退職に寄せて(2021年3月定年退職者からのメッセージ)

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公開日:2021.03.31

2021年3月をもって定年退職となる教職員から寄せられたメッセージをご紹介します。

東工大の23年間

環境・社会理工学院 教授(土木・環境工学系) 二羽淳一郎

1998年4月に東工大に赴任し、2021年3月で丸23年間となります。男性の平均寿命は現在81歳を超えていますが、単純に考えて人生の1/4以上をここで過ごしたことになります。私は東工大の卒業生ではなく、在学期間は含まれていません。23年間とは随分と長い間在職したものだと感じています。

東工大は本当に素晴らしい大学だと思います。優秀な学生、大学院生ならびに留学生諸君と、自由に研究を行っていくことができました。高望みすればきりがありませんが研究設備や研究資金についても、研究を行っていくために必要な程度は何とか確保することができました。設備については、先任の先生方の努力に負うところが大きく、本当にありがたく思っています。さらに都内にあるという立地的な利点もあり、最新の情報や知見が自然に入ってくることも多かったと思います。学科や専攻内も、あまり他の研究室には干渉しない、良き伝統があり、自由に自分の希望する研究を行うことができました。

このような環境のもとで23年間を過ごし、この間、博士後期課程、修士課程、学士課程の卒業・修了生を送り出してきました。その研究テーマのほとんどが、コンクリート構造に関するものです。特に、鉄筋コンクリートならびにプレストレストコンクリートを用いた構造部材のせん断に関する研究、コンクリートの破壊力学、非線形解析、コンクリート工学分野における新材料や新構造形式の開発や適用、構造物の維持管理分野における新技術等々、様々なテーマで研究を行うことができました。

いずれにしても、私たちの研究の成果は、材料面・設計面・施工面を通して、現実の社会インフラ施設の建設や維持管理に役立つことが肝要であると考え、その方向で研究を進めてきました。これからの将来を考えると、わが国のような社会インフラが整備された国では、もはや構造物の新設は多くないかも知れませんが、その維持管理が重要であることは間違いありません。また最近の毎年のように繰り返される激甚災害を見れば、社会インフラ施設の強靭化はますます緊急の課題であると思います。これらの諸課題に対する東工大の皆様の一層のご健闘を期待しています。

長い間お世話になり、誠にありがとうございました。

2018年頃の研究室メンバー(中列中央が二羽教授)
2018年頃の研究室メンバー(中列中央が二羽教授)

東工大の研究所での24年間

科学技術創成研究院 教授(フロンティア材料研究所) 若井史博

1997年に通商産業省工業技術院の研究所から、東京工業大学応用セラミックス研究所に教授として着任しました。澤岡昭所長のもと工業材料研究所から全国共同利用型附置研究所として改組した翌年です。新設された構造デザイン研究センターの吉村昌弘センター長、安田榮一教授から声をかけていただきました。当時は国研、国立大学の時代ですから、通産省から文部省への出向です。着任してカルチャーショックを受けたのは研究所の教授会でした。規模は小さいけれど独立部局であり、緊張感を孕みながらも肩書きを問わず対等で自由闊達な議論が交わされていました。その頃、現在の科学技術振興機構の前身である新技術事業団の国際共同研究事業「セラミックス超塑性」プロジェクトの代表研究者だったので、すずかけ台と拠点のある名古屋との間を毎週往復するという生活でした。その関係で単身赴任を始めたのですが、結局その後24年間も続いてしまうことになりました。ドイツのマックス・プランク金属研究所のFritz Aldinger(フリッツ・アルディンガー)所長が相手側の代表でした。宗宮重行名誉教授の紹介で、再統一から1年後のドイツにアレクサンダー・フォン・フンボルト財団の支援で、前任のGünter Petzow(ギュンター・ペッツォー)所長の時代に留学したことがきっかけです。

この頃から、国の研究所、国立大学のあるべき姿について模索が続けられます。国立大学の法人化により、附置研究所の位置付けが変化しました。任期制が導入され、2006年には10年時限のセキュアマテリアル研究センターが発足しました。2016年に東京工業大学は科学技術創成研究院を設置しました。この時期に応セラ研の所長を引き受けるという巡り合わせになりました。無機材料、金属などの幅広い材料系との融合、さらに、建築系との連携も維持して、多様な研究領域を包括したフロンティア材料研究所が生まれました。今後とも共同利用・共同研究拠点、先端無機材料共同研究拠点として、全国の関連コミュニティと連携し、学術発展を先導していくことでしょう。教育の面では総合理工学研究科 材料物理科学専攻、物質理工学院 材料系を担当し、21世紀COE、グローバルCOEの担当者として参加しました。共に研究していただいた学生、留学生、助教、准教授、支えていただいた秘書の皆様に感謝します。長年にわたり、研究に集中でき、最高の環境を与えていただいたことに深く感謝します。

研究室のメンバーと(前列中央が若井教授)
研究室のメンバーと(前列中央が若井教授)

お問い合わせ先

総務部 広報課

E-mail : media@jim.titech.ac.jp

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