東工大について

益学長と東工大生、5つの約束

~2020年5月の緊急事態宣言解除を受けて~

益学長と東工大生、5つの約束益学長と東工大生、5つの約束

2020年6月1日
学長 益 一哉

まずはじめに、この新型コロナウイルス感染が懸念される中で、本学学生の皆さんが自宅待機し、安全を確保し続けてくれていることに、学長として感謝します。

5月25日に本学のある東京と神奈川も緊急事態宣言対象地域から解除されましたが、まだまだ予断を許さない状況です。大学は、皆さんと皆さんの大切な人の命を守るため、何よりも安全を最優先に、皆さんの今と将来への対応を考えていきます。

私は学長として、制約が多く我慢を強いられる中、強い気持ちで自らを律している皆さんを誇りに思います。

このような状況にあり、このような状況下であるからこそ、皆さんに今、お伝えしたいことを述べたいと思います。

1. 未来を創る皆さんの中からコロナ禍による経済的困窮で学業を諦める学生は出さない!

コロナ禍の影響は予想以上に大きく、アルバイトによる収入がなくなって学資や生活費の支弁に困窮する学生もいると思います。更には大学生活の維持そのものが厳しくなる学生も出始めているのではないかと大変心配しています。このような学生を支援するために、国の修学支援制度や日本学生支援機構などによる公的奨学金とは別に、同窓会の協力も仰ぎながら本学独自の新型コロナウイルス感染症対策「Team 東工大・学生支援プログラム」を創設しました。特別奨学金制度の設立、授業料納付期限の延長も実施します。特に授業料免除対象者は、まずは特別奨学金制度の貸与型奨学金に申請して欲しいと思います。そして困窮度が著しく高いと判定された申請者は給付への切り替えを進めます。更に、在学期間が延びる原因がコロナ禍であることが明確な学生には在学期間延長に伴う授業料の免除も行っていきます。どうか、将来に向けて、修学を諦めてしまうことが無いように、一人で悩むことの無いようにお願い致します。

2. 修了時期のゴールは動かさない コロナ禍に負けず学位を勝ち取ろう!

このような状況なので、本来出来上がるハズであった試料、測定できるハズであったデータ、揃うハズであった資料、結果などが十分には揃っていない学生が多いものと理解しています。そうであったとしても皆さんの若く柔軟な発想と教員の経験を組み合わせて、実験ができなければシミュレーションあるいは計算で、それができないとしても今までとは違うアプローチが無いかを検討し、これまでの成果から何が言えるのかを検証して、議論を充実させることができると思います。歴史的にも逆境下で後世に残る発見や作品が生まれている例があります。ニュートンがリンゴ落下から重力の着想を得たり、シェークスピアが名著を執筆したのも16世紀末のヨーロッパにおけるペスト流行で家から出られなかった時だと言われています。このような状況であるからこそ、皆さんの持つ頭脳をフル活動させた学士特定課題研究、修士・博士研究を推進していきましょう。そしてこのような時こそ、より「密に」指導教員との議論を重ね、指導を受けて、素晴らしい研究報告書(旧卒論)・修論・博論にしていきましょう。

3. 学生と教員の協働作業で新しい東工大型講義を創造しよう!

黒板、白墨を使い、教卓の上で教員が講述する教育が100年以上大学で続けられてきました。新型コロナウイルス感染症対策から、これまでとは全く異なる新しい講義の形を生み出す「講義の革新」の現場に皆さんは立ち会ってくれているのです。日々試行錯誤されている教員とともに遠隔講義をより良くするための建設的な意見をどんどん言ってください。皆さんと共に新しい東工大型講義を創造し、教育スタイルの革新をはかっていきましょう。

4. 研究再開だけではなく、コロナに負けない研究スタイルの再構築だ!

大学に来校が必須な研究室における研究活動についても、この6月から徐々にですが、安全を十分に考慮したルールを基に再開していきます。ただし、第二波・第三波の感染をもたらさないために、「新しい生活様式」の実践が求められ、従来の様な研究室に多くの学生が集って実験する研究活動は当分困難とならざるを得ないのも事実です。ここで「時間」と「空間」の使い方を一から見直し、感染リスクを低減しつつも研究効率を向上させ得る様な東工大型研究スタイルの確立を是非目指していきましょう。

5. After/With コロナの社会ではさらに皆さんが必要だ!

これまでも技術者や科学者は、不便を解決し、不満を解消する方法を探し出してきました。今回の新型コロナウイル感染症により、社会の中に不便が発生し、人々が不満に思う状況をピンチとだけとらえるのではなく、技術者や科学者の卵である皆さんの新たな挑戦の機会として考えてください。コロナ禍により生活様式がドラスティックに変わりつつあり、新型コロナウィルス終息後の“After コロナ”やウィルスとは共存せざるを得ない“With コロナ”についての議論も盛んにされ始めています。今まさに、若く柔軟な頭脳を持ち、先進的な工学や科学を学修している東工大生がより活躍できる社会が到来しつつあるのではないでしょうか。是非、After コロナの社会を創りだすプレーヤーになっていきましょう。

最後にもう一度皆さんにお伝えしたいのは、最も大切なことは、皆さんそして皆さんの大切な人達の命を守ることです。その点をどうかご理解頂きつつ、私たちはTeam 東工大として、制約の多い中でも、「より良い明日に向かって進んでいくんだ」という不退転の思いを共有したいと思います。

改めて皆さんが安全を確保してくれていることに感謝します。Team 東工大に協力してくれて、ありがとう!

お問い合わせ先

東京工業大学 総務部 広報課

Email pr@jim.titech.ac.jp