東工大ニュース
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東京工業大学は7月14日、元素戦略研究センター長の細野秀雄栄誉教授による記者説明会をオンラインで行いました。「ニッケルを使った高性能アンモニア合成触媒の開発」がテーマです。細野栄誉教授は、貴金属を使わずに温和な条件でアンモニアを合成する画期的な技術を紹介しました。テレビ会議システムを使った説明会には、11媒体の記者15名が参加し、活発な質疑応答が交わされました。
アンモニアは農作物の生育に必要な窒素の供給源として使われています。またアンモニアは分解すると多量の水素を発生することから、燃料電池などのエネルギー源である水素を運ぶ物質(エネルギーキャリア)としても期待されています。
1912年にアンモニアの合成技術ハーバー・ボッシュ法が開発され、農作物の増産、人口の飛躍的な増加が起こりました。しかし、ハーバー・ボッシュ法は高温(400~500℃)、高圧(100~300気圧)で反応させる必要があります。
1970年ごろから温和な条件でアンモニアを合成させる技術の開発が行われてきました。その結果、触媒としてはルテニウムナノ粒子が高い活性を示すことが明らかになっていますが、ルテニウムは貴金属です。
元素戦略研究センターでは、この課題を解決すべく豊富に存在する金属を用いたアンモニア合成技術の開発を続けてきました。
従来のアンモニア合成は、触媒となる金属の表面で窒素と水素を反応させていました。そのため、窒素との吸着力の高いルテニウムが使われてきました。
窒素との吸着性の低いニッケル(Ni)は、ほとんど活性を示さないことがこれまでの常識でした。しかし、窒化ランタン(LaN)上にNiナノ粒子を固定化すると、高いアンモニア合成活性を示すことを発見しました。その活性は、1気圧400℃という温和な条件で一般的なルテニウム触媒の活性よりも高いものでした。
反応のメカニズムを調べてみると、以下のようなことが起きていると考えられました(図1)。
今回の研究からは以下の新しいコンセプトを提示することができました。
今回の研究により、貴金属を用いなくても温和な条件でアンモニアを合成できると示すことができました。今後は、より優れた触媒の開発を行い、貴金属を使わないグリーンアンモニア合成の実現を目指します。
※ 窒素空孔 : 窒化ランタン(LaN)はLa3+とN3-から形成されており、N3-が部分的に抜けた空きサイトを窒素空孔と呼ぶ。空孔ができると、電荷を補償するために電子が捕捉される。