年前の桜
約30年前の桜(安田氏撮影)

今となっては明確に証明された書類が残っている訳ではありませんが、本館前の桜並木は昭和25年の卒業生が発起人となり、植えられたようだし、又学生食堂前のスロープの桜は昭和28年の卒業生によるものといわれています。

何れにしても、この付近の年代の卒業生の中の有志が募金し、又、桜並木を良好な状態で保存するのは極めて大変な事のようです。時代によってご担当も代ったと思いますが、学校当局のしかるべき部処の方達の蔭の御努力も大変だったと推察します。

平成20年春 広報センター撮影 現在の桜
平成20年春 広報センター撮影 現在の桜

植えた方、保全された方達の御尽力があったからこそ、今我々は思い出として桜を楽しむことができるのであり、事情を知ればこれら御関係の皆様方に対して同窓生全員が感謝の心を持たれることと思います。

さあ同窓生諸兄姉、今年も間もなく桜の季節となります。そっと静かに学園を訪れて旧き学生時代を忍ばれたら如何でしょうか。但し直ぐ側では現役の教官や学生さん達の厳しい研究・授業が行われていることをお忘れなく。

保里敏夫(25化)、須山英三(28化工)、松井昭孝(28繊) 記

お問い合わせ先

企画・国際部社会連携課社会連携グループ

Email sya.sya@jim.titech.ac.jp